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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第一章:魔王誕生

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其の四十一 小康状態

いわゆる詫び投稿です。

 私が踏み込むと同時、大地が割れる。しかし瞬時に元に戻り、私を止めるように壁になる。

 でも問題ない。速度を落とさず壁に突撃、粉砕して騎士団長の眼前にたどり着く。拳を振るうが、手に持った盾で防がれる。


(むぅ~。魔力無しとはいえ全力なんだけどなぁ?)


 仕方ないので一度離れ、即座に弧を描いて背後を殴りつける。しかし当然のように盾で防がれる。


(あれぇ?これでも私結構早いとか思ってたんだけどなぁ?)


 もう一度、距離をとりスライディングでもかましてやろうかと思った時、段差で足がもつれた。


(ん!?さっきまでなかった、ああ作ったのか)


 なんて納得しながら目の前に出振りかぶられた大剣の側面を殴りつけ、逸らす。


(おっも!)


 足をとられてうまく力が伝わらなかったにしても重すぎる。どんな膂力だ全く。


 地に足つけてるとまた同じことされそうだが、まだ魔力を使う気は出ないのでおとなしく地上で戦う。


 お互いに攻撃しては防がれて、攻撃しては避けられてで泥沼の戦いが繰り広げられる。


(どうするか。こっちの攻撃は対応されてるし、魔力でも使わなきゃどうしようもなさげなんだけど。もともと私の攻撃方法って物理一辺倒というかなんというか。まぁ魔力アリでもそれは変わらないのだけども。衝撃波程度で崩せるわけもなし、どうしよ)


「おっと」


 急に地面が割れたので宙を蹴って離脱する。そこへ向けられた岩の弾丸を粉々に砕き対応。


(あ、しくった)


 砕かれた岩の破片が尖り散弾になって迫る。宙を殴り反動で移動しつつ、いくらかを食らうことはあきらめる。


(コラテラルコラテラル。仕方ない。あんなもん流れ弾より回避しようないだろ)


 とはいえ、ダメージとしては薄皮数枚切られた程度。ちょっぴり血は出ているが数秒もあれば自然に治る程度のモノ。問題はない。


(めんどくさ)


 初のダメージをこれ幸いとばかりに大量の岩弾が射出される。壊してしまえば回避不可になるので大人しく宙を蹴りつけて回避に専念する。魔力の板がない分移動の速度は落ちるし無駄に体力使うし動きに無駄が多いのは仕方ない。


 さて、向こうも意味がないのを悟って再びの膠着状態。


「で?お前はいつになったら本気出すの?」


「気づいてたのか」


 そりゃ当然。というか最強がこの程度なわけないだろ。おっちゃんでもこのくらいできるわ。たぶん。


「それじゃあ、周囲の避難も済んだようだし、そろそろ本気でやらせてもらおうかな」


 なるほどさっきまでのは時間稼ぎだったのか、なんて。わかってはいたけども。


「頼もうか。出してくれよ、お前の相棒」


「それじゃあ、お言葉に甘えようかな。おいでヴィルナ」


『ようやく私の出番って訳ね』


 そうして現れたのは少女の姿をした精霊。その銀の髪はふんわりとしており、宙に浮く彼女の背丈よりも長いものとなっている。

 長い髪から覗かれる三白眼は橙色で、その肌は病的なまでの白だ。


「第2回戦といこう」


 その言葉の直後、彼は姿を消した。


 ―――ッ!?後ろ!?


 振り返りながらジャンプ。横長に振られた大剣の上に乗り拳を返す。しかし盾のように金属が出現し防がれる。


 大剣が持ち上げられ、体が宙を舞う。


(まっずい!)


『大地よ、鋭く尖りて、敵を貫け』


 ウードが言ってた、精霊は詠唱なしでも事象を改変できる。でも詠唱したほうが効率はよく、効果も高まると。そしてさらに、技名をつけ、唱えると結果が固定される代わりに効果が跳ね上がるのだと。


地槍(ランディア)


 瞬間弾丸のような速度で土の槍が迫る。


(空気を蹴る、ダメだあれはロスが多い、避けるのは間に合わない。打ち返すには鋭い。魔力壁、はダメだ。まだ魔力は使いたくない。ならどうする?)


