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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第一章:魔王誕生

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其の二十三 初共闘、攻める龍、守る精霊

 見てわかる強敵を前に、確かな高揚感と共に嵐の中を駆け抜ける。黒く染められた、巨大蛇のような長大な体躯にそこから生える四足、頭にある角や長い髭。


 咆哮を聞いて懐かしさを感じたのは気のせいではなかった。奴は私と同族。龍だ。


 私は精神こそ元人間だが肉体は初めから龍だ。だからこそ本能的に郷愁を覚えたのだろう。

 まあ同族だから、懐かしいからと言ってやることは変わらないのだが。


「私たちの伝説の踏み台にしてやる、光栄に思え?」


 その言葉の意味が分かったのか、龍が咆哮をあげたかと思えば嵐の勢いが強まっていく。やはり、こいつの能力は地球で語られているものと同じなのだろう。


「龍、それは水の神であり龍神。その体表の色によってつかさどる方向や利益が異なる」


 今回はモンスターとして出てきているから善である龍神としての利益はそこまで考えなくてもいいだろう。となれば考えるべきは龍という種族そのものの特性と水神としての伝説。


「ウード、聞いてたね?」


『えっと、龍神の力はよくわからないけど、水神っていうくらいだから水に関連する力を持つと思えばいいんだね?』


「うん、でも水というよりは天候を操るって考えたほうがいいかも」


『了解、じゃあ僕がシオンを守るから、シオンが攻撃担当ね』


「任せな」


 方針が決まったところで、全身に魔力を流し強化を施す。ここから先は本気だ。


「にしても、初のまともな戦闘が神殺しとは、なかなかいい展開だなあ」


『ふふ、仮にも神と評される敵を前にそんなことが言えるのは、流石だねえ』


「恐れる必要がないからね。安心しな、私は強い」


『心配はしてないよ、ただ、初めての共同作業、できれば長く楽しみたいな』


「っははは!人のこと言えないじゃん」


 ああ、この感じ。強敵を前に仲間と軽口を言い合い、真剣でありながらも気楽に挑む。俺はソロだったけど、意外と楽しいもんだな。


『準備できた、守りは任せて』


 ああ。これが仲間、相棒か。テンション上がってるけど、落ち着いてて、今なら120%が出せそうだ。


『シオン?』


「任せろ、今の私は絶好調だ」


 ウードが私の服の中に入っていく。私自身ではなく、服に憑依したのだ。


『風除けの加護』


 ウードがそう唱えると、あたりに吹き荒れていた風が落ち着いていく。いや、それていく。それはまるで、台風の目の中にいるかのようだった。


 嵐を隠れ蓑に、龍の巨体目掛けて全力で駆け出し、その腹に向けて全力の蹴りを放つ。山をも砕くその一撃は、龍の鱗を砕き、その肉体から血を噴出させた。


 龍が咆哮をあげる。嵐が強まる。しかし、私の周りには依然として落ち着いている。宙を蹴り、再び傷口に向けて蹴りを放つが、それは巨体をよじらせることで避けられ、別の鱗を罅割らせるだけに終わる。


 蹴りの反動で宙を舞う私に向けて龍がこちらに向けて大口をあげていた。丸のみにするには距離が遠い。龍、開口、咆哮、遠距離。あっ、


 私がそれに気づくと同時、口元から何かが吐き出され、毒々しい色をした塊がまっすぐに向かってくる。強烈な嵐をものともせずに向かってくるそれを宙を蹴ることで回避する。


 一度地面に着地し、地面を聢と踏みしめて駆け出し、その顔面を殴ろうとするが、丸呑みにしようとされたため回避する。


 宙を蹴り後ろに回り後頭部を殴ろうとするが、放った拳が風によって押し戻され、罅を入れるだけに終わる。


 一度距離を取ろうとしたその時、遠くから何かが破裂する音が聞こえた。龍の背に乗りそちらを見ると、先ほどの毒々しい塊が壁にぶつかり、液体を飛び散らせている。


 もう少し観察しようとするも、龍が身をよじり、その尾で叩きつぶそうとしてきたために離れる。


 お互いに様子を見あい、膠着状態になる。さて、仕切り直しだ。


「ウード、わかったことは?」


『さっきの塊は毒というより、酸に近いみたい。着弾した壁が溶けてる。あと本体に干渉できそうにないね。でも、身を守ってる風壁なら、一部だけ制御を奪って穴をあけられそう』


「なるほど」


 予想通り妖力じゃ直接干渉できそうにないのはいい。ただ酸持ちの龍か。天候と酸。酸性雨が出されたら……やばいな。ウードがそっちの守りにかかりきりになる。


 ただでさえ、火力が足りてない。最初につけた傷もすでにふさがりかけてるし、持久戦は不利なんてもんじゃないな。となれば一撃にすべてをかけるか。


 いや、どうやって?私にはまだ必殺技なんてない、ただ身体強化しただけで勝てるのか?


