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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第一章:魔王誕生

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其の二十五 初戦終結、共に在る者

「なっ!?」


 なんでこっちを見ている。


  なぜおまえの目が、顔がこちらを向いている!?


 お前は、拳から逃げようと身を翻していた。押しつぶされ、身動きの取れない状況でこちらに顔を向けられるはずがない!!


  驚きの中、何が起こったのかと思考する。


 そして理解した。


 見ると、龍のその身は骨格を無視し、捻じれていた。


 先ほどの異音は、守りを捨て、自ら骨をねじ切ってまでこちらに向き直ろうとした結果だったのだ。


 まずいまずいまずい!!


 背中側から狙って、奴にとって不利な体勢であれだったんだぞ!?こちらを向かれたら……


『シオン!!集中!!』


 ぁ!!


「……ああもう!!さっきので死んどけや!!」


 もう過ぎたことはどうしようもない、すでに取り返しつかないとこまで来てるんだ。使えるもんは全部使って、全力出し尽くすしかない!!


「ウード!!全力絞り出せ!!」


  『もちろん!!シオンも出し惜しみしないでよね!!』


「当然!!」


 とはいっても、これ以上どうすればいいというのか。先ほどまで優勢だった戦況は再び拮抗しかけている。


 すでに全力は出しているうえ、そろそろ、というかすでに魔力の喪失感がえげつないことになっている。


  アドレナリンのおかげか、まだましだが、少しでも気を抜いたらメンタルが死にそうだ。


 そしてメンタルが死ねば外に放出した魔力が形を保てずに霧散してしまうだろう。



  ツー



 ぇ??



 ッ!?言ってるそばから鼻血が出てきてる!?


 まずい、すでに魔力が枯渇したのか!?


 時間がない。


  出血多量はまだいい、無視するだけだ。だが幻を見始めたらかなりまずい。


 そして何より、その先にある五感の喪失。 ああやばいやばいどうdっすづあしdjshfsだfj


 ん????


 ああ、負け迦。


『シオンッ!!しっかりして!!』


  しっかり???もう無理だ。もう負け確定でしょ?


『落ち着いて!!やるべきことを思い出せ!!』


 落ち着いてる。なんかもう、達観してる。思い出すってなにをさ?もう死ぬだけでしょ?


『ッ〜〜〜!!!!まだ!!死んでない!!』


  でももう死ぬよ?辛い思いしてまで足掻かなくていいじゃん。


『あ〜〜もう!!?いいから!さっさと目を醒ませ!!』


  何をそんなに真剣に頑張ってんの?そこまでする理由、有る?


『ッ〜!!いい加減に、して!!約束っ!!した!!』


 何の約束?もう死ぬのに、そうまでして守らなきゃいけないの?


  『まだ終わってない!!君が言ったことだろ!?死んでも死なない、絶対、諦めないって!!たとえ死にかけても!諦めきれないんでしょ!!その夢が!憧れが!!!』


 夢?憧れ?そんなの叶わないじゃん。現実見たらわかるでしょ?やめなよ、いつまでも子どものままでいるの、恥ずかしくない?


『恥ずかしいわけ、ないだろうが!!』


『僕は、何が何でも自分を貫き通す君に憧れたんだ!自分にないものを持つ君に、知らないことを教えてくれる君に、なんの意味も持たなかった世界に意味を持たせてくれた君に!初めて!自分が何者かわかった気がしたんだ!だから君を好きになったんだ!』


 自分を貫く?もう良いよ、そんなの。辛い思いしてまでやることじゃない。



  “候廣君ってなんでそんなに頑張れるの?”



 ぇ?


 どこからか、声が聞こえた。まるで文字化けしたように思い出せない。けど、どこか懐かしくて、聞くと安心する声。


 でも何も思い出せない。何か大事な人だったような気はするのに。



  『君が諦めても僕は諦めない!生きる意味を与えてくれた君は、僕の憧れで、愛する人で、相棒だから!!!』



 “彼らは憧れだから。僕のせいで、彼らの評価を下げたくないんだ。どれだけ批判されてても、僕にとって推しなのは変わらないけどさ。やっぱり、推しの評価は高いほうが嬉しいじゃん?”



 今度は聞き覚えのある声。でも、記憶にはない。



  ”だから、僕は諦めない。彼らの凄さを知ってもらいたいし。何より、僕自身が彼らのようにありたくて、その気持ちを裏切りたくないんだ”



 彼らのように、裏切り…?



『僕はっ!!こんなことで諦めるような奴じゃないって、その程度の存在じゃないって信じてるから!』


  “そっか”  ”…じゃあ、決めた。私、候廣のこと手伝うよ!”



 信じる?なんで、そんなこと言うの?こんな私に。



  ”手伝う?なんで?……別にいいけど”


『君が折れても、僕が折れない、互いに支え合って生きるのが、相棒なんだ!!』


 ”もし君が辛くなったら言ってね。私が甘やかしてあげる。それが恋人でしょ?”



 相棒。恋人。約束。信頼。私は何で生きてるんだっけ?



  ”でもね、信じてるからね”   『だから、約束は果たすよ』  


 ”君は絶対” 『僕は絶対』



  ”魔王になるって”  『君を魔王にする』



 ぁ!!!!


