其の百九 新たな相棒
浴びる夕焼け、血溜まりに立つ私はボロボロで意識もフラフラ、今にも倒れそうである。
「……勝っ…た」
周囲に散らばる神獣たちの残骸。死闘の末、私はギリギリの勝利を収めたのだ。
次に目を開くと青空をみていた。
太陽が昇り眩しいくらいに世界を照らしている。
「寝てたのか」
そう呟けば途端に思考は加速し体が目覚めていく。ゆっくりと体を動かし起き上がり周囲を見渡せば…
「わぁお」
見覚えのない神獣たちの死骸が転がっていた。
さて、そんな光景を見せられてしまえば例のペット枠は確定だな。彼がいなきゃあ私はここで意識もなく終わってたんだから。
……我ながら無茶したもんだ。あんな数の神獣と殺し合いだなんて。
「ま、そうしたくなったんだから仕方ない。だよね、カサゴくん」
呼ばれたことに気づいたのかカサゴくんが私の下まで泳いでくる。無事を確かめるように周囲を泳いでいるのは前回の反省からだろうか。
「守ってくれてありがとう。君がよければこれからもよろしくね」
その言葉に動きを止めるカサゴくん。だけど次の瞬間には先ほどまでの倍の速度で周囲を泳ぎ出した。
これは…喜んでるってことでいいのかな?
いい…んだろう!いいことにする!
「さぁ!カサゴくん!散歩の時間だ!」
そうして歩き出せば背後から付いてくる気配。やはり仲間になったってことでいいのだろう。あとは【神獣王】様のとこまで連れて行くだけだ。
そうしてやってきました山頂。相変わらず何もないけどよ〜く見ればなにか空間の歪みが見える。なのでそこを両手で押し広げるように門を開きカサゴと共にくぐる。
『気づいたか』
「こんにちは【神獣王】様、例の報酬を受け取りに来ました」
『良い。絆を結べる神獣は一体限り、そのものでいいのだな?』
「はい、構いません」
『そうか、ならば少し待て』
これで良しと。絆を結ぶ、つまり契約を結べるのは一つの魂につき一体が限界。だからこのカサゴと契約すれば他の神獣とは契約できない。
けど、そもそもこのカサゴ以外に仲良くなれそうなのが一体もいなかったし、アレだけ助けられたのだからここで見捨てるなんて選択はない。だから後悔はない。
『同意がとれた、多少の違和感は我慢しろ』
えっ?
おっぁ?がぁ!?
痛い痛い痛い痛い!?胸が!?胸の奥がぁ!?頭が痛い!?えっなになにこれなに!?
「オッェ…」
吐きそう。異物感がヤバい。
『抵抗が強いな…』
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!
胸の奥も頭の中も焼かれてるみたいに痛い!
魂?魂に触れられてるから?こんな気持ち悪いの!?
『……何だ?』
オエァ…あ、ウーァ…アァ、ゲェ!
「ハッハッハッ!?ゴホッゴホッ!」
ハァー、落ち着いてきたぁ。
『………』
「ハァー、終わり、ですか?」
『………』
「【神獣王】様?」
あの、あの?流石にこれもう一回はヤなんですけど。失敗したとかいいませんよね?
『あぁ、問題ない…だろう』
「【神獣王】様?」
何今の。えっ?何ですか?よくわかんないけど不安なんですけど!?
『契約は成立している。問題はない』
「そう、ですか?」
『………褒美をとらせよう。何か欲しいものは?』
「え?」
何?えっ?
「あの【神獣王】様?それじゃまるで何かミスがあって口止め料渡してるみたいになってますけど?」
『………そう、ともいえる…な』
「は?」
すぅ〜…ハァ〜。
「全部話してもらえます?もらえますよね?話せコラァ!!」
『くっ…仕方…あるまい』
なぁーに被害者ぶってんだコラァ。悪いの完全にそっちだろうがよぉ!?
