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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第一章:魔王誕生

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其の三十五 事件現場

 現在、ギルドは平時と大きくその様相を変えていた。立派だった玄関門は大穴が空き、内部の家具は崩壊、地面はえぐられ、壁には幾つもの穴が空いている。


 まるでギルド内部で殺し合いでもしたのかと見まがうような惨状。しかしその割に血はどこにもなく、凶器も存在していなかった。


 そんな場所で、私は地面に正座していた。


「それで?話を聞かせてもらおうかしら? なんでこんなことになってるのか私が納得できる理由をね?」


 目の前に立つのは若い女性。私が冒険者になる時に担当した受付嬢であり、私にダンジョンの存在を教えてくれた神である。


 ではなぜ私が彼女に叱られているのか。それを一言でいうなら、私が子の惨状を引き起こしたからである。いや、この言い方では語弊がある。より正確に言うなら、


「すべてウードが悪いです。責任は全てこいつがとります」


「アホ!」


 叩かれた。


「そんなのは知らないわよ!どっちが悪いかなんてどうでもいいの!重要なのはこの惨状をどうするのか、具体的な内容よ!」


 そうは言われても。やってしまったものは仕方ないのだから諦めるしかないのだ。どうあがいても過去は変わらないのだから。とはいえ、そんなことを言えばまたたたかれるのは必至。となれば。


「お金払うので許してください」


「・・・あなたにそんなお金あるのかしら?ついこの間大金稼ぎたいってギルドに来ていた記憶があるのだけど?ない―――」


「あります。お金ならいくらでも」


「―――へ?」


 ぽかんとしている。

 ・・・美人というのはいいものだ。驚き固まっている姿でさえ様になるのだから。

 ソラにはかなわないけど。


「ちょっ、ちょっと待って。聞き間違いかしら?今お金ならあるって聞こえたのだけれど」


「あります」


「へ?な、なんで?だってこの間、あれ?」


 混乱しているようだ。


「水でも飲んで落ち着いたら?」


「そ、そうね」


 かろうじて残っている無事な席に座り一息ついた後、話の続きを始める。


「それで、いくら必要なの?」


「え、えっと。金貨数枚かしら?」


 金貨数枚。金貨か。まだ教わってないな。


「それっていくらくらい?」


「えぇ?えっと、数十万サイラスくらいよ」


 ほうほう。数十万。なるほど、


「安いな」


「はっ!?」


 おおすごい。目が飛び出そうなくらい驚いてる。


「安いって、あなた、何言って」


「だって、ここまで壊してその程度なら安くない?一千万もいってないんだよ?」


「はぁ?」


 ひどい。頭の悪い奴を見る目で見られてる。実際物価とかわかんないから何とも言えないけど。でも、この間の何十億の請求と比べたらこの程度安いと思うんだ。期限も長そうだし。


「あ、そういえば期限はどのくらい?明日まで?」


「いや、何言ってるのよ?そんな早い訳ないでしょ…」


 おかしい。また頭のおかしい子を見る目で見られた。そんなにあきれないでほしい。私は私の経験から考えて喋っているのに。


「じゃあ期限ってどのくらいよ、一週間?」


「特に決まってないわ」


「え?」


 えぇ?どういうこと?


「はぁ…」


 人の目の前でため息つくの良くないと思う。私泣くよ?


「あのね。そもそもお金で払うことなんて想定されてないのよ」


「え?どういうこと?じゃあ許されるってこと?」


「違うわよ。お金じゃなくて奉仕よ奉仕」


「奉仕?」


 奉仕っていうとあれか。ボランティア。ただで仕事する奴。


「そう。ギルド内で暴れて被害を出した場合その規模にあった奉仕活動をさせるの。罰としてね」


「へぇ。例えば?」


「喧嘩して多少物を壊したとかなら普段誰もやりたがらないような依頼をやらせるし、馬鹿やってしばらく活動できなくしたなら依頼達成の報酬のいくらかを天引きしてその相手に渡さなきゃいけない、とかね」


