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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第一章:魔王誕生

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其の十八 幼馴染は負けフラグ?旅は道ずれ

 登録を終えて、席に向かうと、先ほどの女性が酔っぱらって眠ったであろう男を膝枕しながら待っていた。


「無事に登録できたようで何よりだ。ああ、この馬鹿は気にせず席に座ってくれ」


「どうも。やっぱりいいんですね。お二人の仲」


 絶対好きだろ、この人。じゃなきゃさすがに幼馴染とはいえ酔っぱらって寝てる男を膝枕しようとは思わんだろ。


「まあ、こんないつ死ぬともわからない仕事をずっと一緒だからな。仲も深まるさ。それと、もっと楽にしてくれて構わない」


 そういう信頼からくる仲の良さとは違うと思います。


「ふ~ん?じゃあそうさせてもらうけど。後悔しないでね?」


「・・・・・?ひとまず、何か頼もうか。正直な話、ここには食事に来たんだ」


 ほうほう。こんな野郎ばっかのギルドに併設されてる酒場にわざわざ食事に。


「こんなとこに食事ねぇ?お目当てはそこのだったりするのかなぁ?」


「なっ、なにを言う!?こいつがいたのはたまたまだ!」


「にひひ。やっぱりいい反応するねえ。からかいがいがあって助かるよ」


「ムムム、それより、早く何にするか決めてくれ!」


「は~い」


 ええと、何にしようかね。何気に最後に食事したのなんて転生前までさかのぼるんじゃないかな。そういう意味じゃこの世界最初の食べ物選らんでいるというわけで、ちょっと特別感がある。


『シオン』


「おっ、どした~」


 珍しく黙ってると思ったら急にどうした。そんな冷静になって。お前さっきまで酔ってたろ。


『もしかして、ご飯って、ここのご飯のこと?』


「そうだけど」


『っ!やだやだやだ~!!シオンと一緒に食べるならもっとふさわしい場所で食べたい!それにここのご飯はもう飽きたし』


 は?


『シオン?』


「シオン?どうした?顔が怖いぞ?」


『あっ、シオン。僕が悪かったよ。ここもそう悪くない気がしてきた。だからその手を下ろそう?ねっ?シオンなら我慢できるよ。大丈夫、おちつこっ!!』


「残念だったね。私はそんなに我慢強くないんだ」


 はあ、こいつはどうしてこうもバカなんだろう?お前はすでに飽きてても、私にとっては初めてなんですが?


「シ、シオン。どうしたんだ?というか、いったい何を?」


 お姉さんが困惑してる。まずい、このままでは私が唐突に精霊をいじめる頭のおかしい奴に思われてしまう。


「ちょっとこの馬鹿の躾を」


 だからそんなにひかないでください。大丈夫です。悪いのは私じゃないんです。


「いやあ、ほんと。この馬鹿は精霊だからかだいぶ人の話を聞かないというか、自分勝手なとこが多いんですよ。だからこうしてたまに躾ないといけないんですよね」


「あっ、ああ。そうか・・・」


 ダメ、か?いや、ここはもう一押し!あと一押しで行けるはず!


「いやね。誰彼構わずこんな暴力的なわけじゃないですよ?ただこいつが精霊なせいでだいぶ力込めないと伝わらないんですよね」


「あっああ。わかった。それでいい」


 絶妙にわかってもらえてない気がする。けどまあ、本人がわかったって言ってるし良しとしよう。


「わかってもらえたならよかったです」



 今この場において、全員の心情は一致していた。即ち。((((怖っ!!!絶対怒らせないようにしよう))))


 さて、無駄に魔力を使ってしまったが気を取り直してメニューを選ぼう。どうせなら量食べたいよね。



 ☆☆☆☆☆


 そのあとは、食事をとりながら例の件についてお話した。といっても私も詳しく知らないから馬鹿精霊に聞きながらではあったけど。


 それで分かったのは馬鹿どもが馬鹿だったってこと。簡単に話すと、馬鹿精霊が場をひっかきまわして、馬鹿がさらに馬鹿になって、有り金をかけた賭けが成立、その後は知っての通り、ということらしい。


