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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第一章:魔王誕生

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其の三十六 再会

 雲一つない快晴の下、血でぬれた凄惨な事件現場にいる私とウード。そこに近寄るのは多数の警備隊。先頭に立つのは彼らの隊長である我らがおっちゃんであった。


「おいおい。また嬢ちゃんかよ」


「ね。おはよ」


「・・・おう」


 何か言いたげな顔をするおっちゃん。しかし挨拶はきちんと返してくる。


『知り合い?』


 そう聞くのはウード。そういえば買い物の時はどっか行ってたから会ってないのか。


「ああ。お前さんは寝てたから知らないのか」


『初めまして、ウードです』


「こりゃまた丁寧だな、俺はエルヴィス。一応警備隊長をしている」


 初めて明かされるおっちゃんの名前。エルヴィスだったのか。にしてもいつになくウードが礼儀正しい。頭でも打ったか?


「ウード。そのおっちゃんは昨日の件で世話になった人」


『・・・え』


「ついでに言うと非番だったところを呼び出されたかわいそうな人でもある」


『・・・ごめんなさい!』


「お、おう。そうか。ま、まぁきにすんな」


『ありがとう、ございます』


「おう」


 うんうん。いい感じに打ち解けられたな。そんな風に見ていると、異様に周囲の視線を感じる。人外を見るような目で見られている。なぜだ?


「隊長、それよりもこの事件について聞いた方がいいかと」


 隊員の一人がおっちゃんに声をかけた。どうやらうまく忘れてくれないようだ。どうしよ。


「あぁ?いらねぇだろ」


「「「隊長!?」」」

「おっちゃん!?」

『エルヴィス!?』


 思わず叫んでしまったが、それはほかの人も同じの様だ。てか名前で呼ぶのウードだけなのね。


「全員同時に叫ぶなよ、うるせぇだろうが」


「しかし!」


 適当なおっちゃんを非難する隊員たち。こっちとしてはおっちゃんを応援したい。


「なぜこの事件を捜査しないのですか!?」

「仮にも隊長ですよね!?」

「給料泥棒ですか!?」


 すごい。なんか面白いことになってる。これ絶対本心じゃないどころか、遊び心で喋ってるだろ。


「うるせぇうるせぇ、だってこれ事件じゃなくて事故だろ? 適当に安否確認で終わりでいいだろ」


 え?


「え?事故、ですか?」


「違ぇの?」


「いやそうだけども」


「ならいいじゃねえか」


 はい?


 なぜ一目で事故だとわかった?意味わかんないんですけど!?


『ちょっと待って、なんで事故だってわかったの?』


「ああ?んなもんみりゃわかるだろ」


 は?


 何言ってんだこの男。


『はい?』

「わかんないです」


「ああ?みろよ、この場で傷ついてんのは誰だ?」


「傷ついてるのは・・・」

『シオンだね』


「だろ? で、その嬢ちゃんの傷は治ってる。そんでこの場にいるのは俺らとその精霊だけだ。なら事故だろ」


 ちょっと何言ってるかわかんない。


「意味わかんないんですけど!」

「隊長頭おかしいんじゃないですか?」

「説明下手ですか?」


 やっぱ隊長なのに遊ばれてるよね。上下関係そんなんでいいのか。


「私も意味わかんなかったからもっかい教えて?」


 睨まれた。


「はぁ。しゃあねぇな。もう一回だけ説明してやるよ」


「途中はしおらないでね?」


 しっかりと釘はさしておく。これでまた雑な説明されても嫌だし。


「・・・いいか?まず前提としてけが人は嬢ちゃんだ」


「はい」

『そうだね』


 これはいい。私の血に染まった服を見ればそれはわかる。


「そんで、今嬢ちゃんは怪我していない」


「そう、ですね」

『そうだね』


 これもいい。よく見れば血の痕はあっても、出血はしていないことがわかる。


「そしたらもう事件は解決だろ?」


「は?」

『何言ってるの?』


「なんでそうなる!?その思考過程を言えって言ってんだよ!」


 理解できない。全く持って理解できない。これは説明下手ってレベルなのか?そもそも隊長としてやってけないだろ。


「おい、嬢ちゃんそんな叫ぶなよ。逮捕すんぞ?」


「ふざけんな!そんなことよりもっと詳しく説明しろ!」


 こっちにはお前のとこの部下が味方に付いてんだぞ!数の利はこっちにある!


「はあ?そもそも嬢ちゃんがここにいる時点で事件じゃねえだろ」


「は?」


 どういう理屈?


「だからよ、もし事件だったら犯人がいるだろ?でも嬢ちゃんがやられっぱなしでここにいる訳ねぇだろ」


「ん?」


 待て。何か掴めそうな気がしなくもない。


「嬢ちゃんがいるってことはその時点で二択なんだよ。犯人を半殺しにしてここにいるか、そもそも犯人はいないか、っつう」


 んぅ?それは、そう、か?


