表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第三章 神獣激突

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

108/111

其の百十二 《幕間》とある家庭の神話生活 その1

ご報告(後書き)のための投稿。一日一つで幕間四話分です。四章はまだ先…だね。来年になると思います。たぶん。

 

「んっ…」


 頭の中がふわふわする。


「………?」


 ここはどこだろう?

 私は何をしていたんだっけ?


 考えても考えても辿り着かない答えを探るみたいに、自分が夢の中にいるみたいに、何かを感じているようで、何もわからない。


 ──懐かしい。


 ………あれ?なんで、懐かしいなんて感じるんだろう?

 私は確かにここにいるのに、私のことに誰も気づいてくれないなんて、自分で自分のことがわからなくなるなんて、すっごく怖いことのはずなのに。


 そんな事を、目が覚めた私は気品のある調度品たちを眺めながら感じていた。



 ─────────────────


 コンコン。部屋の扉をたたく音がする。


「お嬢様、失礼します」


 眠っていた少女がそちらに視線を向ければ、可愛らしいメイドがいた。


「え…」


 まるで幽霊でも見たような顔をして固まる彼女だが、それでも手に抱えているお洋服を落とさないのはメイドの矜持といったところだろうか。


「お、お嬢、様?」


 目を大きく見開いて、確かめるように言葉を紡ぐメイドだが、対する少女はお嬢様とは誰のことを指しているのかと首をかしげる。

 試しに後ろを向くが、誰もいない。あたりを見渡してみても、誰もいない。まさかと思って布団をめくってみるけれど、そこには彼女の足しか隠れていなかった。


「……?」


 再び彼女は首を傾げ、誰に対して声をかけているのかとメイドを見つめ返す。


「いや、どう見ても起きてるよね?えっ、お嬢様が起きているということは………私の仕事が増える!?嘘!?毎日数回顔を見に来るだけでよかったこのお仕事なのに!?嘘でしょ!?いや待ちなさいヘンリエッタ。これでいい、これでいいのよ。仕事が少ないからってサボっていたのがおかしいの。同僚が我が王のために身を粉にして働いているのにそんな楽をしていたのがダメなのよ。そう、そうよ!そもそも我が王でさえあんなにも働いているのに私が働かないでいいなんて意識を持っていた私は大罪人。極悪非道な拷問の末に死ぬべき人間。我が王はたとえそれを知ってもせいぜいが解雇で終わってしまう。だったら…これからは血反吐を吐くまで働いてこの忠義を示さなくてはならない!さぁヘンリエッタ、集中なさい。メイドの在り方は覚えているはず、さぁ──!!」


「──お目覚めになられましたか、お嬢様。お召し物をお持ちしております。我が王がお待ちですので終わりましたらお声がけください」


 ヘンリエッタ、サボりという感情を覚え始めていた彼女の感情は急転直下し、メイドとしての矜持と仕草を取り戻す。


「……?………!?」


 その様子に一度は困惑していた少女はしかし、その言葉の意味を理解して驚愕に目を開く。


「あなた、私がわかるの?」


「………失礼ながら、質問の意図がわかりません。しかし、お嬢様のことを認識しているか、でしたら答えははい、になります」


「そう…」


 少女は複雑な感情を抱きつつも、一つ目を閉じて答えを出す。


「着替えをください。その我が王?に会います」


「承知しました。お手伝いはご要りようですか?」


「大丈夫、もう終わりました」


「ぇ…しょ、承知しました。で、では御案内します」


「お願いします」


 そうして、二人は部屋を出る。

 少女は「我が王」という存在への疑念と、これから先の未来への期待と不安を抱えながら。

 そして、メイドであるヘンリエッタはと言えば…


(やばいやばいやばい!?こ、こんな凄い人だったの!?早着替えのレベルが違う!そりゃ我が王が連れてきた人なんだから強いのは当たり前だけどさ!私ですら全く見えなかったってそれどんなバケモノ!?私殺されない!?さっきすごい失礼なこと言ったよね!?あ〜胃が痛い!!ごめんなさい我が王!これからは真っ当に生きていきますのでどうか!どうか国外追放までで手を打ってください〜!!)