 なるほど。割と緩いな。まあ反省のためのものなのだろう。あとギルドの都合とか。塩漬け依頼はどうにかしないとだし。


「じゃあ今回みたいな大規模な破壊の時は?」


「知らないわよ」


「へ?」


 おいおい、知らないってなんだよそりゃあ。


「こんなこと今までなかったからに決まってるじゃない!」


「え~、なんで?」


 建物の老朽化具合からしてギルドだってそれなりに長いだろうし、今までにこんなことあってもいいと思うんだけど。


「普通こんなことする奴いないに決まってるでしょ!?」


「え~?」


「あのね!普通こんなことできるような人はもっと大人なんです!理性的なの!」


 理性的って。それじゃ私が狂暴みたいじゃないか。そんなことないのに。


「絶対理解してないと思うけどね!理性的な人ならこんなことしないの!喧嘩するにしても場所変えるの!街中で暴れたらどうなるかわかってるから!」


「嘘だ」


 少なくとも私の知ってる強いらしい奴らは痴話げんかで高級宿半壊させてたぞ?それで借金してた。


「嘘じゃないわよ!だってこんなことしたら警備部隊か騎士団が来るもの」


「警備部隊?」


 そんな時、私の感知領域に何かが入ってきた。


「強いな」


「え?えぇ。それももう強いわよ」


 来たか。速度は遅いか? 

 いや、私が感知してから五秒ほど。感知圏内は大体一キロはカバーできるとして秒速二百メートル。街中であることを考えればこんなものか。


「おいおい、これはいったいどういう状況だ?」


 聞き覚えのある声。振り返ってみると、昼間に串焼きを売っていたおっちゃんが扉の穴から顔を覗かせていた。


「マジか」


「ん?そこの嬢ちゃんは昼間のか。ちょうどいい、ここで何があったか教えてくれよ」


 ・・・やばい。どうしよ。今戦ったら負ける。そうでもなくともあんまり大ごとにしたくない。今の私には帰りを待つ少女がいるのだ。


「ん?どうした?顔色悪そうだな?」


 すぅ~。どうしよ。


「隊長!一人で先行かないでください!何かあったらどうするんですか!」


「悪ぃ悪ぃ、つっても元々非番なんだぞ俺は」


「そうですけど…それで、どういう状況ですか?」


 ・・・警備員が増えた。てかおっちゃん隊長なのかよ。あと非番なら来んなし!


「ん?知らん」


「そうですか…では、皆さんにお聞きします。ここで何があったか知っている方は?」


 隊員Aがそう尋ねた瞬間。一斉に視線が集まった。この薄情者共が!


「なるほど、あなたが原因ですか。では、ご同行願えますか?」


「いやっ、私じゃないかな?」


「・・・?ですが皆さんあなたを指しているようですが」


「いやっ、気のせいだと思うよ?」


 くっ、苦しい。この状況でまともに言い訳なんてできるか!?助けておっちゃん!


「まぁまて、別に連れてかなくたっていいだろう?」


 おっちゃん!


「ですが!」


「無理に連れてこうとして逃げられても困る。ならこの場で聞き出した方が早いだろ」


 おっちゃん?


「それは…わかりました。ではこの場で尋問を開始します。よろしいですか?」


「いやっ?ここだとみんなに迷惑なんじゃないかなっ?」


「それは確かにそうですね。ではやはりご同行願いましょうか」


 ほっ。これであとはうまいこと逃げれば


「いえ、ここで構いません」


 神様!?


「そうですか?まぁアマリアさんがそういうのでしたら」


 おいっ!何者だよアマリア!いや神様だけど!?それはあくまで私にとっては、じゃん。なんでそんな信用度高いの!?


「では、やはりここでしましょうか」


「いやぁ?それはちょっとぉ」


「おい、嬢ちゃん。悪いことは言わねぇ。ここはおとなしく従っとけ」


 おっちゃん?


「うまくいけば、何もなかったことにもできる。ここでうまく話がついたら、な?」


 おっちゃん!