 斃し方を思考していると、龍が動きを見せる。天に向けて咆哮を放ったのだ。しかし少し経つが、何も起こらない。


 あまり気にしすぎても仕方ないので、再び突撃しようと近づいたその時、空から雷が落ちる。不意打ちにも等しいそれに対し、ウードも反応できずに直撃する。


『シオン!』


「大丈夫、慣れてる」


 雷か。もしあの時強行突破しようとしてなかったらやばかったかも。さすがにまだ光速は越えられない。


 連続して落とされる雷を受けながら、龍の胴体を殴る。しかし、そこには罅一つ入っていなかった。


 ・・・ダメージはない。けど雷が当たったらどうしたって硬直は避けられない。そのせいでうまく力が伝わらず威力が落ちているのか。


 ただでさえ足りてない攻撃力がまた下がるのはキツイな。それにこの硬直はかなりの隙になる。


 龍の背に乗り、しっぽの攻撃を誘発させ自傷ダメを狙いつつ思考する。


 ダメージはない。でも無視するには付属効果が厄介すぎる。けどこれは人体のつくり的にどうしようもない……?


「人体の構造?」


 人体には常に微弱な電気が流れている。それは体を動かすために脳から発される指令を通達するためだ。だからこそ、外から電気が流されることでその流れが狂いスタンするわけだ。


「ああ、そっか」


 ダメージはともかくとして、体の動かし方を変えればスタンしなくなるな。


「ウード、少し任せる」


 そういって、龍の背に仰向けに倒れ、体の内に意識を向ける。


『うぇえ!!いや、任せるって!?さすがにここまで無防備になられると困るっていうか、ああもう聞いてないし!!むー!絶対後でご褒美もらうからね!!』


 今私の体に流れているのは主に三つ。微細な電気信号と血液、そして魔力だ。


 体が硬直するのは体を動かすのに電気信号を使用しているからだ。なら、そんなもの使わなければいい。


 経験から推測するに、私は身体強化によって身体能力を上げると同時に本来超えることのできない反射神経の限界も超えている。つまり。


 身体強化中、私は自分の体を電気信号以外の何かで動かせている。だとすればその何かとは、十中八九魔力のことだろう。


 ならば、電気信号と魔力、双方を並立して使うのではなく、魔力単体に絞って体を動かせば雷の影響はなくなる。

 もしかしたらその分燃費も悪くなるかもしれないがどうせ持久戦は負けなんだ、気にすることはない。


 ………まだ足りない。例え全力が出せたとしても奴を殺す火力は手に入らない。どうすれば火力をあげられる?すでに魔力は使っている。妖力を使うか?いや、それでもまだ足りない。


 奴を倒すには一撃で体の半分近く、最低でも頭部を消し飛ばさなくちゃいけないだろう。それはあのナルシストとの戦いで私自身で証明している。


 一瞬でも構わない、一撃でやつを仕留められればいいのだから。自爆覚悟の攻撃でもいい、リスクを負わなければリターンは得られないのだから。


 今の最大火力を超える、瞬間火力が必要だ。思い出せ、経験から答えを導き出せ、そこにヒントはあるはずだ。



『あった!天空の島はあったんだ!』

『(落ちたら流石に)死ぬな』

『ああ!私は今地面の上に立っている!大地とはとてもいいものだ!両足・・・・・』



 重力加速度!自分だけの力じゃ足りないなら、落下によって生じるエネルギーでかさ増しすればいい!


 落ち着け、まずは一つづつこなしていこう。まずは神経と魔力の接続。完了。


 妖力による身体強化。自身のありたい未来を思い浮かべる。成功。


 あとは、空歩で天井ギリギリまで登って落ちるだけ。回避されないための対策も思いついた。


『ちょっ!?ちょっともう無理!?限界!!』


 あっ、忘れてた。防御任せてたん……


「ちょおっ!?」


 あっぶなあ!


「ウード!無理なら無理でもっと早く言って!?目を開けた瞬間視界がしっぽで埋め尽くされたんですけど!?」


『いやいやいやいや!!ゆってたよ!!最初から!!』


 そういやそんなこと言われた記憶がなくもない。いやでもそんなこと言いつつしばらく持ちこたえてたし……


「………目途は付いたから許す」


『ゆる、許す!?む~!!!釈然としない、しないけど!まあよし!!それで?僕は何をすればいいの?』


「変わらず防御で、あと・・・・」


 作戦の概要を説明していく。話しながら整理して改めて思ったけど、大分博打だよほんとに。


『はいはい。終わり?』


「以上、早速やるよ」


『ま、待ってね?ちょっとでいいから』


「……ちょっとだけだよ?」


 さっきから攻撃が激しくなってる。こっちも身体能力あげたおかげで何とか耐えてるけど、そろそろまづいな。


 雷と嵐は無視できてもしっぽ攻撃は質量えげつないし、嚙みつきはよける以外できることないし。そして何より時々襲ってくる酸性の弾。あれがやばい。触れたら確死の攻撃を偏差打ちしてくるの緊張感がえげつない。


「ウード、まだ?」


『ああ。うん、ダイジョブ。考えたんだけどさ、一つだけ言わせて?』


 何?何かだめだったか?この作戦がだめならそろそろどうしようもなくなるんだけど。一応一つ切り札……いや、鬼札が残ってはいるが。


『この作戦、僕に負荷かかりすぎじゃない?』


「・・・・・」





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