 表にこそ出さないもののあまりの格の違いを受け、自身の非礼と愚かさに打ちのめされていたのだった。



 ───────────────────



 従者が足早に近づいてくるのを感じてだった書類を脇に寄せる。


「入れ」


「失礼します!我が王!ヘンリエッタより伝言を預かりましたのでご連絡に参りました!お嬢様がお目覚めになられました!現在はヘンリエッタと共にこちらに向かっているようです!」


「そうか。わかった、下がれ」


「はっ!失礼します!」


 従者が部屋を退出し、執務室は再び静寂に包まれる。

 カチカチと時計の針が進むことしばらく、何重にも張り巡らせた探査結界により近くに誰もいないのを確認し、机の上に突っ伏した。


「疲れた。アレが起きたのなら…僕も休暇としよう」


 突っ伏したままに目を瞑り、くだくだと意味のない愚痴をこぼす。


(なぜ、僕はこんな目に遭っているのか…) 


 これならば『公王』でいるよりも【魔王】でいる時の方がまだマシだ。あぁ、外に出たい。チャンスがあればまたどこかの祭りにでも行こうか。それかダンジョンに行くのでもいい。もはや王としての責務から逃れられるのならばなんでもいい。


「『終古』からの連絡の件もあるが…まずはアレの相手か。配下を下がらせる良い口実にはなるか…?」


 そんな事を考えて、頭を振る。硬く冷たい机の感触が僅かに思考を冷ますが、それ以上の行く当てのない怒りがこみ上げる。


「シオン・セレスティン」


 この僕に喧嘩を売り、魔王を騙った少女。いや、幼子とすら言える彼女。この僕が魔王として認め、その名を付けた、僕の二人目の後輩。


「どこへ行った?お前は今、何処にいる?」


 アレとの、太陽神である少女との戦いに決着がついたあと、すぐに配下を使ってその居場所を探させた。だが、何処にもいない。奴が何処にいるかの情報がまるで存在しない。まさか死んだわけじゃないだろう。僕が一度殺そうが死ななかったのだ、あの程度で死ぬわけがない。


「………そろそろか」


 部屋へと近づく二つの気配を確認し、姿勢を正し、服を整え、部屋を綺麗な状態へと戻す。結界を張り巡らし、万が一に備える。


 コンコンと扉が叩かれる。


「我が王よ、お嬢様をお連れしました」


「入れ」


 そう告げれば扉は開かれ、そして。


「ヘンリエッタ、退出しろ。全員を王宮から退避…いや、僕が移ろう」


「えっ?」


 僕の姿を確認したと同時に噴き出した焔からヘンリエッタを逃がし、少女と共に無人の山へと転移する。


「───!!!」


 焔が迫り、木々を燃やす。それを掻き消し、幾重にも重ねた障壁で少女を閉じ込める。


「やぁ、太陽神の少女。少し、落ち着こうじゃないか」


「うぅぅぅ!!ぁぁあああ!!」


「ふむ。一度負けて少しは冷静になったと思っていたのだけど…僕の思い違いだったかな?」


 勢いよく吹き荒れる焔により障壁にヒビが入る。しかし、それだけだ。


「そうそう、その障壁は君だけのために準備したものでね。あの時のように容易く燃やし尽くせるとは思わないでくれよ。まぁ、今の君は相応に弱体化しているようだからそんな事は出来ないと思うけれどね?」


 対太陽神専用の結界。あの時の反省を活かし、次は無いようにと彼女が眠っている間に試作したものだが…思いのほか効果はあるらしい。徐々にヒビ割れが拡大し割れかけているが、この程度ならば修復できる。それにたとえ壊れたとしても新たに張り直せばいい。


「しばらくは好きに暴れるといい。無駄だとわかれば君も少しは話をする気になるだろう?」


 僕と彼女の仲は悪い。当然だろう。僕は彼女を殺そうとした。そのうえで、それを止めようとする彼女のただ一人の友人をも殺しかけた。最後にとどめを刺したのは彼女自身であるとは言え、その大本を辿れば僕が原因だ。