 私の生きる意味。そんなもの。


「私は、魔王だ!!」


  魔王になる以外に存在しない。


『シオン!!ようやく目を醒ましたんだね!!』


「・・・・ウード。ありがとう」


『きゅ~~~~!!!?ありがとう、ありがとうって!!!!』


  ははっ、相変わらずだけど。久しぶりだな。この感じ。


「ウード!真っ向から勝ちに行く!もうしばらく私の命を預けるからな!」


  『うん!任せてよ!何せ僕は君の相棒なんだからね!』


  ははっ!やっぱりこういう関係も悪くない。


 けど、余韻に浸ってる暇もない。早くやつを斃さなければならないのだ。


  考えろ、何ができる?あるものすべて使え。 さっき私は確かに精神を壊した。そして、魔力の制御もやめたはずだ。何せ生きることを諦めたんだからな。


  でも実際は違う。魔力はいまだに制御され、拳の形を保っている。しかし、周囲に吹いていた追い風が弱まっていることから、おそらく私の代わりにウードが制御していたのだろう。


 追い風が弱まるのは厳しいが下手に制御を戻して危険を冒す必要はない。このまま制御は任せよう。


  では、その間に私は何ができる?決まってる。役割交換だ。


 私が妖力で風を起こす。そして余裕があれば、生命力を削ってでも魔力量を増やす。


 もしかしたらウードが制御しきれなくなるかもしれないが、それはそれでいい。最低限指向性を向けて龍と相打ち覚悟の自爆といこう。


  というわけで。


 ウードが何て言ってたか忘れたが、何となくでもなんとかなるだろう。


 前世から魔王目指してたんだ。中二の素養はバッチリだ。



 〈我、魔王なり〉

 〈全てを否定し、最たる自由を持つものなり〉



 〈我、龍なり〉

 〈天を操る水神にして、願いをかなえる龍神なり〉



 〈斯の難敵は我が魔王道を阻む者〉

 〈強靭な肉体と凶悪な酸を持ち、その身と嵐を以って敵を滅する者なり〉



  〈我、斯の龍を斃し、其れを以って我が〉



 〈否、我らが伝説の幕開けとせん〉



  〈世界よ、我らに従い、其の門出を祝福せよ〉


 」


  さぁ、どうだ?世界はこれをどう処理する?ハハッ!


  『ぇ!?シオン!?』


  「ハハッ!ウード!よそ見しないで集中しろ!」


  『いやっ、それはそうだけども!これは流石におかしいって!?』


 いいねいいねぇ!最高だよ本当に!


「気にするなウード!それだけ世界が私たちを認めてるってことだ!」


  ああ、本当に、負けられないわ。


 ここまで世界に祝福されといて、あの龍に負けるわけにはいかないなぁ?


 なにせ、



  龍の嵐は今、その全ての制御権が私にあるんだから。



「さあ!押し込むぞウード!このままフィナーレといこう!」


 龍の身を守る嵐は奪い追い風に変えた。硬くてたまらなかった鱗も溶かした。その身からは血を吹き出し、その骨は異音を鳴らしている。


 いくら奴が龍であっても、この状況を逆転する術はない!


『「ぅうぉおおおおおおお!!!」』


  ミシミシと異音が鳴り、血を吹き出して龍が潰れていく。私の体からも血が止まらないがやつが死ぬ方が早い!


『「いっっっっけぇええええええ!!!」』


  あらん限りの力を持って、叫び声とともに進めた拳は、遂に。けたたましい音と共に地へと叩きつけられた。


  ハァ、ハァ、ハァ。勝った、のか?確認、しなきゃ、ダメ、なのに。


  「ハハハハハ……もう、動けない」


『僕ももう無理!!疲れた!!僕絶対仕事しすぎだよ!!』


 ああ、疲れた。本当に疲れた。


  制御をやめたことで魔力で形作られた拳が霧散していき、嵐も穏やかになっていく様子がわかる。


 支えを失い宙から墜落しながら、龍の方へ顔を向けると、押しつぶされ、ぺしゃんこになった龍の姿が見えた。


  「痛っ」


 頭から地面に墜落して、頭が痛むような気がするが、元から全身痛いせいであまり気にならない。 安堵感から、全身が脱力していくのがわかる。


  『「はっ、はははは、はは」』


  本当はもっと喜びたいのだが、生憎とそんな元気はすでになく、乾いた笑いしか出せない。


 疲労と激痛で薄れゆく意識の中、何かが何かに凝視されているような気配を覚えながら、何もできずに眠りについた。


  ☆☆☆☆☆


『はっ、ははは。ほんと。つっっっかれたぁ〜〜〜!!』


  シオンって僕のこと働かせ過ぎだよ!本当!


 戦闘の途中で何度も棒立ちになったし、別人になったんじゃないかってくらい精神が変化して勝つのを諦めるし!最後なんてほとんど僕が戦ってたようなもんだよ!


『絶対ご褒美もらうんだから!』


 シオンがなんと言おうと、絶対の絶対、絶対に貰うんだから!


 でも、ご褒美って何がいいかな?精霊と人じゃあできることも限られるからなぁ………


 デートするのは確定として、どんなデートにしよう?


 綺麗な場所とか行って、落ち着けるところもいいかなぁ。


 でも、蛍祭りは絶対一緒に見たいし、美味しいものも食べたい。


 うーん、人ってデートで他になにしてたかな?


 一緒に遊びに行って、手をつないで、抱きしめたり、食べさせ合いっこしたり、あとは告白とか、キスしちゃったり。


  あ〜、この姿じゃできること全然ないや。


 うーん……


『しばらくのんびりしたいなぁ』


  あっ。そうだよね。決めた。のんびりしよう。


 目的とか考えないで休暇を取ろう。


  最近忙しすぎなんだよね。


 消えようと思ってたらシオンにあって、摩訶不思議な異世界のこととか教えられて。魔王の手伝いの前に報酬貰おうと思ったら何故か借金してこんなとこまで来て死にかけて。



 ・・・あれ?借金?



『あっ!?そうじゃん!借金じゃん!』


  ……まあいっか。シオンが起きたら考えよう。なんとかなるでしょ、きっと。


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