「わかりました。ではここで話しましょう」


「はい。ではまずは何が起こったのかからですね」



 そうして一時間が経ち、情報の共有・話し合いが終わり、結論が出た。


「では、シオンさんはしばらくの奉仕活動ということで、町の復興をしてもらいましょうか」


 ()()だった。


「なんで!?いいじゃん!お金で解決すれば!なんで労働しなきゃいけないのさ!」


「そういうところですかね」

「そういうところよ」

「そういうことだな」


 満場一致で否定された。


「なんで!?」


「まあ落ち着け、逆にこの程度で済んでよかったと思えばいいだろ」


 おっちゃん!


「この程度ってお金と労働両方なんですけど!?」


「そりゃ仕方ねぇだろ。壊したのがギルドだけなら金で済んだかもしれねぇけど、今回はなぁ?」


 んぐっ!


「それは、…確かに」


 そう。あの一撃、実はギルド内部だけでなく、扉を突き破り町を破壊していたのだ。たまたま夜で、本当にたまたま目の前が大通りだったおかげで道路の地面をえぐる程度の被害で済んだからこの程度で済んでいるが、もし昼だったら、もし目の前が住宅街だったなら今私はここにはいないだろう。


「でもさぁ!私悪くなくない!?正当防衛じゃない!?全部その馬鹿のせいじゃん!」


「ですが皆さん彼は何もしてなかったといいますし」


「だからそれは見えなかっただけでしょ!」


 こうも、私だけが悪者にされているのはあの戦いは魔力によるものだったからだ。あいつが武器を造って攻撃してるのは誰にも見えなかったらしい。それは私も同じのはずなのだが、最後見るからに何かしたときに、突然物が壊れたからって全部私の責任にされてるのだ。

 確かに壊したのは私だけどそういう状況にしたのはあいつじゃん!


「おっちゃん!何とか言ってよ!」


「俺は早く帰りたい。だから受け入れろ」


「なっ!?裏切者!」


 くそ、昼間に渡した金のこと忘れたのか薄情者!


「そもそも俺は非番なんだよ、見るからにやばい奴ってことで俺が回されただけでこの件に関して俺に権限はねぇ」


「そんな…」


「そもそも隊長に権限なんてもとからないじゃないですか」


「ああ?減給すんぞ?」


「戦闘以外の権限持ってないじゃないですか」


「ちっ、可愛げのない部下がよぉ」


 くそっ、なんてことだ。おっちゃんは形だけの隊長だったなんて!


「使えない」


「オイ聞こえてんぞ」


 やば。


「冗談冗談。ね?」


「はぁ。まあいい、それよりおとなしくこの条件で受けとくんだな」


 はぁ。仕方ない。


「じゃあ明日の朝この場所集合でいいですか?」


「いいんじゃねぇの?」


「じゃあ今日は帰ります。お疲れ様でした」


「あいよ。これで俺も帰れるぜ」

「はい、お疲れ様でし・・・た?」


 さてさて、疲れる一日が終わった。早く宿に帰って久しぶりにベッドで寝ますかね。魔力も回復させないとだし。


「あ!ダメですよ!一応監視対象にはなるんですから!」


 やべ。急いで逃げよ。


「ちょっと待ちなさい!懲罰が増えますよ!」


 聞こえない聞こえない。何も聞こえない。


「まあまて、どうせお前じゃ追いつけねえんだし諦めろ」


「隊長!じゃあお願いしますよぉ!」


「無理」


「隊長!?もっとまじめに働いてください!」


「俺非番だし」


 おっちゃん、さすがだ。無駄なことはしない。なんて良いおじさんなんだ。





 ☆☆☆☆☆


 翌日の早朝、壊れた冒険者ギルドの前に立つ二つの影があった。


『・・・・・』


「・・・・・」


『・・・・・』


「・・・・・」


 幼女と精霊。シオンとウードである。


「・・・で?いつまでそうしてるつもり?」


『・・・』


「はぁ。面倒くさい」


『うっ・・・』


「はぁ~」


 思わず大きくため息をつく。しかしそれも仕方ないだろう。今朝目を覚ましてからずっとこの調子なのだ。何もしゃべらず、うじうじとしている。一応、ついては来るものの特に何かすることもない。昨日の調子はどこに行ったのだろうか。