と、そんな感じで尋問した結果わかったことは簡単だ。
「あの神に感謝したのは久しぶりかもしれない」
【神獣王】が私の魂に触れて神獣契約を施そうとしたら意外と私の魂のガードが堅くて全然うまくいかず手間取っていたらいつもの神が代わりに契約を施してくれたらしい。それもひどく効率的に。
つまり、下手くそな処置をみかねた神様が手助けしてくれたということだ。
それで、【神獣王】自身はあまり大したことをしていないから何か他に褒美を与えておこうとしたらしい。
『何か…願いはあるか?』
「『天空の国』への行き方教えてください」
『そんなことでいいのか?』
「だって他にできそうなこと思いつかないんで」
『グッヌゥ…』
唸っても無駄。もう既に信用も敬意も地の底よ。
何でも魂への干渉はその魂に随分と負荷がかかるらしいからね。実際すごい吐き気と痛みを味わったし。
「私は早く『天空の国』に行きたいんで早くしてもらっていいですか?私は龍の力についていろいろと調べたいんで」
『何?それならばこちらで【龍王】に連絡を入れても構わんが』
「自分の責任他人に押し付けるんですか?」
『グッ!?』
「あと、まだ【龍王】様にあって生き残れる気がしないんで止めときます」
『何?奴はいきなり襲うやつじゃないはずだが?』
「それでもそこそこの武力はなきゃ不安なので」
何かあった時に全てなかったことにして逃げれるくらいの力は欲しい。あとしばらく強者はお腹いっぱい。世界の頂点と会いすぎてるもんで。
『わかった…ならば準備ができ次第言うがいい。『天空の国』まで転移してやろう』
「えっ、なら…」
『竜王の奴が呼んでいたぞ』
あ、ふ〜ん。
「なら先そっち行ってから戻ってきます」
『好きにしろ』
カサゴくんを連れて外に出る。いつもの山頂にスポーンした。
さて、これからやることは一つだな。
「さて、カサゴくん。君は何ができるのかな?」
能力を把握しなければ。そして足らぬと思ったならば神獣狩りと行こうか。
「と、そう言えば名前つけてなかった」
カサゴ、カサゴ…神獣だし…。
「サガエル。今日から君の名前はサガエルだ、っあ…?」
頭の中で回線が繋がった。誰かの意思のようなものが伝わってくる。いや、誰かじゃなくてこれはカサゴ、サガエルの意思?喜んでくれている、のか。
それとは別に全身に力が漲る感覚もある。試しに両手をにぎにぎ。何となく力が増した感じがある。これも神獣契約の恩恵なのかな?
「よし!サガエル!ちょっと試し狩りに行こう!」
と、いうことで。勢いよく山を駆け下りる。なにか手頃な神獣がいればいいのだけど?
「見つけた」
目標捕捉!対象はリス型神獣!
「人龍」
部分龍化して速攻。奇襲がてらその膨らんだ頬袋にパンチ。
「キュル!?」
間一髪で躱されるも問題はなし。
「〈開花〉」
すれ違いざまに生やしておいた種からツタを生やして拘束。動けないところに!?
「タネ、マシンガン!?」
溜め込まれた口から発射される何かの種や木の実。連続に、空間を歪めて迫る弾丸。
前から発射されているのに何故か後ろから迫る上、着弾タイミングが全て同時のそれらだが…。
「〈不滅の愛盾〉」
全て、全方位を覆うように現れた盾に弾かれる。
「おおー!強化されてる!」
前までなら一部防ぎきれなかっただろうに!もしかしなくとも精霊の力の方も強化されてる。神獣契約すげー!
「と、お疲れ様」
動けないリスにとどめを刺したサガエルがやってきたので労っておく。リスはと言えば毒に侵されて息も絶え絶えで動けない様子。あと数秒ほどで死ぬだろう。やっぱり毒って強力。
念の為死を確認するまで警戒はしておいたが、特に問題はなく死んでいった。
「ふんふん、そこらの神獣ならどうとでもなりそう」
今までならもっともっと苦労してただろうに。今回実質1ターンキルみたいなもんだったからね。
ただ、まだ気になることはある。サガエルといえば、私と契約を結ぶ前からサメ型クラゲ型神獣の群を討伐し、先の防衛戦でも幾らかの神獣を倒しているわけですから。
「もう何体か神獣狩りするぞー!」
今度はサガエル単独と私単独、あともっかい二人で…くらいの確認はしときたいかな。
そんな感じで戦う事しばらく。気づけば月が顔を出していた。
「いや〜、楽しくなっちゃった!」
反省反省。妖力もそれなりに使ったし、万が一がないうちに終わりにして置かなければ。明日に備えてね。
「それじゃ、サガエル。また明日」
いつものように地面に穴を掘りそこに潜り込む。サガエルは地上で待機させておく。
……いじめじゃないよ?
これは何度目かの戦闘で分かったことだけどサガエルには隠密、迷彩?の力があるようで、隠れようとされるとまるで世界から消えた?くらいの隠密度を誇る。
だから別に地下に潜らなくともサガエルは安全に夜を過ごせると。なら私が寝ている間の見張りも兼ねて上で寝てもらったほうがいいじゃん?
ま、本来私もサガエルも数日眠らなかったくらいで問題はないんだけどね。
……眠れるなら眠っておきたいじゃん?
「おやすみ」
朝、土葬から這い出てこんにちわ。
「おはよ~」
現在時刻は日が出始めた頃。そこそこ早めの起床です。
「イチ、ニーサン、シッ!」
朝の健康体操をして体を起こし、その他色々と体をほぐして戦闘準備。
「サガエルー、行くよー!っとわ!?そこにいたのね?」
隠密術が凄すぎて契約者の私ですら見えないのってなかなかおかしな性能だよね。
契約したことで常に何となくの位置情報が互いに分かるはずなのに。
「まいいや、強いぶんには問題なし!今日は竜王に会いに行くぞー」
そうして私たちは御神木に向けて歩き出す。
いざいざ、全力で逃げ回るぞー!




