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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第一章:魔王誕生

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其のニ十九 悪夢再来

 さて、サイボーグ暴走族集団事件からしばらくが経った。具体的にはあれから四階層ほど降りてきている。ちなみに出てくる敵は数が増えたくらいで大差はない。突進の速度から見て、たぶんスペックは上がっているのだろうが結局一撃なので誤差にしか思えないのだ。あと瞬殺しているせいで攻撃方法が変わっていても気づけない。


 それよりも、目下問題なのはこっちだ。


「うーどぉ?もうあいつらはいなくなったよ~。もう怖くないから出ておいで~」


『やだ!しばらく中にいる!』


 これである。あの事件からそれなりに時間がたち、その後は瞬殺を心掛けているのだが、この調子で引きこもりになってしまったのである。困った話だ。まあ、大体理由はわかるのだが。

 大方恐怖で私にとりついたのはいいものの、居心地が良すぎて抜け出したくなくなったのだろう。ちなみになぜわかるのかというと。


『(魔精霊になったからかな。魔力がいっぱいのシオンの体がすっごい落ち着く。なんとしてもこの場所を死守しなければ!最近頑張ってたしこのくらいのご褒美はいいよね!)』


 ということだ。私は憑依を同一化とみなしている。その結果、私にとりつくウードの体を魔力が流れるようになっただけでなく、ある程度思考が漏れだすようになっている。これは私からウードへも同様なのだが、簡略してでも急いで伝えたいことがない限り思念が漏れないようにブロックしている。魔力でなんやかんやしてるから、ちゃんとできているかわかんないけど。今のところはうまくできている.....と思う。


 で。なんでウードが私にとりついていると困るかというと、シンプルに気持ち悪い。普通にしてるだけなのにウードの方から感情が漏れてきてチグハグになる。つまり、認識と感情がずれてその相違が絶妙に気持ち悪いのだ。


 考えてみてほしい。目の前で人が死ぬとかの凄惨な現場を目撃し、精神が参っているとき、どこからかなぜか安心してたり喜んでいる感情が流れて着たらどうなるか。自分は吐きそうになっているのに、自分の中の誰かは嬉しがっているのだ。その相違はさらにその人を悩ませ、苦しませるだろう?


 それさえなければ魔力総量が増えたり、魔力操作がしやすくなったりと良いこと尽くめなのだが。如何せん魔力が精神面に依存する以上デメリットが大きすぎるように思える。正直ウードの助けを借りる必要があるほど困ってないし。


 そんなわけでいい加減外に出すなり、大人しくさせるなりしたいのだが、無理やりに下手な行動して反感を買っても困るのだ。私はまだ先へと進みたい。地上に帰るのは後回しにしたい。くっ、私は与奪の権を握っていると同時に与奪の権を握られて…あれ?別に問題ないか?なんか私がお願いすればうなづいてくれそう。押しに弱いし、惚れた弱みだし。でも不満をためそうだし騒がしくなるからやめとこ。


 ということで、多少の違和感には目をつむってさらにさらに次の階へときたわけだが、ここらで例のものを飲んでおこうと思う。


 そうして取り出しますは幸運になる薬とバッタ薬。どうせバッタ薬に関しては売れないだろうし飲んで損はあまりないだろうということで飲むことにした。


「うげぇ、あんまりおいしくない」


 先に飲んだのはバッタ薬。味はとても苦い青汁みたいだ。少し気合を入れて飲み干し、本命の幸運薬に口をつける。


「ん?」


 一口飲んでみたが味がわからない。思い切って残りをすべて飲み干してみる。


「無味」


 まるで味がしない。でも口に残っていた苦みも取れたから良しとすることにする。


 さて、この次が本命だ。なぜ私がこんなとこで幸運薬を飲んだか。それは。


「ウード、出番だ」


『えっ?出番?』


 再び取り出すのは何か液体の入った小瓶。そう。宝箱産の薬である。幸運薬を飲んだのは運を上げ、少しでも中身を良いものにするためだ。


「この薬の効果を教えて」


『あっ、そっか。そういえばもう一本あったね』


「そうそう。もしかしたらこれが私たちに役立つものかもしれないから忘れないうちに調べときたくて」


『わかった!ちょっと待ってね』


 くくっ、かかった。私がこの薬を鑑定させるのは効果が知りたいからだけじゃない。ウードを私の体から追い出すためでもある。


『シオン?』


「あ、うん。どうかした?」


『いや、もうわかったんだけど…伝えていいものかわからなくて』


「え?」


 もうわかった?でもまだウードは私の中にいる…あれ?そういえばなんで分離しないと鑑定できないなんて思ってたんだ?確かに今までは別の時にしか鑑定してなかったけどそれは、できないからって訳じゃないかもしれないのに。


「…馬鹿じゃん」


『シオン?』


「いや、何でもない。それで、結果はどう?」


 ふ~、待て待て確かに目的の一つは失敗に終わったがまだもう一つが残っている。終わり良ければ総て良し。薬の効果さえよければどうということはな───


『・・・下剤、だね』


「は?」


『下剤、だね』


 下剤?下剤。下剤?下剤ってあの下剤?便秘改善するやつ。は???


 ・・・・・・


 ・・・・・


 ・・・・


 ・・・


「ふざけるなぁあああああ!!!」


『シオ~ン!?いきなり走り出したら危ないよ!?落ち着いて!落ち着こう!罠とかあるかもしれないよ!?』


「うるさい!」


 くそっ!これが奔らずにいられるわけないでしょっ!?な~にが宝箱よ!下剤が宝ってどうかしてんじゃないの!?


