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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第一章:魔王誕生

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其の二十七 報酬と迷走

「んあ」


 休日明けの月曜日の朝のような気怠さを感じながら目を開くとそこに広がるのは知らない天井、ではなく何もない空間。何もないのは空と同じ、しかしその先に青空は見えない。

 どこまでも終わりがないように感じられるのに閉塞感を覚えるのは、その終わりを私が知っているからか、はたまたその先が闇に包まれているからか。


「ねえウード、天井がないように見える室内ってこんなに不気味なんだね」


『んえ?あっ!シオン起きたんだ!』


 素っ頓狂な声の聞こえたほうへ顔を向けると自分の体で謎の宝珠を大事そうに抱える緑の玉があった。


 緑光の玉が星月夜のように美しい宝珠を持っている様は、かつての戦いを思い出させる。


「・・・何してんの?」


『え?何って?』


 ・・・・・わかってほしいと思う私は欲張りなのだろうか。


「・・・ちなみにそれ何?」


『それってこれ?』


「そう、その珠」


 ・・・・・む~なんだろうかこの気持ちは。言わなきゃ伝わらないのはそうなんだけど、言わなくても気付いてほしいというか、気づいてもらえなくて寂しいやらもどかしいやら。


『ふふ~ん!これはねえ~!なんと龍玉です!!』


 龍玉?なにそれ、七つ集めると願いが叶う珠か何か?


『ピンと来てないようだから僕が教えてあげましょう!』


 殴りたい。けど怠い。大したことなかったら後で殴る。


『龍玉、それはあらゆる願いをかなえてくれる珠にして、龍の力の結晶。龍玉を生み出した龍は力を失い、力のない龍にとっては命と引換えに作る、最初で最後、たった一つの存在証明』


 力のない龍、命と引換え、ウードが持つ謎の二つの小瓶。


『なんて、難しいこと言ったけど簡単に言えばこれがあればあの程度の借金なんてチャラにできるってことだよ』


「その龍玉、あの龍も私達を認めてくれたってことなのかね」


『えっ?』


 思い出すのは気絶間際の妙な視線、龍があれだけ潰されてもなお生きていたならば納得できる。そして、ゲーム的に考えるとダンジョンにおけるボス撃破は大きな意味を持つ。それは報酬だ。


 いままで雑魚的をいくら倒してもドロップはなく、死体がそのまま残っていたことから考えると、今回の死体分の報酬は何か特殊な要因からレアドロップとして置き換わった、というところだろう。薬のほうは通常ドロップだったりするのかな?


「あの龍ってさ、今の私程度が勝てる相手だったわけじゃん?龍玉が弱い龍なら命と引き換えっていうならさ、あの龍は私たちを命を渡すに足る存在だと思ったってことでしょ?」


『うん、僕らが彼に気に入られたのはそうなんだけどさ、一つ訂正させて』


 彼?訂正って何?


『あの龍、種族全体で見たら確かに強くはないよ?でもね?弱いわけでもないから!』


「嘘だ!?私の思う龍はもっと強いもん!!」


『シオンの想像するレベルが高すぎるだけだよ!?』


 なっ!?そっ、そんなわけあるもんか!龍って言ったらどの作品でも最強種というか、ラスボスはれる位には強い存在、いまだ国すら亡ぼせないような私が勝てた時点でそれは弱い部類でしょ!?


「もしかして、龍ってだいぶピンキリだったりする?」


『ピンキリって…まあ違くはないけど・・・』


 よかった、強い龍はちゃんと強いらしい。安心した。でも私ももっと強くならないとだめだな、この程度で苦戦してるようじゃまだ魔王は名乗れない。せめて第二形態位獲得しないと。


『一応言っとくけど、キリでも国が本気で討伐隊組むくらいには強いからね?』


「・・・嘘?そんな強かった?」


『シオン、単純戦闘力だけが脅威度ってわけじゃないからね?』


 脅威度?国の優先討伐順位的な?


