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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第一章:魔王誕生

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其の三十一 平穏な日常

 太陽の国の王都を東西南北に分断する大通り、平時は数台の馬車が並走して通れるほどの幅を誇るそれだが、至る所に装飾や出店により私の初入国当時からは大きく様相を変えていた。


『うわぁああ~~、シオンシオン!あっち!あっち行こ!』


「うおっ、行くから、ついていくから魔力使ってまで引っ張らないでよ・・・」


『だってだって、早く行きたいんだもん!』


「だからって魔力使わなくても…ていうかなんでそんなうまく扱えてんの?」


『もうっ!そんなのはいいから早く遊ぶの!!』


「そんなのって…まあ、いっか?」


 せっかくの祭りだし、たまには強くなることは忘れて楽しまないと。根を詰めるのも悪くないけど、休養も大事。一流とはそのオンとオフを自然と切り替えられるものなのだ。


「って言っても、いったい何をするんだ?」


『・・・シオンがたとえなんと言おうと、これはお祭りデートです』


 ・・・・・・へ?


「いや別にデートなことは否定してないけど?」


『んんっ! そして! 僕らが相棒なのもまた事実!』


「まあ、そうだな?」


 だめだ。全く話についていけん。結局こいつは何が言いたいんだ?


『相棒というのは隣に並び立つものであり、お互いを信頼しあう関係、つまり!』 


『僕らは実質相思相愛ということ!』


「いやそうはならんでしょ」


『なんでっ!?』


 一体何を驚いているんだこいつは。


「何でも何も初めから私たちは事実として夫婦でも実情はそうとは限らない関係だったはずでしょ」


『んぐっ! そうだけどさぁ……つい最近あんな危機を乗り越えたんだし、ちょっとくらい仲が良くなってもよくない? あれだよあれ、吊り橋効果ってやつ!』


 吊り橋効果って……確かに一緒に危機は乗り越えた。それも負けたら死、チャンスは一回の特大の危機だ。でもそんなのは魔王目指すなら日常茶飯事ですしお寿司。効果はないとは言わないけど恋愛に発展するかと言ったらしないでしょうよ。


「まあ、確かに私の中での評価は上がってるよ」


『え!? 本当!? どのくらい!?』


 近い近い。勢いよく詰めてくるのやめてくれないかな。子供じゃないんだし、もうちょい節度を持った行動をしてもらいたいものだ。


「はぁ……よくわからない変質者からよくわからない悪友かなぁ」


『何それ!? シオンって僕のことそんな風に思ってたの!? 信じられない! 僕はこんなにシオンのこと好きなのにっ!!』


 だから近い近い。あとそんなに騒がない。周りの人に迷惑でしょうが。


「ハイハイ。そんなこと言う前に自分のしてきたことを考えましょうね」


『してきたことって……別に変なことしてないよ! それどころか死にかけのところを救ったヒーローでしょ!?』


 何を言ってるんだこいつは。


「どう考えても変質者でしょ」


『なんで!?』


「たとえ命の危機を助けられようといきなり求婚してくる奴を変人と思わない女はいません! まあ私元は女じゃないけど」


『そ、そんなぁ……でもいいもんね! 今日でシオンからの評価もっと上げてあげるんだから!』


「ハイハイ。期待しないで待っときます」


『そこは期待してよ! ……あれ?期待されてない方がギャップ萌えでいいのかな?』


 いや知らんが?そもそもギャップ萌えってそれでいいのか? って、そういえばこの後の事が聞きたいんだった。


「それで? 私を落とそうと画策してるウードさんはこの後の予定は決まってるんですか?」


『え? この後の予定なんて決まってないよ?』


「・・・はぁぁぁ~」


『なんでそんなため息つくのさ!?』


「いやだって、ねぇ?」


 仮にもデートっていうなら予定くらい決めときましょうよ?しかも意中の相手を落としたいならなおさら……


『だってお祭りは気の向くままに楽しむのがいいんじゃないか!』


 いや、何も全部を決めとけとは言わないよ?実際全部が全部予定通りってのも面白くないし。


「でも最低限どこに行くか、そこで何するか、どこでご飯を食べるかくらいは決めとかないとだめでしょう?」


『む~~、それは、確かに』


 ・・・?なんだ、この違和感。何かがおかしい。私は正しいことを言ったはずだ。だというのになぜこんなにも気持ち悪い感覚が残ってる?私は何か忘れているのか?


『でもねシオン、普通のデートならそれは正しい。普通のデートならね!』


 普通のデート。わざわざそういうからには今回のデートは普通じゃない?いったい何が?いや、相手が精霊だの私が異世界からの転生者だの元男だのは確かに普通ではない。だがそうじゃないだろう。たとえここが変わっても先の意見は正しいはずだ。なんだ?私は何を見落としている?


『シオン。今回のデートってさ』


 はっ!まさかっ!?


『ついさっき決まったばっかりなんだよ?』


「うぁあああぁああ!!」


 そうか、私の中での違和感はこれか。これだったのか!先の話は正しい。だがそれは前提として、デートの予定が決まっている、場合に限る。今回の場合、お祭りデートに行くとは言っていたがいつ行くのかは決まっていなかった。いや、もし私がデートに行くとは言っていたといったところで意味はない。なにせ。


『それに、デートの予定を立てられる時間なんてなかったよね』


「くっ!」


 そう、私はこの国にきた初日以降ウードに自由時間など与えていなかった。いや、初日ですらまともになかったはずだ。何せ初日、昼間は酔いつぶれていたからな。夜こそどこかに行っていたようだが二日目からは借金でダンジョンに籠りきり。今日地上に出てからはもちろん私と一緒にいた。デートの下見はおろか、街を見て回ることはもちろん、予定を考える暇も大してなかったのだ。これではまるで私が恋人に無理難題を課し、達成できなければ叱る理不尽女ではないか!


