其の二十一 債務者シオン、ダンジョン労働
太陽の国、王都、その中心に塔のようにそびえ立つダンジョン。名をアーゲンティア。関する大罪は【傲慢】。
この世界には自然発生する通常ダンジョンと、古くから常にあり続けた大罪ダンジョンが存在する。難易度は圧倒的に大罪ダンジョンの方が高く、今まで一つとして攻略されたことはない。
そんな大罪ダンジョンの一つ、傲慢ダンジョンの中に私はいた。
「ウード!なんでこんな面白いもん隠してた!?」
『忘れてた!いっつも祭りだけ見て帰ってたから!』
「そうか!まあいい!」
そんな会話を、近寄ってくるモンスターどもを蹴散らしながら行う。
ここはまだまだ序盤も序盤、正確には忘れたが、せいぜい十数階層分しか上がってきていない。だからこんなにも雑に相手しても問題はなく対処できている。
因みにこの階層は草原フィールドで戦っている敵はただただ数の多い狼。
「ウード!そういやダンジョンでの金稼ぎってどうやんの!」
『シオンが考えてる通りで合ってるはず!』
なるほどつまりモンストー共の死骸とたまに手に入る宝箱の中身ってわけだ。んで、そうならこんなとこにいる必要はやはりない。
「コイツラはさっさと殺してどんどん階層上がるぞ!どうせ、大した金にもならんだろ!」
☆☆☆☆☆
ということでやってきました。上層。なんてだろ、上層って聞くと簡単なとこってイメージになるよね。
まっ、このダンジョンでは階層上がれば上がるほど難易度上がるんですけど。
「さてさてさて、ウードこの階層は何階だ?」
『わっかんない!』
そうかそうか。役に立たんなこいつ。こいつと一緒になってからデメリットないけどメリットもない気がする。
『なんでだろー、シオンに風評被害受けてる気がするー』
棒読みなあたりちゃんと自分の今の価値が分かっていて偉いと思います。
「っと、そろそろ遊びは終わりにするぞ」
『オーケー、シオン今回の敵はどっちがやる?』
ふむ。両腕が羽になり、足には鉤爪、トカゲのような平たい顔に鱗のような肌。見た感じ飛竜か。それが3匹と。
「めんどくさいからウードやって」
『イエッサー!』
返事はいいけど私一応女だから、サーじゃなくてマムかもしれない。まぁ伝わればなんでもいいか。
『ふふふふふ。久しぶりの出番!ここらでシオンにいいとこ見せるんだから!』
「聞こえてんぞー」
『はっ!しまった!』
あいつ、やっぱアホなんだなぁー。強いけど。
こちらに猛スピードで突っ込んできた飛竜、いわゆるワイバーンの一体が空中で何かにぶつかったようにひしゃげていく。
「グロい」
『ハハハッ!そんなものか!もっと強くなってて直してこーい!』
仲間が謎の死を遂げたことで立ち止まってしまった一体が唐突に火に巻かれて死んでいく。
気にせずに突進してきた一体も体が氷漬けになり浮力を失って地面を落ち、衝撃で砕け死ぬ。
マージで原理わかんねぇ。これ対処法とかあるのか?あっ、戻ってきた。
『シオン〜、褒めて褒めて〜!』
「はいはいお疲れ様」
『むふ〜』
雑に相手しても喜ぶあたり、こいつ実は扱いやすいのか?撫でてやれば情報吐くか?やんなくても吐きそうだな。手に魔力纏わせる修行になるし一応やるけど。
「なぁウード」
『ん〜?』
「さっきの攻撃とかどうやってんの?」
………やばい。質問が大雑把すぎる。最近コミュ力の無さを実感して辛い。
『んーとね〜。精霊って、世界の一部みたいなもんだから、長く生きると世界への干渉力?みたいなのが手に入るんだよね〜』
世界への干渉力。つまりこいつは世界に干渉することで間接的に攻撃してるわけだ。
「対処法なくね〜」
『うーん、一応干渉しすぎるとガス欠起こすからそれまでのがいいかなぁ。と言っても長く生きれば生きるほどガス欠起こしにくくなるんだけどね!』
精霊相手は持久戦ってわけね。
「ちなみにウードはさっきのでどれくらい消耗した?」
『あー、全く消耗してないね。いや、正しくは消耗したけど回復したっていうの正しいかな?』
はっ?