「・・・・そう考えるとあいつやばいわ」


『でしょ?もし国内で彼が嵐でも起こそうものならそれだけで国滅びかねないからね?それにあの酸なんてもっとやばいし、そもそもあの巨体があの存在感で近づいてきただけで普通の人は恐怖して死にかねないからね』


 う~~んこの。考え方もっと変えてかないとだめだな。結局ゲームと現実は違うのだ。直接的な被害だけがすべてじゃなくて、間接的な被害のほうが恐ろしいというわけだ。


「そう考えたら私ってまだまだ脅威度低いよね」


『えっ?』


「えっ?って何よ、確かに力はそれなりにあるかもしれないけど、無暗に暴れないし、ちょっとかかわる分には一般人だし」


 この前の街での行いを思い返すとよくわかる。マジで魔王目指してるとは思えないほどの常識さ持ち合わせてたからね。恋バナしたり痴話げんかしてたやつらを仲裁したり。


『そう考えるとそうだけど……実際は魔王目指してる国家反逆者だからね・・・・』


「・・・・ねえ、ウード。そういえば私たち借金してなかったっけ?」


『・・・・シオン』


「何?」


『人の話はちゃんと聞こうね?』


 ・・・なんか言われてたっけ……


「???」


『僕っ!さっき!いった!龍玉!借金帳消しにできるって!』


 ああ、そういえばそんなこと言われたような?いや言われた記憶ないわ。


「ウード、そういう話は人が聞いてる時に言わないとだめなんだよ?」


『ひどい責任転嫁!?やめてよ!僕悪くないもん!』


「はいはい」


『む~!!僕今回すっごい頑張ったんですけど!!』


「そだね、頑張ったね」


 さて、ウードが騒がしいが気にしないでいいだろう。あいつはたたけば叩くほど面白くなる。いわゆる〇〇虐助かるってやつだ。


 少し会話をしていつもの調子を取り戻したわけで、早いとこ地上に戻りたいのだが。


「ウード、このダンジョンって都合よく地上への帰還ゲートとかある?」


『――――もっと褒めてくれていいと思うんだけど……ないよ、そんな便利なものはありません!』


「だよねぇ。ん~と、どうする?」


『どうするって?』


「このまま進むか戻るか」


『シオン。戻るに決まってるでしょ!?せっかく返済のめどが立ったのに時間切れになっちゃうよ!?』


 それはそう。改めて考えると一週間以内に35億って意味わかんないよね。


「じゃあ帰るかぁ。でもこれで急いで帰って間に合わなかったらバカみたいだよね」


『今から進んで間に合わないほうがバカみたいだよ』


 それはそう。でもどっちにしろバカみたいなら自分の好きなことしてもいいのでは?


『シオン。何考えてるかわかんないけど、ろくでもないこと考えてるでしょ』


「いやぁ?ただその小瓶は何なのかなって考えてただけですけどぉ?」


『・・・・まあそういうことにしておくよ、ちなみにこの小瓶は二つとも効果は別だよ』


 危ない危ない、変なところで勘が鋭いんだからこいつは。


「あれ?今の口ぶり、もしかして効果わかってるの?」


『そうだよ~?わかってるよ~?』


 ほめるよね、ほめられて当然だよね。的なニュアンスを含んだこの言い方。素直にほめるのは癪だな。


「前はわからないって言ってたのに、役に立つようになったんだ?」


『っておい!なんてことを言うんだシオンは!もっと褒めてよ!僕のことを認めてよ!』


 まったく、面倒くさい。


「ウードには日ごろから助けられてます。あなたがいないと生きていけないくらい生活の一部です」


『ムフフ~!そう、それでいいんです!』


「うげぇー、やな感じぃ」


『もう!そうやって僕をいじめて楽しんで……いい加減にしないと僕も怒るんだからね!』


 おっと、そろそろダメみたいだ。しばらく優しくしておこう。からかって楽しむのもほどほどにしておかなくては。


「どうどう、落ち着いて。ちゃんと頼りにしてるからさ。それで、その薬の効果はなんなの?」


『えっとね、運が良くなる薬と………なにこれ』


「どした?」


 運が良くなるのは実感し辛いけどあって損はない。問題はもう一つの方だ。


『いやぁ、うん。えっと……はい』


「もしかして大した事ない?それともわからない?」


『いや……わかる……けど…、わかんない』


「どゆこと?」


 理解るけどわからない。哲学か何か?