 空気、それは結局のところ分子の集まり。空気にも質量はあり、場所に応じて密度は変わる。


(なら、密度の高い場所を殴れば、少しはロスがなくなるだろ!?感じろ、そして全力で、殴れ!)


 あまりに不格好な緊急離脱!完全回避はできなかった。でも、それでいい。はなからそんなものできると思ってない。大事なのはそのあと!


 迫る大剣の一撃、迎え撃つのは無理!ならせめて、蹴り飛ばす。地面に滑るようにして着地、瞬間バックステップで距離をとる。先ほどまでいた場所から槍が生える。


『あら?仕留めそこなったわね』


「油断しちゃだめだよ、彼女は強い」


『そうね、あなたが私を呼ぶときはいつもギリギリだもの』


「ごぼっ、はっ!はっ!はっ!」


 あぶねぇ~!!?まじで死ぬかと思った!絶賛死にかけではあるけども!

 脇腹貫かれて血ぃだらだら出し、左腕切り飛ばされかけてるし!

 あの精霊娘最初から容赦なさすぎだろ!?


「ふ~!なぁ、気になるんだけどさ、なんでそんな強くて自信ねぇの?」


 時間稼ぎ、になるかはともかくとして気になるのは本当だ。見た感じまだ若い。それこそ十代後半だ。普通なら、ここまでの力を得たなら調子に乗ってしかるべきだ。だけどこいつには一切それがない。油断も、慢心も、必ず勝てるという根拠のない確信さえ。


『あら?時間稼ぎかしら』


「そう、だね。本当はすぐに殺さなければいけないんだけれど、いいよ。教えてあげよう」


 マジか。まさか本当に教えてくれるとは思ってなかった。正直こいつは油断なく殺しに来ると思ってたし。


「僕は、自分よりすごい人をたくさん知ってる」


 ―――ッ!なるほどねぇ!?


「ははっ!騎士様が不意打ちってか!?てっきり正々堂々が信条かと思ってた!」


 背後に迫る空気を貫く鋭い気配を体を逸らして回避。くそっ、魔力無しじゃさすがに再生しきれん!動きにくくて仕方ない!とはいっても、体の出来上がってない子供だもんなぁ?私。


「僕は天才じゃないことも、ううん。ただ運に恵まれただけの凡人にすぎない」


 無視かよ!?空中に逃げるのは悪手、今度こそ逃げきれない。とはいえ地上は向こうのフィールド、逃げ続けるのも長くはもたない。


 槍だけならともかく、撫で斬るだけで私をつぶしそうな大剣と盾、そんで極めつけは足をとらえてくるこのくぼみ。ただでさえ傷が治ってないのに動きずら過ぎる!


「凡人が私を追い詰められるかよ!馬鹿がっ!」


 こちとら転生者アンド龍の肉体持ちやぞ!?取説も何もなかったけども!ふざけんな!?


「君を追いつめてるのは僕の力じゃないさ」


 ああ?何言ってんだこいつ。


「僕だけじゃ膠着してた。今こうして攻めることができているのは全部ヴィルナのおかげだ」


「それが、お前が最初からそいつを使わなかった理由か?」


 何が近隣住民避難のための時間稼ぎだ。初めからそいつ使っとけばいくらでも対応できただろうが!


「ああ、うれしいことに彼女は僕に手を貸してくれている。でもそれは僕の力ではないからね、少しは自分でもやらなければ示しがつかない」


「そのせいでほかの騎士達が死ぬことになってもか?」


 そもそも、初めから此奴が出る必要なんてない。遠隔で地面操作して槍突き刺せばそれで終わった話だ。さすがに詠唱無しじゃ私も対応できないし。まぁその時はウードがどうにかしただろうけどさ。


