其の四十 国家転覆罪
今日の分。
「うっ、あああああああぁぁぁあああ!!!」
ああああああああああああああ。ああああああああああああああ。ああ。
『シオン。落ち着こうか。すごい目立ってるから』
「ゔるざい!! これで叫ばないでいられるか!?せっかく宝箱見つけて、出だしは好調とか思ってたら即帰還! 許せないよ!」
『そうだね。許せないね。でもさ、過ぎたことは仕方ない、ね?』
「うぐっ、うぁあああ」
『落ち着こう?落ち、落ち、ダメだこりゃ』
あああああああ!!!!
☆☆☆☆☆
現在、ダンジョン一階出入り口前。報酬のために命を懸けて探索に臨む多くの冒険者が私を頭のイカレタ奴として見てきます。報酬のために命を躊躇なくベットする時点でお前らもこっち側の人間なんだと大声で言いたいところではあるが、さすがにそれは私の少なくなった羞恥心と常識が止めてくる。これでもまだ人ではあるので。
・・・まぁ、はい。激しく暴れてからどれだけの時間が経ったのかはわからないけど、落ち着きました。どうしてこうなったかはもちろん、ね?思い出したくもないいつもの奴です。
ところでなぜ近くでウードが疲れ伏しているのだろう?
『シオン、その眼は止めようか。さすがの僕でもそれは抗議するよ?』
といわれても、バカでかいクレーターの中央にいる君が一番この現状の容疑者なんだもの。そりゃあ冷ややかな目で見もするよ。
『周囲の惨状は全部君がやったことなんですけど!?』
「噓だぁ?」
『君の記憶はどうなってるのさ!?あんなに暴れてたじゃん!?』
暴れてた、と言われましても。
「一切記憶にございませんが?」
『えぇ?』
そんな困惑しないでもらいたい。意識を失って暴れまわるだなんてそんな狂戦士じゃあないんだから。私は戦闘狂かもしれないけど狂戦士では断じてありません!理性的です!
「そんなことより、早く外行こう?祭りに間に合わなくなるかもしれないよ?」
『そんなことって…はぁ。僕は疲れました。回収を要求します』
回収?ああ、私の中に居候させろと。
「・・・まあいいけども」
『やった。これでプラマイギリマイナスかな』
マイナスなんだ。どんだけ暴れまわったのやら。
『シオン、さっきも言ったけどこの惨状は全部君がやったことだからね?』
「じゃあそう言うことにしておきましょうか」
責任を人に押し付けるのはダメだって習わなかったのかな。
『だから本当なんだって!むしろ僕が止めなきゃもっとひどいことになってたからね!?』
「もっとって…十分ひどいけど?」
緑でいっぱいだったはずの地面はめくりあがって荒野になってるし、当然のように穴ぼこだらけ。ただ一つ不自然なところがあるとすれば周囲に人がいること。ここまでの惨状なら人の一人や二人死んでてもおかしくないだろうし、そうでなくても逃げるはずだよね。
『死人無しで済んでるのは僕のおかげだから!全力で守ったんだからね!?』
確かにこうしてみると私が暴れたというのは正しいのかもしれない。そしてそれを止めるためにウードが頑張ったというのも。しかしね。
「そっか、よく頑張ったね」
『軽くない!?もっと褒めてよ!』
「この前お前が暴れたの止めたからお互い様でしょ」
なんなら暴れた場所的に私の方がましまである。一般人ばっかの地上と仮にも命かけてる冒険者しかいないダンジョン。どっちで暴れる方がいいかって言ったら、ねぇ?
『あぐっ!それは、まあ、はい。生意気言いました。ごめんなさい』
「よろしい」
さてさて、そんなことを話しながら外に出てきたわけですが、気になる外の時間帯は?
「朝だ!」
祭りが終わってないといいんだけども、どうだろう?
日にちも確認したいし、とりあえず宿に行くか。と、思ったんだけども。
「止まれ!そこの娘!」
何やら武装した集団がこっちに向けて制止勧告を出してきた。
「私?」
「そうだ。そのまま動くなよ」
ええ?私何にもしてないんだけども。いきなり衛兵にとらえられるような心当たり一つも…いや二つくらいしかないのだけど。
『…シオン』
何あきれた声上げてんだお前も共犯だろうに。
「いやぁ、正直心当たりないんですけど、どういう状況ですかね?」
『えぇ?』
いや実際ほんと。宿の件は方ついたし、道路の件も私の代わりにナルシストが治したしで解決済み。何の罪で捕まりかけてんのかまるで分らない。冤罪だったら全然逃げるけど?