「ウード」


『・・・はい』


「こっち向け」


『嫌です』


 殴った。


『うっ・・・』


「なぜだ?」


『・・・顔合わせられない』


「なぜだ?」


『昨日、ひどいことしたからです』


 殴った。


「その割に謝罪された記憶がないが?」


『・・・なんて、言えばいいか、わからなくて』


 蹴った。


「悪いことしたときはごめんなさいだろうが」


『・・・ごめんなさい』


「こっち向け」


『・・・はい』


 殴った。


「痛いか?」


『・・・痛い…くないです』


 殴った。


「痛いか?」


『痛くないです』


 殴った。


「痛いな?」


『痛い、です』


「そうか」


 蹴った。


『痛いです』


「そうか、今後はもっと辛いからな」


『・・・はい』


 ・・・だめだ。わからない。喧嘩の後ってどうすればいいの?私にはわからないよ!誰か助けて!


『・・・・・』


「・・・・・」


 気まずい。このままだと私がただ殴っただけになるんだけど、どうすればいいの?だれか教えて!


「・・・あのさ」


『・・・はい』


 ああくそ。ほんとにどうすればいいの?今まで考えて喋ったことなんてないよ!私もともとどんな感じだったっけ!?


「・・・気にするな…とは言えないけどさ」


『・・・うん』


「今まで通りでいいんだよ」


『でも』


「完全に今まで通りじゃなくていい。私だってどうすればいいかわかんないもん」


 なんて言ったけど。


 でも、これは違う。こんなにギクシャクしてんのは違うじゃん。まるで別れた直後のカレカノみたいじゃないか。


「だから、今後は私を主と慕いなさい。従者としてその言葉に従い、私に全てを捧げるの」


『主従関係?』


「そう、そのうえで一生叶わない片思いしなさい。私に尽くしている間は多少相手してあげる」


『・・・それで、僕は許される?』


「うん。それで許す」


『わかった。僕は今後、シオンに尽くすよ。もうわがままなんて言わない。死ねって言われたら死ぬ』


「それでいい」


 ふう。これでいい。これでこの状態は終わりだ。


「それじゃ、ウード。早速仕事だ」


『はい。何ですか?』


「固いなぁ。もっと気楽でいいのに」


『だって、僕は従者で、シオンは主でしょ?』


「それはそうだけどさ、別に無理しなくていいの。ほかの人は知らないけど、私は言葉じゃなくて態度で示されればそれで充分」


『そう、なの?でもそれじゃ今までと、』


「そうだよ?」


 別に主従関係なんて言っても、今までと大して変わらないのだ。今までだって、ウードは私に対する愛から都合よく使われてたし、多分私が死ねっていえば死んでたもん。昨日こそ失恋で精神壊して狂ってたけど、元々家庭内権力は私がダントツでトップだったからね。


「でもあれじゃん。実態はどうあれ前と関係性は変わってるし、罰も受けてんだから気にすることないでしょ」


『それは…そう、なのかなぁ?』


「そうです!そもそもウードなんて罰受けたいだけでしょ」


『うぐっ! ・・・はい』


「まあそのうち慣れるし、しばらくは罪悪感に悩んでな」


『・・・わかり、った』


「よろしい」


 どうせすぐに調子取り戻すだろうしこれ以上は放置でいいでしょ。


「それよりさ、この惨状を一瞬で治す方法知らない?」


『これを?』


「そう。これ終わるまで何もできないからさ。早く終わらせてダンジョン行きたい」


『またダンジョン…』


「文句ある?」


『いや、ないです』


 よろしい。


「それでなんか思いついた?」


『一応は』


「えっ?まじであるの!?早くやろう!」


 マジか。正直ないと思ってた。たまには使えるじゃん。あとでなんか買ってきてやろう。


『でもね。そのぉ、かなり厳しいよ?』


 それはそうだろう。それなりのリスクはあるのも当然だ。だけどそのうえでやろうと言いたい。


「ちなみにどんくらい?」


『最低でも今日一日はダンジョンに行けなくなる』


「なるほど」


 となるとどうするのがいいんだ?