「嘘、でしょ?アレってそんな燃費いいの?」
『まぁ、生物に干渉するなら大分消耗するけど、ダンジョン内の空間というか、自然に対して干渉したからね』
何その無法技。バグでしょ。
『あとは、この場所が妖力でいっぱいだからってのもある』
「妖力」
アレだよな。どっかの色恋バカどものうちの一人が言ってたやつ。
『妖力って、その存在力みたいな?もので、世界に対しての干渉権でもあるのね』
「つまり、妖力を使えば私も精霊みたいなことができると」
『だいぶ効率落ちるし……あっ、僕がいるからシオンに必要ない力だけどね!』
ほーん。
「でっ、その妖力とやらはどうやって手に入れるのかな?」
『いやいやいや、シオンには必要ない力だから気にしなくていいんじゃないかな!?なんたって精霊という上位互換な僕がいるからね!』
「ウード。私は魔王だぞ?独りで戦えなくてどうする」
両手でウードを掴みつつ撫で回す。
『あ、ううん、あー。はい。モンスター殺した時に奴らの存在格を一部奪えます』
ほほう。てことはその存在格とやらはもうすでにいくらかは手に入ってるわけだ。
『その存在情報が自分に取り込まれて、自分の存在格が大っきくなって、ある程度大きくなると世界に強く認識されて、干渉能力が手に入ります。その干渉権が妖
『あっ…情報教えた…』
「んじゃ、いこっか」
『…はい』
強いやつは存在格がでっかいから、雑魚よりも効率よく存在を奪える。ならこんなとこにいる必要はないわな?
「そういや、妖力使うと存在格が減るとかそういうのってあるの?」
『……………』
「ウード、殴られとく?」
『……!!そんなことないです!妖力使っても存在格は減りません!なんなら存在格はあくまで溜め込める上限値で時間が経てばそこまで妖力が回復します!』
これが躾の効果か。いや、でもこれまずいな。魔王って言っても配下を雑に扱うような魔王にはなりたくないんですけど。
そこまで行くと元人間としてどうなの?って話で。
「……ウード、ご苦労。後でモンスターの肉でもあげよう」
『_____!?わかった!えへへ、シオンの手料理〜!』
こいつやっぱ扱いやすいわ。私が間違ってた。この調子で躾てこう。飴と鞭は大事。
☆☆☆☆☆
そんなこんなでさらに上層に上がってきました。また何層上がったか数えてないけど。
ここらへんになると大分手こずるようになってきて、一度の戦闘でけがをすることもでてきた。まだ自然治癒能力でどうにかなるけど。
「ウード!次の客も私がやる!」
『りょうかーい!気をつけてね!』
妖力の存在を知ってからは、多少めんどくさくてもウードに譲らず私が倒すようにしている。
「さて、今回の客は炎の邪霊か」
さっきは水の邪霊だったし、どうやらここでは邪霊が現れるようだ。因みに邪霊とは精霊に似た存在だ。ただ精霊と違って悪意に染まってしまっているらしいが。
『邪霊ごときがこの僕にダメージを与えるシオンに勝てるわけがないのだ』
後ろで何かを言っているが、特に問題なく邪霊は倒せた。普通に魔力纏わせて殴ったら一発だった。
「うげぇ〜。またか」
『あ~ちょっと火傷してるね〜、どうする?治す?』
コイツラ殴ると属性に応じたけがをするんだよね。といってもちょっとだけで、魔力が薄かった部分だけなのだけど。
「いや、放置でいいや。このくらいならすぐ治るし」
『わかった。でもどうする?このままだと毎回怪我することになるけど』
どうするか。魔力の纏い方が悪いとしたらすぐには改善できないしなぁ。
というかあいつら、どうやって攻撃してんだろ?魔力無しの私の肉体でもそこらの火力じゃ火傷しないから直接私を燃やしてるんだろうし。
『うーんたしかに。いくら邪霊で効率がいいと言ってもシオンに直接干渉するには力不足だろうし』
なんでも、存在格が大きい存在は無意識に干渉から身を守っているんだそう。……できれば意識的にやりたいところ。
「ん?でも私ってそんなに存在格大きかったっけ?」
『うん。モンスター倒して増えてるし、何よりも龍だから』
「え?龍だとなんかあるの?」
『うん。龍って昔からこの世界に居るからその分種族単位で存在格が大きいんだよね』
なるほど。つまり私は最初から妖力を使えたわけか。全然気づかなかった。いや、もしかしてこの魔力が妖力って可能性があるのでは?
「そういえば私って妖力使ってたりする?あんまり意識してないんだけど」
『うーんしてないと思うけど、どうかした?』
「いや、何気にこの魔力ってなんなのかなって」
もしかしたら長生きしてるこいつならわかるかもって思った
『わかんない!』
……んだけど駄目か。即答してるあたり本当に知らないんだな。
『まあそんなのはいいとして、早くしないと返済期限が来ちゃうよ?』
「あっ…」
『シオン…………もしかして、忘れてた?』
「うしっ!さっさと上がるぞ!どうせ大した怪我でもないんだし放置ていいだろ!さぁお宝お宝!!」
『シオン………忘れてたんだね』
うるせえやい!間に合えばいいのよ間に合えば!
ところで…………返済期限ってあと何日?
債務N日目、返済期限???日後