『確かに?』

「いや、なんでですか?」


 隊員たちは理解できないらしい。


「だからよ、嬢ちゃんが被害者なら犯人見逃すわけねぇだろ。たとえ捕まえらんなくても追いかけてここにはいないだろうしな」


「そうなんですか?」


 なるほど。ようやくわかった。おっちゃんの思考には前提として私はそれなりの力を持ってるやばい奴ってのがあるのだ。


「オーケーオーケー、おっちゃんが私の事どう思ってるのか大体わかったよ。一発殴っていい?」


「おいおい。暴力沙汰は大ごとになるぞ?」


「大丈夫、殴るのは私だけだから」


「だめだろ」


「おっちゃんが騒がなければ問題ないでしょ」


 ここだけの話で済ませればいい話だ。


「なるほど、隊長の言う意味がなんとなく分かりました」


 おいどういうことだ。隊員共が。お前らも殴るぞ?


「まっ、そういうわけだ。帰っていいか?」


「私はいいけど、昨日のお兄さんに早く来るよう言っといてくんない?ここ直すの早く始めたいから」


「おう、わかった。そんじゃ」


「ばいばい」


 さて、これで良し。面倒な警備隊は問題なく帰還。そして伝言も完了。なかなかいい結末なのでは?

 気がかりなのは、おっちゃんの後ろにいる隊員たちが漏れなくやばい奴を見る目でこっちを見てることとどことなく怯えてることだな。一体どうしたんだろうか。


『・・・シオン?』


「どした?」


『さっきの続きなんだけどさ。なんでエルヴィスは事故だってわかったの?』


 ああ。ウードは理解できなかったのか。まあウードが頭いいとは思ったことないしそんなもんか。


「それじゃあまず、事件だった場合。つまり私が誰かに襲われた場合を考えてみて」


『うん』


「今の私は治療済みで動ける状態でしょ? なら私は必ず襲ってきた奴にやり返すでしょ? その場合私たちのほかに犯人がここにいるはず。でもいないから犯人はそもそもいない、つまり事件ではないってこと」


『そっか。でも、もしかしたら逃げ足が速くて捕まえらんなかった可能性もあるんじゃないの?』


「その場合私は全力で探すからおとなしくここにいるわけないっていう話、もし居てもあんなにのんびり会話しないし」


『確かに。シオンなら建物破壊してでも追いかけそう』


 おい。否定はしないけども。


「ま、そんなわけで事件の可能性はないよねってこと。あとはそもそも私を襲ったにしては周囲への被害が少ないとか、そもそも私をあんなにできるような奴の気配を感知してないとかじゃない?」


『確かに。エルヴィスも結構強そうだったもんね』


「そういうこと」


 まあ考えてみれば簡単な話だ。私のことを知ってるそれなりの強者ならだれでもわかる話。ウードはわかんなかったけど。




 ☆☆☆☆☆


 あれから三十分が経った。


「おそくな~い?」


『遅い!』


「すいませんでした」


 私たちの前で正座させられているのは昨日の警備隊のお兄さん。長時間にわたって私たちを待たせた罰を受けている。


「まあいいや。それより材料とかどこにあるの?どこにも見えないけど」


「いや、まだないです」


「なんで?」


「そんな素材すぐに用意できるわけないじゃないですか!」


 確かに?


「でも大通りなんて早く直さないとだめじゃない?」


「そうですよ!普段使いを持ちろんのことですが、明後日には蛍祭りの本祭ですからねぇ!?」


「そうなの?」


「ええ!そうです!」


 ふむ。祭りの準備にかかりきりで道路整備まで手が回らないと。そもそもそんな資材ため込んでない可能性もあるな。大通りなんて普通壊れないもん。


「あれ?なんで私つかまってないの?」


「知らないですよ!?隊長がいつもの謎の力でうまくやったんじゃないですか!?」


 まじか。おっちゃん流石だ。使えないとか言ってごめん。滅茶苦茶優秀だった。


「ってことはさ。これ明後日までに直さないと私捕まるとかない?」


「あるんじゃないですか?何なら処刑されるんじゃないですかね」


「よし!ウード出番だ!」


『うん。これは必要だね。任せて!』


 おお。ウードが頼もしく思えるのはいつぶりだろう。何にせよ珍しいことだ。期待しよう。


「あの、何する気ですか?」


 そう聞くのは一般人代表警備隊員の男。


「時を戻す」


『期待してていいよ?』


「・・・冗談ですよね?」


 残念ながら一般人の彼には信じられなかったようだ。


「いや?」


『たぶんできるよ』


「いやいやいや!そんなのできたらまさに人間じゃないでしょ!」


『精霊だよ?』


 精霊は人間じゃないんだよなぁ。たぶんそういう意味じゃないんだけど。


「そういえば君名前は?」


「今聞きます?」


「うん」


 仕方ないじゃん。さっきから一般人だのなんだのわかりにくいんだから。


「アルカンです」


「そう。私はシオン」


『僕はウード』


「・・・はい」


 そして彼は考えるのをやめた。その後少しして。


『ムムム?』


「どした?」


『なんか、無理かも?』


 うそでしょ。あんなに自信満々だったのに。やはりウードはたいして使えないのか?