「ああ。申し訳なく思う、けど、彼らも騎士の端くれ民を守って死ぬことに異存はないだろう」


「気色悪い。団長様が守るのに本気出さないでそんなこと言ってんのマジで気持ち悪いなぁ?」


「ああ、だから僕は団長であるべきではない。適任ならほかにいる」


「適任?そんなもんがどこにいる?ここにいんのは私とお前、あとはモブが一体だろ?」


 背後から迫る鉄槍の一撃を軽く躱し、裏拳を打つ。


「ぐっ!?」


「っ!」


 ああ、本当に、むかつく。


「そんな苦しそうにすんなら来させなきゃいいのに」


 注意がそれた瞬間の踏み込み、意気地なしの反応が遅れる。腹に確かな一撃を入れる瞬間。


『そうはさせないわよ』


 とげのついた盾を間に挟まれる。


「チッ!」


 防御と同時にカウンター、しかも攻撃したら確定で食らうのは本当にめんどくさい。痛いし。


「ありがとう、ヴィルナ」


『もっとシャンとしなさい!あんなんでも副団長なんだからそう魂胆に死なないわよ』


 あ、副騎士団長だったのね。気づかなかった。


「うん、ごめん」


「なぁ、お前が言ってる団長に相応しいやつってあいつなのか?」


「そうだ。彼は、ホラティウスは僕よりもよっぽど団長に相応しい」


「なんで?」


 純粋な疑問だ。そいつは弱くはない、弱くはないが強いとは言えない。素の私にすら後れを取るようでは話にならないのだ。


「僕は運が良かっただけだ。ヴィルナが、精霊が選んだのがもし彼だったら、僕なんかより断然いい団長になれたんだ」


『それはないわよ。私が選んだのはあなた。いくら頼まれたってあんなのを選ぶわけないじゃない』


「・・・それは、彼をよく知らないから、だから」


『知らないわよ、知る気もないし』


 だりぃ。めちゃだりい。こういう展開見るのは嫌いじゃないけど目の前にするとだるい。この後ちゃんと覚醒してくれんならいいけどさ、現実そう甘くないじゃん?

 つうか話しながら攻撃してくるあの精霊絶対性格悪い。性根ねじ曲がってんだろ。


 そういう意味じゃうちの精霊は性格はいい方なのかね?


『性格だけじゃなくて全部アタリだよ』


「ソーデスネ」


『もう!まあいいや、僕がどんなにアタリかどうせすぐわかるんだからね』


 後ろから忍び寄るのは副団長。驚いた。鎧が凹んで苦しいだろうにまだ来るんだ。


「でもまぁ、意味ないけど」


 突き出された槍を躱して回し蹴り!?


(助けるんだ?)


 突如生まれた盾に弾かれ、躱した槍が振るわれる。


「だから、意味ないっての」


 槍を掴み押しとどめ、そのまま副騎士団長を払い飛ばす。せっかくなので騎士団長の方へ。


「ぐっ!?」


「ホラティウス!?」


『しっかりしなさい!来るわよ!』


 意気地なしがモブの姿に動揺する。精霊は対応してくるが、それだけならやりようはある。


(全く、団長には彼のがふさわしいとか言いながらそんな信頼できないかね?やりにくいったらありゃしない。これならこいついない方が楽しかったぞ)


 全力疾走。建てられた土壁を地面を割ることで下から通過、前に見えるのはかばうように前に出ている精霊の姿。


 前に聞いたことだが、ウード曰く、この世界にはいくつかの上位存在がいるらしい。そしてその中には当然精霊と龍が存在する。さらに、そんな上位存在は代名詞ともいえる言葉を関するそうだ。

