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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第一章:魔王誕生

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24/111

其の二十八 恐怖!!ダンジョン暴走族!

 周囲に立ち並ぶのは主に木と石を使って作られた少し古びた家々。足元を見れば、歩きやすいようにか、石畳まで引かれて道となっている。建物の建材にさえ目を瞑れば、正に前世で言う閑静な住宅街といった街並みだ。


「文明感じるね」


『そうだね〜、じゃないよ!?会談消えちゃったけどどうするの!?間に合わなくなっちゃうよ!?』


 ボス部屋の先にまだまだ先のありそうな空間があったということは先の龍は中ボスだったということ。階段を超えてから雰囲気が大きく変わったことから察するに、ボス部屋は節目になっている。

 そして、フィールドの作りこみや帰り道が消えたことから今までのはいわゆるチュートリアル的なエリアで、ここからが本番なのだろう。つまり、ここから先こそがこの世界における最高難易度、エンドコンテンツ要素だ。


「楽しくなって来た」


『はあ!?ぜんっぜん楽しくないんですけど!?このままじゃ犯罪者なんですけど!?』


「ウード、お前は一つ勘違いしている」


 いや、一つ以上かもしれない。


「私たちはすでに貴族御用達の高級宿を半壊させている。たとえ金で解決しようと世間から見れば犯罪者だ」


『それはそうだね!?でも和解しているかどうかってかなり大きな違いだと思うな!?』


 それもそう。実際、借金踏み倒す犯罪者より罪を償う犯罪者の方がいいのは確か。


「でも私たち魔王になって人類滅ぼそうとか考えてる国家反逆者だから結局五十歩百歩よ」


『そうじゃん!?犯罪者である以前に災厄だったね!?まだ何もしてないけど!』


 まだ何もしてない?


「故意じゃないけどあの宿半壊させてるし、借金無視しようとしてるしで何もしてないわけじゃないけど」


『そうだけども!もっとこう!魔王らしいことというか、明確に人類の敵です!ってことはしてないよねって話だよ!』


 ああ確かに。そういえばこの世界に来て数年。いまだに魔王らしいことしてないわ。というか魔王としての貫禄なくない?私。


 初期は亡霊に大敗を期して。リベンジマッチは亡霊に辛勝。その後は謎の城の防衛機構に敗北。初めて会った生物には何もできずに負けてお情けで見逃されて初めての人類国家ではなぜか莫大な借金を負う。


「帰ったら国滅ぼすか」


『なんで!?同いう思考…回…そうだね!?僕が魔王らしいことしてないとか言ったからだね!?ごめんね!?』


 別にウードが謝ることじゃないというか、何なら私にやるべきことを思い出させてくれてありがとうって感じなんだけど.・・・


「ウード。いいこと教えてあげる」


『シオンがそういうこと言うとき大抵ろくでもない事な気がするの僕だけかな?』


「借金ってね?誰かにお金を借りたからできるわけで、払う相手がいなければ返さなくてもいいんだよ?」


『よくないよ!?ぜんっぜんよくないよ!?借金踏み倒すために債権者殺すのは完全に悪のそれだからね!?』


「いや私悪だし」


『確かに魔王は悪だけども!魔王がそんなみみっちいことする存在でシオンはいいの!?』


「良い訳あるか!魔王はもっとちゃんと悪役してるからいいんです!こっすい悪役に魔王は務まりません!」


 まったく!なんてことを言うんだ。私が考える魔王がそんな奴だとでも思ったか。


『じゃあやめようよ!?ちゃんとお金返そうよ!?自分でもそう思ってるんだからさ!?』


「それとこれとは話が違うよ」


『何が!?』


 私は借金したからって返済相手を殺すだけのこっすい悪にはなりたくない。だから国ごと滅ぼすんだよ。返済相手と、私を犯罪者としてみてくるであろう民衆を丸ごと消すために。あとついでに通貨という存在を消し去るために。通貨がなければ借金なんて発生しないんだからもともとあった借金もなくなるよねって話。


「まあともかく!どうせ今更どうしようもないんだし今は楽しめばいいんです!何せどうすれば帰れるかもわからないんだし」


『・・・はあああ~~~、僕は最近シオンのことがわからなくなってきたよ』


「奇遇だね、私は最初からお前のことがよくわからないよ」


『なんで!?もっと僕をわかってよ!知ろうとしてよ!夫婦でしょ!』


「別に愛し合ってなった関係じゃないんで」


『にしたってもっと興味持ってよ!』


「だってお前知れば知るほど謎なんだもん」


『それはシオンが―――――』


 いやほんとに。こいつの出生とか聞いたことあるけどマージで理解できんし。そもそも思考回路が謎。何をどうしたらこんな魔王になって人類滅ぼしたいとか言ってる死に急ぎの幼女に惚れるんでしょうか?


