表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第三章 神獣激突

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

106/111

其の百十 お戯れ

 守る者のいなくなった隠し扉を通って御神木内部、竜王の間の直前までやってきました。


「サガエル、ステルス。毒を通せそうなら通して無理そうなら隠れて待機。私が気合で耐えるから」


 サガエルにはここに来るまでに竜王様との約束とその強さについて話してある。だから簡単に作戦を告げてすぐに自分のことだけに意識を集中させる。


 必要なのは速さ。防御力は要らない。というよりあったところで意味はない。いくら固めようと回避できなきゃ死ぬだけだから。


 そうなると精霊の力(ウード)はいつものように守るより思考補助に割くべきだろう。前回は私を試すつもりの攻撃だったから障壁にも意味はあったけど今回はちゃんと攻撃する気で攻撃してくるはず。となるとやはり防御に意味はないな。全部避けてどうにかするしかない。


 考えられる攻撃方法は爪、息吹、尻尾、踏み潰し、体当たり、あとは妖術か。


 物理は基本避けるだけ。気合で避ける以外に対抗策は何もない。だって当たったら死だから。あの巨体だと通常攻撃からして面制圧になるからむずいけど。


 でもそれより嫌なのは息吹か。属性にもよるだろうけど確実に広範囲高火力を持続的にやってくるだろうし。竜王は赤竜だからわかりやすくファイアブレスだとまだいいけど、それても地面が炎上して環境ダメージ兼回避の邪魔になりそうで嫌だ。


 あぁ、雷とかだった時用に神経代わりの妖力ネットワークを体内に張り巡らしておかないと。なんでか魔力よりやりにくいし効果も落ちるけど神経狂って動けないよりはマシ。


 あとは…妖術だけど、これはもう対策不可能。出たとこ勝負にしかならないな。もともと妖力って万能だし、妖術は無限の可能性を秘めている。


 そのおかげで私はあの〈絶対領域〉とか〈精霊の遊び場〉みたいな無法が罷り通せるのだけど、そのせいでどれだけ対処してもその場の思いつきで知らない技を使われて一発逆転なんてことも余裕であり得る。まぁ今回は逆転どころか圧倒される可能性が生まれてくるんですけどね。


 私にできることはせいぜい精霊の力(ウード)で妖術の起こりを感知して即座に潰すか効果を調べて対応準備を急ぐかくらいだ。どっちも通常攻撃と言うなの範囲攻撃連打避けながらできることじゃないってのは置いとくとしよう。


「さて、ありったけのバフはかけた。イメトレも完了。せいぜい全力で踊るとしようか」


 広場への隠し扉に手を触れ、深呼吸を一つ。


 大丈夫。私は強い。


「呼ばれてきたよ!竜王!」


 駆け入るようにして見た目壁の扉を潜る。


『クハハッ!覚悟は!』


 眼前に突きつけられる極圧の〝死〟をレジスト。


「できてる!」


『ならばよし!我が戯れ、堪えてみせよ!』


 私は言った。次に来る時は竜王の戯れに余裕で生き残れるようになっておくと。予想の何倍早かった次だが、約束は約束だ。


「変身!」


 爆発とともに体に眠る龍血を解放。四肢を龍のものへと変わり、縦に裂けた龍の瞳が開かれる。


 紅き瞳が映し出すのは迫りくる攻撃の軌跡。かつて龍王が見てきただろう竜王の攻撃パターンだ。


『良い!存分に舞え!』


 ハイテンションを伝える声音とともに格段と攻撃の密度が上がった。

 両腕両足尻尾に噛みつき、全身を使って私を捉えようとし、それを間一髪、紙一重で避け続ける。

 一瞬たりとも気の抜けない戦いの中、急速に意識が研ぎ澄まされていくのがわかる。


『よく見ている。ならば変化を加えるとしよう』


 左右同時に迫る両腕、避けるために上に飛び上がる。直後迫る尾を宙を蹴って回避、さらに上へ。

 そして気づく絶望の予感。

 今にも放たれようとしている妖術に干渉しようとするが間に合わない。


『〈王庭〉』


「ぐあっ!?」


 放たれた妖術により重力が強まったかのように地面へと落とされる。周辺に展開された強烈なプレッシャーにより這いつくばることを強制される。


『これで終わりか?』


「なわけ、あるか!」


 体は重い。立ち上がることすら難しい。だけどやりようはある!


「〈精霊の箱庭〉!」


 この圧は周辺空間を自身の庭として支配することによって発動している領域型、つまり、その領域の支配権を奪えばこの術は機能を失う!


「まだ、まだ遊べる!」


 全部を奪うのは無理でも、私を中心として半径数メートルの範囲だけなら維持できる。


『意気や良し。次、いくぞ?』


「あい!」


 伸びる爪、速度の上がった拳。

 それらを上下左右前後に爆速で駆け回って避けきる。


『ふむ』


 呟きと共に竜王の動きが変わった。


 避けて避けて避けて、その先を閉ざすように尾が振り下ろされる。


『背面はやりにくいのでな、邪魔させてもらうぞ?』


「バッキャロー!フィールド制限止めろぉ!」


『クハハ、まだ騒げるか』


 あ、ヤッベ。


『〈泥沼〉』


 発動が早過ぎ!?


「だっあ!?」


 足が、嵌った!?全然抜けな、これもしかして底なし沼!?