『あんまり言われると僕泣くよ?』


 気づかれた。まあいいや。


「泣けば?」


『ひどい』


 今のウードの価値はかなり低いのだ。悔しかったら実力でひっくり返してほしい。


「で?なんで無理なの?」


『なんかね、僕より上の何かが介入してる』


「どういうこと?」


『僕が道路を過去に戻そうとすると邪魔されるんだよね』


「何それ。直されると困るような奴がいるの?」


『いや、そういうんじゃないのかな?たぶんオートで邪魔されてる』


 なるほど。つまりあれだ。権限持ってないやつからの干渉はどんなものでも破却されるって訳だ。


「無理やり突破できないの?」


『無理かなぁ。僕より格がだいぶ上な気がする』


「というとさっき言ってた上位精霊とか?」


『うん。そんくらいだと思う』


 なんという展開。これでは振り出しどころかマイナスに振り切れてるぞ?


「ちなみにアルカン君は心当たりある?」


「心当たりというと、上位精霊に、ですか?」


「そうそう」


「・・・ないこともないです」


『あるの!?』


「教えて?」


「あくまで心当たりで確信を持てるわけじゃないですよ?」


「それでも教えて?」


 情報がない今は心当たりでも十分だ。


「今国にいる騎士団長が精霊騎士なんです。だからもしかしたら・・・」


「ほう!騎士団長!確かに持ってそう」


 やっぱ騎士団長ともなれば格の高い精霊もってそうだよね。


『でもどうだろ』


「ん?なんかあるの?」


『上位精霊ってそういないし、自我もかなりあるから人間の支配におかれることなんてかなり稀だから、本当にそうなのかなって』


 なるほど。同じ精霊のウードが言うならそうなのか?


「いや、あくまで俺は可能性を言っただけで嘘とかそういうんじゃないですよ!?」


「別に何も言ってない」


「・・・はい」


 ずいぶんとまあ怖がられたものだ。いったいなぜだろう。昨日はあんなに捕まえようとしてたのに。


『・・・シオン。僕らがまさに凄惨な事件現場!ってところに平然といるからだと思うな?』


 なるほど。というかさっきから心呼んでくるな。なんでだ?


『シオンがわかりやすいだけだよ』


「そっか」


『うん』


 じゃあいいや。


「それよりじゃあどうする?このままじゃ処刑されるらしいけど」


『一応あってみるしかないんじゃないかなぁ?』


「あってみるって、騎士団長の精霊に?」


『うん』


「あって許可取るってこと?」


『そうそう。それかその精霊に任せるか』


「なるほどね。ちなみに会えるもんなの?」


『わかんない』


 まあウードはそうだろうけど。


「俺、ですか?」


「うん」


「わかんない、ですけど、多分無理、じゃないですかね」


「そっかぁ」


 まあ確かにそうだよな。一介の人間が簡単に会えるわけないか。


「あ」


『何か思いついた?』


「ウィスケの爺さん使おうよ」


『ウィスケ?誰それ』


「宿のオーナーの爺さん」


 あの爺さんならワンチャンコンタクト取れるのでは?結構立場的には偉そうだし、貴族とも関りあるし。


『宿ってシオンが半壊させたとこだよね?』


「そうそう」


『もしかしたらあるかも!』


 だよね。


「アルカン君はどう思う?」


「宿を半壊…?」


 ダメだ。意識半分飛んでる。


「まあいいや。アルカン君!行くよ!」


「はいっ!?どこへ!?」


『白光亭!』


「白っ!」


 あれ、また飛んじゃった。どうしたんだろ。


「まあいいや、連れてけば」


『じゃあ道案内するね!』


「よろしく」


 といってももう場所はわかるのだが。主として、たまには従者にも活躍の機会を与えなくてはならないのだ。

 あれ?そういえばこの現場はそのままでいいのかな?さすがにきれいにしてかないとだめか?

 まあいっか。もともと壊れてるし、今更血痕の一つや二つ大したことないでしょ。



「よしっ、行く―――!?」



 ウードを追いかけるべく振り返ると



 そこにいたのは。



「なんで、お前がここにいる?」



「久しぶりだね。順調に成長しているようでうれしいよ」



「ナルシストッ!!!」



 かつて私を殺した男だった。

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