 ほんと、馬鹿すぎて困る。というか、私あまり目立つなといったのにこの有様とかこれで使い勝手の良い精霊とか嘘だろ。


 ま、結局賭けで手に入れたお金はそのままでいいということになって懐も割と潤ったし、迷惑かけたお詫びとしてご飯も奢ってもらって、冒険者の先輩との伝手もできてなかなかいい結果ではあった。

 絶対、あいつに感謝はしないけど。


 そんな感じで向こうの用は終わって、そのあとはお姉さんたちの過去の冒険話を交えて冒険者のイロハを聞きながら恋愛話でからかって楽しんで、日も暮れてきたところでお開きしようということになった。


「それじゃ、私たちは宿に戻る……そういえばシオン、宿はあるのか?」


「ないね」


「そうか、じゃあ私たちの泊まっている宿に案内しよう」


「それは助かるけど、お金足りるかな?」


「む、たしかに多少高いが、このバカから回収した分で足りるはずだ」


 まあ確かに。さっき確認したけどだいぶあったからな。


「・・・・・ところで聞きたいんだけれど。フィリスはそこのと同じ部屋で寝るの?」


「ッ!!そ!それはあれだ!その…お金は、節約した方がいいから!」


「なるほどね~、節約のためなら仕方ないよね」


「あ、ああ!そう、節約のためだからな!」


 節約のため、ねえ。フィリスも素直じゃないねえ。あっ、フィリスっていうのはあのかっこいいお姉さんね。


 ちなみにあのバカの名前はレックス。一応ほかのパーティメンバーの名前も聞いたけどほかに衝撃の事実があったせいで忘れた。

 そんなことどうでも良くなるほどの衝撃の事実を聞いたからだ。


 なんとこのレックスという馬鹿者、パーティリーダーだというのだ。そのうえあと二人のパーティメンバーは二人とも女子でフィリスと同じく片思いしているという。

 なんというハーレム!なぜだ!?


 彼女らの男を見る目が心配になってしまうが、他人の恋路はあまり口出ししない方がいいので言えない。

 しかしそれはそれとして気になるのは他の二人の扱い。


「節約といえば、ほかのパーティメンバーも同じ部屋に泊まるの?四人部屋で、それとも二、二?」


 あっ、失敗した。これでは素直になれないフィリスは四人部屋を選んでしまう。言わなければ二人部屋だったかもしれないのに!


「二人!?そ、そんなわけないだろう!四人全員一緒の部屋に決まっているだろ!?」


 やっぱり。失敗した。もったいない。


「・・・そもそも、二人部屋なんてそんなずるいことできるわけ」


「くぅ」


 ___!?な、なんていい子なんだ!?自分だって恋人になりたいはずなのに他の人のことまで考えて我慢している!?


 えらい!えらすぎる!しかしそれじゃだめだ。恋愛とは勝つか負けるかの真剣勝負。そこに情けはいらない。油断したものから死んでいくのだ。ここは私がガツンと言ってやらねば。


「フィリ――――」


「シオン。ついた、ん?どうかしたか?」


「いや、何でもない」


 もう宿に着くなんて。タイミングを逃してしまった…いや、これは天からの思し召しに違いない。言わないでおこう。


「そうか。ここが私たちの泊まる宿、白光亭だ。」


 白光亭。外観は周囲と変わらない石造りの建物だが、そのサイズが違う。冒険者ギルドも体育館サイズではあったが、ここはその何倍も広そうだ。だというのに、外壁は毎朝磨かれているかの如くきれいで隅々まで手入れが行き届いているのがわかる。