「ああ……くっ!私の、負けだ。ウードよ、どうか、どうか愚かな私を許してくれ」


『ふはははは、シオンもまだまだよのぉ。まあ良い、ミスは誰にでもある。以後、気を付けるように』


「・・・はい。寛大なお心、感謝します」


『まっ、そういうことでね!ここからは切り替えて楽しんでいきましょう!』


「・・・はい」


『あれ?どうしたのシオン』


「・・・・・」


 あああああああああイラつく!なんで私はこんなことに気づかなかったんだ!く~~~~!!!理不尽に怒るなんて……あまつさえ自分の失態を他人にかぶせようだなんて!虫唾が奔る。穴があったら入りたい。そして腹を破裂させてわびたい。


『し、シオン? その漏れてるよ?』


「え? 漏れてる?」


『うん。すっごく』


 漏れてる?何が?私のポーカーフェイスは完璧のはず、素晴らしい魔王はたとえ怒り狂っていてもそれを他者には見せないものなのだ。なぜなら王だから。同様の理由で怒ってますよオーラも出ていないはず。一体何が漏れているというのだ?


「何が漏れてるの?」


『何がって……ええと、魔力が』


 なんだ魔力か。なら問題は……あるよ!?なにしれっと流そうとしてんだ私!?魔力が周りにどんな影響もたらすかわからないんだから早く取り込まないと!最悪死人が出るのはいいにしても魔力が見える人もいるかもしれないんだし迂闊に見せちゃダメでしょうが!私にとって魔力は切り札なんだから!


「はぁ。危なかった」


『ほんとにね…気を付けてよ? 僕はまだお祭りを楽しみたいんだから。……大量殺人で投獄とかされたくないからね?』


「それはそう」


 ここにはまだダンジョンという素敵なものが残っているのだ。まだ国を亡ぼすわけにはいかない。というか今戦ったらまだ魔力が回復してないから割と負けそう。


『だからさ、シオン。僕は今日くらい普通の女の子でいてもいいと思うな?』


「普通の女の子?」


『そう、普通の女の子』


 ・・・普通の女の子。普通。普通?


「普通って、普通?」


『そう。お祭りにわくわくして、はしゃいで、なれないおしゃれしてみて。好きなことをして笑って、人目を気にせず楽しんで、馬鹿みたいにふざける。そんな普通の女の子』


 普通って言われてもなぁ。私にとっての普通はこれだし。魔王関連のこと考えてなかったらそれは私にとっては普通じゃないというか。


「世間一般の普通と私の普通は違うからなぁ」


『まあ無理にとは言わないけどさ、僕としてはほら、せっかくのお祭りなんだしもっと子供らしく、深く考えないで遊んだほうが楽しんと思うんだけど…どうかな?』


 なるほどねぇ。それでこいつはいつも以上に子供になってるのか。でもなぁ、子供らしい魔王というのは……


「ありだな」


『え!? 本当!?』


「うん。やっぱり魔王はその時まで正体を隠すのもいいよね。最初からどんな奴かわかってるんじゃなくて、旅するうちに魔王の情報を集めてどんな奴か想像する。そして最期、その時の答え合わせというのも乙なものだよね」


 あとは魔王が特定の誰かじゃなくて、時代ごとにいろんな姿を持っていて、各地で残ってる一見何の関係もなさそうな伝承が実は全部魔王に関連するみたいな?そういうあとからわかる系の要素も面白くていいかもしれない。


『あはは、相変わらずだね……まあいいや、楽しんでくれるなら何でも』


「よしっ、そうと決まれば早速遊びに行くよ!」


『あっ! ちょっと!? そんな急に走ってどこ行くの!』


「知らない!」


『知らない!?』


 うん。知らない。でもまあ、何とかなるよね。予定なんかなくても楽しめる、それが子供のすごさと言う奴だ。それに。


「ウードが私を好きだというなら、一緒にいるだけで楽しいんだからいいでしょ?」


『うう、それはそうだけどさぁ』


「ん~?私が好きでたまらないウード君は何か言いたいことでもあるんですか?」


『言いたいことっていうか……シオンが…僕の知ってるシオンじゃなくて違和感というか』


 なるほど。つまりはあれだな?


「いつもツンツンしてる私がデレだして困惑していると」


『んぐっ!? まあ、そういうことなのかなぁ?』


「まあ今の私は子供だからねぇ、普段は言わないこともぽろぽろ零しちゃうし、思ったことは包み隠さず言ってしまう状態。人付き合い初心者のウード君には刺激が強かったかなぁ?」


『べべべ別に、そんなことないし! 全っ然問題ないけど!? あと人付き合い初心者じゃないし! 長生きしてるし!』


 はっはっは。なかなか面白く踊ってくれるじゃあないか。まあからかうのはこのくらいにして、いい加減祭りを楽しもうかな?おいしそうなにおいがすごくてそろそろ我慢の限界だし。


『あっ! シオン話聞いてないでしょ! 僕は本当にドキドキなんてしてないんだからね!』


「ハイハイ。とりあえずあそこの屋台行こうよ。おいしそうだし」


『ごはん!?食べる食べる! ほらっ!早くいくよ!』


 ほんと、ちょろい。これ大丈夫かなあ、戦闘中お菓子につられて裏切ったりしない?まあいっか、その時はその時で。今は久しぶりのごはんを楽しみます。

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