『―――――だからシオンはもっと僕の話を聞くべきだよ!』


「あ、」


 なんだ?この気配。まだ距離はある、一旦逃げるか?いやダメだろ。ついさっき魔王としての威厳を手に入れるって決めたばっかなのに。


『また僕の話聞いてなかったでしょ!そんなだから僕のこ  』


「静かに、警戒」


 なんだ?急に数が増えた?いや、私の探知圏内に集まりだしたのか?にしたって急すぎる。


『・・・・見つかんない。今回は僕の索敵は当てにならないからそのつもりでいてね』


 ウードの索敵が機能しない?そんなに存在が薄いのか?いや、そんなはずはない。遠くからでもわかるこの威圧感、一体一体が相当強い。張りぼて?いやそれこそまさかだろう。こんなにも空気感を換えておいて急に強くなるならともかく弱くなることはないはずだ。


「数が多い。一体一体がそれなりに強そう。いつも通り私が攻撃でウードが守りで様子見する。状況次第で一時撤退する」


『了解』


 これは、気づかれてるな。こっちに迷いなく向かってきてる。早いな。でもなんだ?この違和感。速度からして走ってきてるはずなのに足音が聞こえないから?これまでと違ってあまりに統率が取れすぎているから?いや違う。そんな些細なことじゃない。もっとこう、不気味な感じだ。


「あ」


 気配から生命を感じない。だからだ。活発に動いているのに、生命力を感じない。そこにいるはずなのにいないように思えてしまう。だから不気味なんだ。もしかして、ウードがなかなか気付かないのもそれのせいか?いや考えるのはあとにしよう。今はこの敵を排除しなくては。


『シオン。感知できたよ。でも、なんか……生物には思えないっていうか……無機質。そこにいるというより、そこにあるって認識になる』


 ”いる”んじゃなくて”ある”。やっぱりそうなのか。つまり。


「来るのか。異世界有名モンスター筆頭、魔導人形(ゴーレム)が」


 さあ、どのタイプだ?私の探知はあくまで存在を感知しているだけ、細かいディティールまでは相当近くでないとわからない。ああ、早く索敵能力も上げなくては。


「来る」『来るよ』


 建物の角から見事なドリフトを見せて登場した今世初のゴーレムは、


「嘘」


『何あれぇ』


 脚がバイクのようになった、サイボーグのような見た目をしていた。


「ばかっ!?」


 見事なドライビングテクによって速度を落とすことなく曲がってきたサイボーグは、そのまま速度をさらに上げて突っ込んできた。大量のバイクが整備された道を駆け回るその様子は、まるでレースの様でもあった。


「怖っわ」


 多分ぶつかっても問題ない……とは思う。全身骨が砕けるだろうがそれだけで済みはすると思うが、それでも怖いものは怖い。だって自分よりでかいものが猛スピードで大量に突っ込んでくるんだよ?怖すぎでしょ!?


「あっ、ウード忘れてきた」


『シ”オ”ン”!な”ん”で”お”い”て”く”の”!す”ご”い”怖”か”っ”た”』


「すぅ~」


「いや、うん。ごめん」


 ダメだこれは。私自身めっちゃ怖かったからなんも言えない。いくらすり抜けるとはいえあの速度でモノがぶつかってきたら私以上に怖いよ。だって体に直撃してるんだもん。痛みも感覚もないけど。


『う”う”う”怖”か”っ”た”、怖”か”っ”た”よ”ぉ”』


「う~ん。ほら、ウード。大丈夫だから、大丈夫だからとりあえず私の中に隠れてなさい、あとはやっておくからね」


『シ”オ”ン”~』


「まったく、世話が焼ける相棒よ」


 私も迷惑かけてる自覚があるから何とも言えないんだけどね。ついさっきも助けられたばっかだし。


「ふぅ~~。さて、私たちを怖がらせた報い、受けてもらうとしますかね」


 このまま上から一方的に攻撃してもいいんだけど、それじゃあつまらないし、何より全然この恨みを晴らせない。とはいえさすがに数が多すぎて困るので減らすとしますか。


「魔力纏、形成、巨人の手」


 天へと伸ばした右手を開き、地へと叩きつける。


「死を確信して潰れろ」


 振り下ろされた巨大な手は、サイボーグ暴走族の大群を押しつぶし、その数を大きく減らした。残ったのは運よく走り抜けられたものと、初めから見逃した一部のみ。


「残りは私が直々に殴り壊してやる、光栄に思え?」


 そのあとはただの消化試合だった。突進してくるサイボーグをカウンターで粉々にし、距離をとろうとするものを後ろから追いかけ、抜かされたことを理解させてから砕く。何か妙な真似をしたものから順に容赦なくスクラップにしていくだけの単純作業。


 本気でやれば最初の一撃で終わっていたのだけれど、ついつい怒りを発散してしまった。でも恐怖で絶望させてから殺すのは魔王らしくてよかったかなとは思います。


「ウード、終わったよ。もう出てきて大丈夫」


『・・・・・』


「うーど?」


『もうちょっと、もう少しいさせて』


「そう、わかった」


 珍しい。ここまで弱ってるのは初めて見たかもしれない。といっても期間自体が短いのだけど。でも、もう少し優しくした方がいいのかもしれない。初対面はともかく、実際ウードには助けられているのだ。相棒として、仮にも夫婦として、私についてきてくれる仲間を大事にしていくべきだろう。


 デートの約束も果たしていないし、ここらで恩を返しておくのも悪くはないだろう。ウード自身が望んだとはいえ、いろいろ迷惑をかけているのだ。たまには、優しくしてあげようじゃないか。


 そういうわけで、ひとまずは私一人で次の階層への階段を探すとしよう。戻る階段は…見つけても無視の方向で。


 私の体を貸しているのだ。その間は私に従ってもらうとしよう。何せ追い出すも受け入れるもすべては私の勝手なのでね。ふふっ、これが与奪の権を持つ者の余裕か。

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