「どういう状況だと?お前、自分が何したかわかってないのか!?」
「やめろ!無駄に話すな。私が代表する」
あれま。これじゃあまるで私が猛獣扱いじゃないか。
「いや、あの。本当に何の用で?」
「・・・場所を変えよう。おとなしく従ってくれるか?」
んん~?な~んでこんな決死の覚悟されてんの?
「ちなみに、従わなかったら?」
「その場合は、やむを得ないことになる。それはお互いに嫌だろう?」
なるほどね。従わなければここで殺し合いって感じね。正直彼らじゃ足止めにもなりやしない感じではある。けどそこまで覚悟決まってんのに無下にするのもなんだかなぁ?
「わかった。ついていこう」
「本当か!?なら―――」
「但し、拘束はなしで」
「わかった。それでいい」
おや。この感じやっぱり。どっかから私について話聞いてるな?
「んな!?隊長!そんなことしていいんですか!?」
「馬鹿が、彼女からしたらこんな拘束具何の意味もありゃしない。ただ気分を害するだけだ。ならおとなしく従っておいた方がいい」
「しかし、」
「そもそもついてきてくれるだけで大助かりなんだ、これ以上は望むな」
ん~、考えられるとすればおっちゃん。警備隊長か。ほかに私の強さを知ってる面々は昨日?ギルドにいた奴らか、オーナーの爺さんか。でも衛兵が知ってる辺りおっちゃんかなぁ?
ひそひそ話盗み聞く感じ私のこと聞いてるのは隊長格だけみたいだしなおさら。まあ、だから何だって感じではあるのだけども。
「それで、どこにいけばいいのかな?」
「ああ、ついてきてくれ」
そんな背中向けちゃってさ、逃げ出すとか思わないのかね?いや、見ていても無駄だとか思ってんのかな?実際そうだし。
☆☆☆☆☆
さて、そんなこんなでついたのはなんと騎士団詰所。この集団は騎士団だったらしい。
石壁に囲われた内側はかなり広く、どうやら訓練所も兼ねているようで、かなり多くの騎士が鍛錬している気配を感じる。ざっと千人くらいか?
「それで、大人しく従ったわけだけど詳しい事は話してくれるのかな?」
「ああ。だがもう少し待ってくれ」
・・・誰か待ってるのか?
・・・でも、さすがにいいか。もう十分大人しくしてたし。
「そう、じゃあ残念だけどここらで帰らせてもらおうかな」
「なっ!待ってくれ!あと少しなんだ!あと数分!」
「いやだね。もう十分に待った」
なんでこんなになってるか知らないけど、別にいいや。見た感じ強い奴はあんまりいないし、このくらいの数ならどうとでもなる。
「わかった!話そう!我々が君を捕らえたのは、君が国家反逆を企てていると聞いたからだ!」
「国家反逆?なんでまた?」
確かに国滅ぼす計画をしてないでもないけどさ、さすがにまだ早いでしょ。ナルシスト一匹殺せないのに国に勝てるとは思ってないんだよね。
「宿白光亭、及び大通りでの破壊工作。そして最後に、ダンジョン内部、入り口での他冒険者への妨害及び狂乱。以上により国家反逆の疑いが建てられている!」
・・・ああ、本当に。
『妥当でしかないね』
「起きてたんだ」
『今起きたんだ。魔力が動き出したからさ』
なるほど。
『それでどうするの?僕はシオンに従うよ』
「そうだなぁ?まぁまずは、そこの早とちりから処すべきでしょ」
剣を構え迫りくる騎士の攻撃をかわし、剣を奪い取って腹を両断する。
『うわぁ、いきなり残虐だね』
「剣を抜いた時点で殺し合いは始まっている。どっかの誰かもそういってるでしょ」
『まあ確かに?でも、なかなかつらいことになってきたんじゃない?』
多くの騎士が突然の事態に対応できない中、一部の騎士が突撃してくる。
「対多数は魔王の基本。予行演習と行こう」
『僕はどうする?』
そりゃあもちろん。
「休んでていいよ」