「うあぁぁあああああああ!!!!」


『シオンっ!せめてっ!暴走族に突っ込むのはやめて~~!!!』





 ☆☆☆☆☆


 しばらく建物も敵も、何もかもを無視して駆け回た後。


『はあっ、はあっ、はあ。シオ、シオン。やっと、やっと止まって。はあ。くれたの?』


「・・・・・」


『シオン?何かしゃべっ…て?』


「ウード」


『シオン、ここ、どこ?』


 ウードも違和感には気づいたらしい。ここが先ほどまでいた場所と異なることに。何せ、あたりに見えるのは先ほどまでの文明の証ではなく。自然を感じられる草原なのだから。


「・・・・・ウード」


『シオン?どうしたの?そんなに疲れた顔して』


 疲れた顔。まあ、そうかもしれない。よかった、絶望した顔ではないらしい。


『まさか走り回って疲れちゃった、…わけじゃないよね?』


 そんなまさか。あの程度で疲れるような私じゃない。とはいえ、精神的には参っているのだが。


『どうしたの?』


「ウード…ほんと、このダンジョンはひどい造りだな」


『え?』


 二度目だ。いや、正確には二か所目といった方が正しいだろう。


「あ~、くそ。思い出したくない記憶がよみがえってきた」


『どうしたのさシオン、いつもの君らしくないよ?』


 いつも通り、いつも通りではあるよ。ただ、付き合いが短いから知らないだけで。


「ウード!」


『はいっ!』


「よく聞け、私はお前の言う通り罠にはまったらしい。それも最大級に悪質な罠に」


 ああほんとに。許せない。即死罠も許せないが、個人的には同レベルでこの罠が嫌いだ。


「私たちは!転移罠に掛けられた!」


「それも!あの階層から一階層にまで戻されるほどの罠だ!」


『えっ?てことは・・・』


 ああそうだ。つまりはそういうことだ。


『地上までショートカットできたってこと!?』

「あの先に進むことはしばらくできないということだ!」


 はっ?この最低最悪な罠をショートカットなどと言って喜ぶなんて…


「裏切者!」


『シオン…一旦ダンジョンから離れよっか』


「うわああああああ!!」


『こらそこっ!叫んだからってダンジョンにはいかせないから!』


「うげぇ!?な、何を…?」


 なんだこの脱力感。気力が失われていく?まさか!?


『ふふん。いつまでもシオンにやられっぱなしの僕じゃないよ!』


 こっ!こいつ私から魔力を奪って!?やめろ、やめるんだ。これ以上私からダンジョン欲を奪うなぁ。


「やめろ、やめるんだ!これ以上はもうだめっ」


『シオンが地上に出るまでは抜き取り続けるからね!』




 ☆☆☆☆☆


 ダンジョン出口、その近辺にて。


「はあ、はあ、はあ。くっ、ウードなんかに私の生殺与奪の権を握られるなんて!」


『ふふ~ん!僕の怖さを思い知ったか!僕だって精霊、いつまでもシオンの支配下にいるわけじゃないのだよ!』


 くっ、ウードのくせに生意気な!でも、ウードにできることは私にもできるはずだ。今度は逆に私が奪ってやる。


「・・・・・」


『シオン?急に黙ってどうしたの?あっ!もしかして僕が怖くて喋れなくなっちゃった?大丈夫だよ、こんな事たまにしかしないか、ら!?』


「くくっ、馬鹿め!魔力を奪えるのが自分だけなんて思うなよ!私だってそのくらいできるのさ!」


『うわ~~!!これっ!きっつ!?脱力感がすごくて、ふにゃふにゃになる!?』


「ふははは、思い知ったか!お前はいつまでも私の駒なのだよ!」


 さて、今のうちに体から追い出してと。


『うへぇ~。シオンちょっと休ませてぇ』


「よ~しこのまま宿に行くぞ~!ウードは罰としてそのまま反省しとけ」


 少し周囲から奇異の眼で見られている気はするが、そんなものは今更だ。気にせずいこう。


「にしても、ウードへとへとになりすぎじゃない?私自分の最大容量の三分の一までしか回収してないよ?」


『最大容量の三分の一!?盗った分以上に奪られてるんですけど!?』


「え?」


『シオン……もともと魔力減ってたでしょ』


 そういえばそうだった。五分の一くらいあった魔力をウードに奪われて、それを三分の一になるまで回収したわけだもんね。


「にしても疲れすぎじゃない?」


『僕はまだ魔力を手にして一日目のペーペーなんですけど!?全然魔力貯まってないから!?』


 それもそっか。あれ?そういえば精霊の魔力容量ってどうなってるんだ?


『容量?僕はシオンと違って容量に限界はないよ?ため込み切れなくなったら貯めれるように体が進化するから』


「ずるっ!精霊ずるっ!」


『いやいやいや、でも貯める速度は一定だから、割合で増えてくシオンの方が早く貯まりはするよ?』


「にしたってずるいでしょ!あの失敗したら体が破裂する訓練しなくていいんだから!」


『まあまあ、結局僕はシオンの相棒だから、実質シオンの力みたいな?だからあふれそうになった魔力は僕に貯めておこう?』


 むー。なんか納得しにくいなぁ。


「まー、魔力飽和状態はもったいないからそれはいいけど」


 ずるいわー。精霊ってずるいはー。まあうまく活用するけど。いつでも限界突破できるわけじゃないし、そういう時はウードに貯めて、後で好きなように利用する。外付け魔力タンクとして利用すればいいや。


 そんなこんなやいやい話しながらもたどり着きましたのはあの因縁の爺さんのいる白光亭。


 借金返済成功となるか否かは今日が期限内であるかどうかによる。このために幸運になる薬は飲んでおいた。


 返済成功ならこのままダンジョン観光客。返済期限を過ぎていれば国家反逆者。


 さぁ、私は一体どちらになるのだろうか?

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