 中に入ると、そこに広がるのは夜にも関わらず照らされているエントランス。

 奥には併設されている食事処が見え、前世で見たそれなりに高級なホテルが思い起こされる。外装と異なり、内部は木材を基調として設計されているようだ。


 そうして宿の様相に感心していると受付から声をかけられた。


「こんばんわ、フィリスさん。お帰りになられたんですね」


「ああ。予定とはだいぶ変わったがな」


「ええ、ですが悪くない変化だったようで」


 この男、わかってる!いいねえ。この明確に言わないけど遠回しにからかっていくスタイル。私も真似しよ。フィリスが無言で耐えてるのを見るとこのくらいの方が逆に照れるのかもしれない。


「そ、それはそれとして他の二人はもう戻っているか?」


 あ、復活した。


「はい、戻られていますよ。ああ、そういえばお二人から言伝を預かっていたんでした」


「言伝?一体何を?」


「『一人だけいい思いするとは思わなかった』『後で全て話してもらう』それと『裏切りは許されない、覚悟しなさい』と。なかなか大変そうですが、頑張ってください」


「あああ〜違うんだ。そういうわけじゃないんだ。どうか、どうかわかってくれ」


 ふむ、この怯えよう。抜け駆けは死罪、といったところか。しかしここに恋敵はいないのに謝るとは、 それだけ恋する乙女は怖いということか。


 そしてこの男、頑張ってくれと言いつつその表情は笑顔のままである。


「ところで、お連れの方はお客さん、でよろしいのですかね?」


「あっ、はい。そうです」


 びっくりした。フィリスのことは無視する感じなのね。まあしばらく復活しなさそうな気はする。

 ・・・謝るならその男を下ろしてからの方がいいと思う。


「承知しました。では、一人部屋に泊まられますか?それともフィリスさんたちと同じ部屋の方がよろしいですかね?」


 ふむ、ここで先に一人部屋を提案してくるあたりちゃんと私を一人の客としてみてくれているのがわかる。外装内装といい、この宿は本当にいい宿な気がする。これは部屋にも期待が持てそうだ。


「一人部屋でお願いします」


「では、お部屋にご案内しますのでついてきてください」


 はえ〜このお店は料金後払いなのね。だいぶ自信があるんだなあ。と、そんなことを思いつついて行くと、すぐに案内人は足を止めた。


「こちらのお部屋になります。フィリスさんたちのお部屋はお隣にございますので、何かあれば頼るとよろしいかと。もちろん受付も近いですから、私どもに声をかけていただいても問題ありませんが」


 何という気遣い。一人の客として扱いながらも相手は幼い女児というのを念頭に置いている。この男、やはりできる。


「わかりました。ありがとうございます」


「いえいえ、では失礼します」


 男から鍵を受け取り、部屋に入る。木材を基調とした落ち着いた、何処か温かみのある室内。床には絨毯がひかれており、ベッドに棚、デスクなど長期滞在できるような設備が揃っている。


 そして、部屋の木窓からは外からは石壁に阻まれて見えなかった美しい中庭の景色も見える。


 ・・・中庭が見える?もう夜だぞ?暗くてまともに見れないはずじゃ?


 ………!!中庭自体が照らされているのか!それだけじゃない!この部屋、というかこの宿全体にも明かりがついている!


 建物の建材や人々の姿からして未だこの世界では工業化は進んでいないはず。つまり科学技術はほとんど発展していないと言ってもいいだろう。

 だと言うのにこの宿では明かりがふんだんに使用されている。やはりこの世界には科学とは異なるモノが存在する!?


「フィリスに聞こう」


 フィリスの部屋は隣だったはずだ。これがもし私の想像する魔法によって成り立っているのなら、私はもっと、強くなれる。


 ということで早速隣の部屋の前に移動しノックする。

 ・・・・返事は返ってこなかった。

 もう一度ノックしてみる。やはり返事がない。

 仕方ないのでドアを開けようとしてみると、どうやら鍵はかかっていないようだ。ふむ。


「お邪魔しまーす」


 挨拶とともに扉を開くと同時、頭上に杖が振り下ろされた。

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