「取り敢えず理解ることだけ教えて?もしかしたら私は理解るかもだし」


『いやぁ、うん。しゃあ、言うね?ありのままわかったことを話すから、多分意味分かんないと思うけど、そういうものだと思ってね』


 なるほど?わかるけどわからないっていうのはそういうことか。効果はわかるけど、その効果がもたらすことの意味がわからない。みたいな。


「了解」


『うん。この薬は……手からバッタを出せるようになる薬……だって』


「ぇ?」


『いや、そうだよね。意味分かんないよね、僕もわかんないもん』


 聞き間違いか?今、私の耳が正しければウードは確かに“手からバッタを出せるようになる薬”、そう言った。


「は?」


 えっ?いやいやいや、え?なにそれ?手からバッタ?どういうこと?この世界にバッタがいるかはこの際どうでもいい。え?手からバッタ出せるようになるの?なんで?






『シオ〜ン、シオ〜ン?お~い、そろそろ戻ってきて〜、理解できないのは理解るけど、そろそろ動き出さないとボスが復活しちゃうかもよ?』


「あっ、うん。じゃっ、行こっか………手からバッタ?」


 いやぁ、ほんとに理解できない。これはもはや哲学なのでは?何がどうして手からバッタを足せるようになる薬が出てくるの?理解できないんだけど。


『あれ?こっち行っていいんだっけ?ん〜?』


 理解できないことを考えながら早足で歩いていると、上へ上がる階段の目の前にたどり着いた。転ばないように気をつけながらも、やはり上の空で上っていく。


「バッタ……」


『あっ、シオン!シオン!?ちょっと!そっち違う!』


 騒ぐウードの声で現実に引き戻された。危なかった。このままだと一生バッタに呪われるところだった。


『この階段は、上りだよ!!』


「上り?」


 だから?地上目指してるんだから上りでしょ?


『シオン!?ちょっと!とまって!止まって!?』


 もう、うるさいなぁ!もう階段も終わりなんだからついてからでいいでしょ。こっちは立ち止まったら理解できないバッタに呪われるんです!


『シオン!シオ、ン……もう!』


 階段を上りきり立ち止まるとウードが見るからに腹を立ててますポーズをしてこちらを見てきた。一体何だというのだろうか?


『シオン、君はもう少し僕の話を聞くようにしないとダメだと思う、いっつも僕の話を聞き流して……いつか痛い目見ても知らないよ?というか気づいてないだけで現在進行系で痛い目見てるからね!?』


 ???


「何言ってるの?聞き流して……はいるけど、別に今痛い目は見てないよ?」


『む〜!!落ち着いて辺りを見てみなよ!いつまでもバッタに囚われてないで!あれはそういうものだと思うしかないんです!』


 はぁ〜〜〜………そうするかぁ。これ以上考えたら頭おかしくなるし、どうせ答えなんてないし。

 そういうわけで、大人しく言われた通り周りを見てみたのだが……


「それで、あたりを見てみろって、どういう……こ…、と……」


 今まで、各階層の地形はどこまでも続きそうな草原など、自然界に存在しそうな地形だった。しかし、今あたりに広がる光景は、それらとはあまりにかけ離れていた。


「………何処ここ?」


 周囲についさっき登ってきた階段はなく。石や木で作られた建造物がひしめき、都市のような様相を呈していた。


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