「恨まれる理由はあるとはいえ…敵意を向けられるというのはあまり好ましいものでもないな」


 ───つい、消したくなってしまう。


 ダメだ。彼女を殺せない。未来に訪れるだろうソレのためにも、後輩のためにも、彼女は失えない。それに加え、僕自身、彼女の境遇に思うところもある。だからこそ殺せない。どれだけ敵意を向けられようと、こうして拘束し対話を試みる以外のことはできない。


「難儀なものだ。これほどまでに殺意を向けられようと殺せないというのは」


 結局、僕は彼女に同情しているのだろう。理不尽にすべてを奪われる気持ちも、自分ではどうしようもない存在に気に入られることの厄介さも、とても良くわかってしまうから。



 それから時は流れた。一日が経ち、二日が経った。その間、執務室から持ってきた書類を片付けつつ、彼女が自由にならないように障壁を維持し続けた。そして、三日が経ったある日。


「うっ…ぁ…」


「おや、思ったより早かったね?」


 障壁に寄りかかるようにして倒れてしまった少女に近寄り、その体を支える。すぐさま焔を噴き出して抵抗するが、それは僕に一切の傷を負わせなかった。


「無駄だよ。君の力じゃもう僕を殺せない。その力はもう十分に理解した。もうこの結界も壊せないだろう?」


 弱々しい焔を噴き出す彼女を無視して、一つの術を起動する。


「星空というのは美しいものだ。望まずとも太陽しか見ることのできない君にとっては殊更に」


 沈むことを忘れて浮かび続けていた太陽は消え、世界は月夜を取り戻す。それは太陽神であり、存在するだけで世界から夜を奪う彼女にとってはあまり見ることのできない景色だろう。それこそ、あの夜くらいのものか。


「ぁ…」


 少女の声が僅かに漏れる。その目が映すのは、憧憬か、感傷か、寂寥か、満足か。いいとも悪いとも取れない顔で彼女は黄に染まった月を見る。


「時の流れは早いものだね……緑だったはずの月がもう黄色に染まっている。そろそろ寒くなってくるだろう。今年の冬は…雪は降るだろうか?」


「……雪」


「あぁ、雪だ。寒い季節、雨のように降り注ぐ白い粉のようなものさ。寒くなければ降らず、太陽が出てしまえば溶けて消える。君にとっては、縁が無いものかもしれないが、悪くない。街に降りれば子供たちが駆け回り、雪を集めて投げ合っている。大人たちは屋根に積もった雪を下ろし、子どもに紛れて嫌いな奴へと石を混ぜて投げている。だが、雪解けもまたいいものだろう。太陽が顔をのぞかせ、降り積もった雪を溶かす。雪は溶けて輝き、隠れていたものたちが顔を出す。そんな希望もまた、なくてはならないものだろう」


 あれらの美しさは身を見張る。僕は僕を世界で最も美しい存在だと自認しているが、それでも、それらの美しさは負けず劣らずのものがある。ありふれた日常の美しさというのはそれが飽和している頃には気づけないものだ。失って初めて気づく美しさが、そこにはある。


「少し、自分語りをしようか。君の名前を聞くのは、その後にしよう」


 月は見るものの心を映し出し、遠い記憶を喚び起こす。嘘で隠れる僕でさえ、暴かれてしまうほどに。


今年の冬は各地で雪が積もるでしょうか?


ちなみに時系列的には3章頃のアムルとソラのお話…のはず。もし諸々に矛盾があっても許してね…! 


ちなみにこの世界の月は

赤(春)→緑(夏)→青(秋)→黄(冬)

のイメージです。なので月の色は大体三ヶ月で変化します。ちなみに月の満ち欠けは大体一月で一巡です。


────────────────


ここからご報告。


まず始めに、「小説家になろうチアーズプログラム」に参加しました。参加することでのデメリットが特に見られなかったので。こちらは皆様にはあまり関係しないと思いますのでふーん程度でどうぞ。


次に、Xアカウントを間違えて消しました。もともと機能してなかったものなので影響はないんですが、一応新しく作り直しました。これもまぁふーんでいいです。今後もあまり機能はしないと思うので。


最後に、名前に苗字がつきました。Xアカウントに合わせた形です。「海月」だと被ってたんですよね。


以上、お知らせでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