『飛べぬ鳥の行く先は一つ、そうだろう?』


 迫りくる影、罠にかかった私を踏み潰そうとゆっくりと足が迫る。


 あぁ、終わった。


 すぐには抜け出せないし、このまま踏みつぶされて今度こそお終いか。


「あーあ、間抜けな最期だなぁー」


『フッ、下手な芝居だな』


「そうだったら、よかったんだけどね?」


『何?』


 あぁ、良かった。足が止まった。


「やっぱりまだ足りなかったや。助けてー、竜王様」


『………』


「うん?どうしたの?戯れは止めて助けてよ。もう自分じゃ抜け出せないからさ」


『………つまらん。貴様はこのまま死ね』


「え、ちょっと待ってよ!?」


『待たん!』


 えっ、あ、終わった。


 勢いよく踏みならされた地面。小さな小さな私はそこでぺしゃんこになって敗北しましたとさ。





 なんて、お芝居。



「あははっ、役者にゃなれそうにないね。私」


 竜王の背後で拳を構えなが心からそう思う。


『ハッ!やはり!』


 それを読んでいたように背面を向こうとする竜王。


『な、ぬ?』


 だが、その速度は遅い。それこそ、何かの状態異常にかかっているかのように。


「ハハッ」


 やっぱ、逃げ惑うよりこっちのがいいでしょ。


 その首がこちらを向いたとき、私は既に足場を敷き終え飛び出さんと力を溜め終えている。


「〈一撃入魂(ワン・パンチ)〉」


 この一撃に全力を込めて、今飛び出す。


『なめるな!』


 開かれた口か鋭い牙が覗き、その奥からエネルギーが流れ込むのを感じる。


『ガァァァアアアアァア!!!』


 直後放たれるのはファイアブレス。

 このままでは真正面からぶつかることになる。

 どうにかして回避しなければ一撃を叩き込む前に溶けて死ぬ。


 だが、〈一撃入魂(ワン・パンチ)〉の影響で私は今一撃殴るまで他の行動が取れない。当然だろう?殴ることだけに魂を込めているんだから。


「だから、()()()


 もう何度も告げてきたその言葉。窮地の度に私は任せて、その度にアイツは頼んだ以上の成果を出していたし、それはアイツが消えた後も変わっていない。


 そうだろ? 精霊。


「あー!あぁぁぁぁぁ!!!」


 気合!入れてけ!


 焔の群れに突入する。

 圧倒的な熱量を前に、全身が焼けるように痛む。


 だが、その焔が私の身体に直接触れることはない。


 〈精霊の箱庭〉───私の周囲の空間は精霊の支配下にある。だから、焔の群れは箱庭を避けるようにして進むし、切り分けられた空間は断熱の特性とともに熱を逃がす。


「竜王!お前の焔は!ぬるい!」


 ファイアブレスを突き抜け、口内を越えてその喉奥へと私の最大火力を突き付ける!


『がっぁあ!?』


 〈一撃入魂(ワン・パンチ)〉による殴りの硬直が終わると同時に口外に転移。隣に現れたサガエルと共に幾重にも障壁を張り守りを固める。


 そして。


『ゴッホ!ゴホッゴホッ!!ガホッ!ゲホッ!アッアッア…』


 極大の音と衝撃を伴う咳が始まった。


「うへぇ…キッツ」


 喉への攻撃とか私だったら絶対受けたくないわ。キツイもん。痛みもそうだけど怯むというか違和感が残るというか。急所なだけあって痛み以上の被害を受けるんだよなぁ…。


 ていうか、何でただの咳で障壁がパリンパリン割れるんですか?もはや呼吸だけで大概の敵滅ぼせるじゃないですか?呼吸縛りでラスボス倒せたりしません?

 いやなんだそれ意味わからん。


「あー、疲れた」


 障壁貼りつつちょっと休も。


「サガエルもお疲れ様、助かったよ」


 いつ攻撃したのか分かんなかったけど。 

 そんなことを言えば契約のパスを通じて意思が送られてきた。


 あ、なるほど。重力増加した時ね。確かに。あの時私の様子ばっか見て割と油断してたもんね。

 それでもアレ相手にバレずに攻撃通せる時点でおかしいけど。


 と、私は思ったのだけど、どうやらサガエルは満足していない様子。


 何でも毒の効きが悪かったのが不満らしい。致命のはずの毒の効果が一時的かつ僅かな行動阻害に収まったのと毒が回るまで時間がかかったことが納得できない様子。


 何この子怖い。


 あなたそこらのゲームならラスボスか裏ボス級の存在な竜王相手にステルスで状態異常を徹してる自覚あります?


 あの手のやつって大抵の場合状態異常無効的なパッシブスキル持ってるもんだと思うんですよ私。


 それなのに毒を徹してるってことは無効貫通してるわけで。

 そもそもあの巨体相手に一撃分の少量かつ短時間でハッキリした効果見せるっておかしいでしょ。


 だって地球の象サイズでも麻酔とか効くまでそこそこかかるでしょ?それをその何倍のサイズの竜王相手にってどんな劇毒よ。


「あとあの鱗を突き破って毒入れてる時点でそのトゲ何相手でも貫けるでしょ。これ以上強くなられたら私の立つ瀬ないんですけど」


 今回だってギリギリのギリで生き延びたけど全然死ねたし。下手な芝居したのもサガエルが毒を徹すと信じての時間稼ぎだったわけで。


「あーあ、いつになったら魔王らしくなれるのやら」


 そんなことを思いながら、私は障壁を張り続けるのであった。竜王の咳が止まるまで、まだかかりそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