 中でも精霊がこの世界で関するのは自由。好きに生きて、好きに死ぬ。何よりも自由な存在だ。


 しかし、精霊は自由すぎる。その在り方は言い換えれば無法ともいえるほどだ。大規模に世界を書き変える力を当然のように連発してくるのだから理不尽ったらありゃしない。


 だが当然、そんな奴らには決まっていくつかの弱点があるものだ。古今東西、上位存在である限り逃れられないモノ、その一つ。


「精霊ってのは、油断と慢心が欠点だよなぁ?」


『えっ!?ぁぐっ!』


 精霊に物理攻撃は通じない。妖力でどうこうしようにも相手は精霊、バケモン相手の妖力勝負で敵うわけもない。それが常識だ。


「ははっ!常識なんてもんに縛られてっから足元掬われんだ」


 首根っこを掴んで持ち上げ、魔力を回収するように、妖力を奪い取る。


『あぁぁあぁぁあああ!!!』


「ヴィルナッ!!!」


「ふん」


 怒りの形相で迫る意気地なしに精霊を投げ返し、受け止めようと止まったところを精霊ごと殴り飛ばす。


「ガァッ!?」

『アッ!?』


 追撃に動いた瞬間を狙い、モブが土槍で足元を払ってきた。それなりの衝撃が足に加わり、つんのめるが強引に突破、精霊をさらに空に打ち上げる。


『――――!?』


 初めての感覚に戸惑っているのか、もはや言葉も出さない。反撃もないのでこれ幸いとコンボをつなぐ。


(ところで精霊ってどうやって殺すの?)


『殺せないよ?』


「はっ?」


『精霊は世界の一部だからね、精霊を殺すっていうのは世界を殺すようなものだもん。自殺以外じゃ死なないよ』


 そっかぁ。確かになぁ。世界は殺せないもんなぁ?


「ふざけんなゴラァ!?」


 なんなんだ精霊は!?殺せないってなんだよ!?こんなのがステージギミックとか理不尽でしょ!?


『まあまあ、龍も他人のこと言えないから』


「龍は殺せば死ぬんですが?」


『精霊も死ねば死ぬよ』


 殺してやろうか?


「っと、そろそろ無理か」


 いい加減下が騒がしくなってきたので最後、ダブルスレッジハンマーと言う奴を食らわせて叩き落す。


『もし僕がされたらと思うとぞっとするね』


「されたくないなら大人しくしときなさい」


『は~い』


 ウードにくぎを刺しつつ、余裕を見せるようにできるだけ優雅に降りる。魔王になるなら見栄えも大事だからね。あとこの方が相手が絶望してくれる。根拠は私。


「そんなに怒ってどうしたのかな?全部君の弱さが原因じゃないか」


 できるだけ純真そうな表情を心掛けて意気地なしに告げる。


「僕の、せい?」


「ああ、全部お前のせい。お前が弱いから誰も守れない。お前に覚悟が足りてないから守られる。みんなお前のせいだ」


「僕が、全部、僕が、」


 いい感じ。さっき気づいたんだよね。正義のまま覚悟を決めさせるのが難しいなら、心壊して復讐心に燃えてもらえばいいって。やっぱり魔王であるからにはそれ相応の敵意というか、殺意を受けたいじゃない?


 別にモブ相手なら何でもいいけど、仮にも強敵だもん。生きるか死ぬかの戦いで興が乗らないってのは、いやなんだよね。億が一にも負けた時最後の戦いがつまらないとか、死んでも後悔するじゃん。


「アダルウィン!そいつのことを聞くな!」


 おや?さっきの一振りが限界だと思ってたんだけど、意外と元気あるなあいつ。


「ホラティウス、でも、君だって」


「これは俺が弱いからだ!お前のせいじゃない!」


「でも!最初から!ヴィルナが選んだのが君だったら、こんなことには」


「アダルウィン!!いつまでそんなこと言ってんだ!!ありもしねぇこといってウジウジとしてんじゃねぇ!」


 お?これはもしかするともしかするか?


『シオン。わざわざ敵を強化してどうするのさ、早く仕留めた方がいいんじゃないの?』


「ダメだよ、こういう覚醒シーンはちゃんと待つのが魔王の、悪の大前提だもん。これを破っていいのは最終回かラスボスだけだって決まってるもん」


 あとそういうことすると一時的には勝っても最後には負けることになる。


『む~?そうなの?』


「そうなんです。だからおとなしく見てなさい」


『は~い』


 でもこれ待って覚醒しなかったらどうしよ。期待させるだけさせといて殺らせないとか万死よ?大罪よ?地獄堕ちよ?


 ・・・考えないでおこう。

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