前から迫る剣を先ほどもらった剣で弾き返し、そのままの勢いで後ろに迫る騎士を切り捨てる。突き出された槍をかわし、その持ち主へ剣を投げ、槍を奪い先ほどはじいた男を両断する。なかなか鋭い槍だな。
さて、そんな間で第一群はおしまい。次からが本番だ。
「全員体制を整えろ!見た目に惑わされるな!奴の強さは騎士団長並みとのことだ!」
ほう?騎士団長といえばこの国最強のはず。なかなかの評価を得ているようで。とはいえ、油断しないで行こう。いつの時代も数の力というのは恐ろしい。
「いいか!殺そうとは考えるな!足止めでいい!あと数分!ほんの一秒でも長く持ちこたえろ!」
ははっ、私はレイドボスかなんかかよ。いいね。面白くなってきた。
「全員まとめてかかってこい。相手してやる」
昂ったテンションのままに全力で槍を振るう。風が巻き起こり、周囲に近づいていた騎士たちがはじけ飛び、耐えきれなくなった槍が自壊した。
一瞬連中の脚が止まるが、恐怖をごまかすように雄たけびを上げて迫る。
だから私も飛び切りの笑顔を返し、踏み込む。
その瞬間、大地が割れた。
裂け目に落ちていく集団。対し、私は止まらない。
地上に残り、体制を崩した連中の下にたどり着き、一発、宙を殴る。
急加速からの急停止により生まれたエネルギーを余すことなく放出する。その瞬間風が吹き荒れ、周囲の人間は吹き飛び、前方の存在は余すことなく砕け散った。
「ふぅーーー」
ああ、楽しい。ようやく、やっと。やりたいことができてる気がする!
私の持論だが、蹂躙。それは魔王の本懐にして、存在証明である。
ならばこそ、全力でやろうじゃないか。
「次っ!来いっ!」
瞬間、宙を舞う。
「なら、僕が相手しよう」
声の方向を見ればそこにいたのは、全身に鎧を着こんだ人間。兜に隠された顔から除くのは真っ赤に染まった両目。見た目、声の感じからしておそらく若い男。
男から目を離さず、気配だけで周囲を探ると、すでに荒れ果てていた地面は元に戻り、割れ目に落ちていた騎士たちも回収されているようだ。
「ああ、なるほど。お前がこの国最強。騎士団長か」
「そうだね。僕の名前はアダルウィン。アダルウィン・ヴィットマンだ。過分にも騎士団長をしている」
「過分?十分以上に強いだろ」
本当に。お世辞なんていらないレベルだ。さっきから肌を突き刺すこの感覚。間違いない、こいつは私を殺す手段を持っている。おっちゃんも強くはあった。けどこれほどじゃない。苦戦はするが負ける未来は感じなかった。
ああ全く、今だけは感謝しよう。よくこのタイミングで私を転移させてくれたなダンジョンよ。また今度殺しに行くから待っていろ。
「強さだけなら、そうかもしれない。けどそれだけだ。僕は騎士をまとめ上げるに足る器じゃない。もっと適任がいるさ」
ああ、なるほどね?
「そうか、私はそうとは思わない」
「君がどう思おうと変わらない、僕にとってはこの位は荷が重いよ」
卑屈だな。何がそこまでお前を否定するのか。
「・・・仮にも長なら配下の前でそんな弱音を吐くべきじゃない」
「それも含めて、僕はこの場にふさわしくないんだ」
なんか、むかつくなぁ。仮にも長。であるならば私の目指す王というのとそう変わらない。
「そうだな、一つ言えることがあるとするならば。尊敬される存在ってのは、意味もなく堂々としてればいい。それだけで、配下ってのは勇気が出てくる。あいつがいる。なら俺も負けられない。あいつの力になりたい。あいつのようになりたい。そんな欲が、感情がある限り、兵士ってのは死なないんじゃねぇの?」
「・・・なるほど。ためになる話だったよ。だからまずは、君を倒すところから実践しようか」
「はっ、やれるもんならやってみろ、小僧が」
まだ足りない。もっと私を愉しませろ。