 正直普通にやるにしても材料さえあれば魔力・妖力駆使したら今日中には終わりそうなんだよね。私本気だせば力持ちだし足も速いから。


「ちなみにそれってどういう方法?」


『大量に妖力使って過去の状態を復元する』


「それって実質時戻すってこと?」


『そうだね』


「できるの?」


『できないことはないかなぁ?』


 マジかよ。


「それって精霊ならだれでもできるの?」


『う~ん、これくらいなら中位精霊はできるかな?下位だと長く生きて力をため込んだ精霊とかならできると思う』


「中位とか下位とか言われてもわかんないんだけど」


『えっとね、下位精霊が昔の僕。普通の何にも染まってない一般的…な精霊かな?それで、中位が属性付き。大体今の僕みたいな感じ。そのうえが上位精霊がさらに専門的な何かに属する精霊だね』


 なるほど?


「てことは浅く広くが下位で、中位上位が深く狭く見たいな感じ?」


『そんな感じかな?でも上位なら関係性なくても大抵のことはできるんだけどね』


「なるほど。それでウードはいつの間に進化してたの?」


『この間のダンジョンで進化したんだ』


 ダンジョンっていうとあれか。あの龍撃破後か。私気絶してたしその時かな?


「ふ~ん。なんの属性なの?」


『名前はわかんない。けど一応僕は魔属性って呼んでる』


「へ?」


『シオンが使う魔力に関する属性だから魔属性、つまり僕は魔精霊ってことだね』


「ああ。そういう」


 確かに魔力が存在しなかったならそうだよね。魔力ないのに属性に名前付いてる方がおかしいもん。


「まっ、それはわかったけど実際これどうする?」


『どうするって?』


「時戻して直すか、ちまちま直すか」


『う~ん。こういうのって責任者に聞いた方がいいんじゃない?』


 それもそうか。勝手にやって準備無駄にしても怒られそう。


「じゃあ待ちです!」


『了解です!』




 ☆☆☆☆☆


 あれから数時間、辺りはすっかり日も出て完全に朝になった。


『シオン…これ本当に場所あってる?』


「あってる…はず」


『でも全然来ないよ?』


「・・・言いにくいんだけどさ」


『うん』


「そもそも集合時間知らないんだよね」


『・・・へ?』


「昨日場所だけ決めて帰ったからさ」


『・・・そっか』


「うん」


 静かになった。数分の間をそうして過ごし、再び声をかけられる。


『・・・ところで今何してるの?』


「修行」


『修行?なんの?』


「魔力量増やすやつ」


 む。ちょっとまずいか?


『そっか・・・はっ!? 何してんの!?』


「あっ」


『え?』


 突如、腹が爆発した。


『はっ、あぁ?』


 血と臓物が飛び散り周囲を汚す。空を見上げ、薄れゆく意識の中治療を施す。


「今のは危なかった」


『え?』


 いや、本当に危ないところだった。最近は魔力量も上がってきているから失敗したときの被害がシャレにならないのだ。今回なんて腹に大穴空いて背後まで貫通してた。


「はぁ、ウード。私が集中してるときにいきなり叫ぶのはやめてよ。危うく死にかけたじゃん」


『あ、ごめん』


 ちゃんと謝るとはずいぶんとまぁしおらしくなったものだ。前ならば文句を言ってただろうに。


『・・・いや、シオン?』


「なに?」


『その、この場所でそういうのは止めた方がいいんじゃないかな?』


「だって暇なんだもん」


『・・・うん。それはわかるんだけどさ? ・・・周り見てよ』


 仕方ないので辺りを見渡す。壊れた地面や壁に流れる血と臓物。遠くで怯えている民衆や、ぞろぞろと集まってくる警備隊。


「・・・事件じゃん」


『そうだよ!?』


 困った。これは困った。失敗した場合のことをまるで考えていなかった。私は回復できるから大丈夫でもそっか。


「今から証拠隠滅できないかな?」


『無理だよ!?』


「そっか」


 どうしようかな?

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