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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第0章:幼龍転生(改稿済)

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其の一 異世界転生

 目を開くと、そこは異世界だった。


「何処だここ…」


 見渡す限り平面で、緑一つない荒野。空を見上げれば雲一つない青空が澄み渡っている。夢かと思って試しに頬をつねれば…柔らかい。ぷにぷにもちもちの質感だ。


(???)


 俺はもともと特段肌がガサガサであれているといったことはない。だけどこれはさすがにおかしい。そう思って視線を手のひらに向ける。


「ちっさ」


 このサイズ感…子供だ。いやまぁ俺はまだ十五、子供ではあるのだけど、これはそんなんじゃなくてちゃんと子供の手のひらだ。それこそ小学生くらいの。


 慌てて全身をペタペタ触って変化がないかと確かめる。


「え…?」


 頭を触る。とても肌触りの良い髪の毛だ。

 胸を触る。なるほど成長途中の柔らかい身体だ。

 お腹を触る。健康的な子供の膨らみと柔らかさだ。痩せすぎてもないし太ってもいない。

 体を折り曲げるようにして爪先を触る。想像以上にこの体は柔らかくて楽々地面まで手のひらをつけれた。


「なるほど」


 ここまででわかるのは確実に体が縮んでいること。身長がだいぶ低くなっているし、身体つきが子どもに戻っている。


 だが、ここまではいい。そもそもいきなり全く見知らぬ場所に転移するなんてことがあるのだから拉致られる時に子供になる薬を飲まされることがあってもおかしくはない。


「ふぅ…」


 意を決してゆっくりと手を股間部分に伸ばす。

 都合二度の確認経て俺は結論を導き出した。


「女児に転生した、か…」


 ついていたはずのものが無くなっている。もう十数年の付き合いであれば、驚きとともに寂寥感さえ覚えるものなのだと知った。


 知ったのだけど。


「問題は…ない。男が女になったからといって困ることは…あるけどもない!」


 そもそもここが何処なのかも分からず服以外のものも持たずにただ一人で放り捨てられたことを考えればこの程度誤差でしかない。そう、誤差だ。誤差に決まっている!


「大丈夫、そのうち慣れる。問題ないったらない!」


 よし、そうと決まればまず行動すべきはなんだ。水か?食料か?


「違うな、とりあえず寝よう」


 なぜだかひどく疲れた。こんな状態じゃ正常な判断などできやしない。だから寝る。


 寝てる間に死んだら?


 そんなことはないと信じる!いまのわたs…俺にできるのは祈ることだけだ。






「んっ…」


 吹き付ける風に目を覚ます。仰向けのままに空を見上げれば星々が煌めいてとても綺麗だ。


「星々…あぁ、あの月も緑に輝いてて綺麗だなぁ」


 なるほどね。なるほどなるほど。


「完っ璧に寝過ごした…!」


 ええと?俺は何をしていたんだったか。


「異世界に幼女として転生したことに疲弊して何もせずに寝た…んだったか」


 あぁ、うん。そっか。


「俺はバッドエンドを迎えるのか」


 名付けるなら、そう。


「バッドエンド1、怠惰な生活」


 エンド到達条件、意味もなく時間を無駄にして日々を生きたものに訪れる。


「くだらんこと考えてないでとりあえず動くか」 


 どうせここらに人がいるなんて都合のいいことないんだろうからせめて水場を見つけたい!


「命を繋げぇ!明日の日の出を拝ませてぇ!」







「ハァ〜!極楽ぅ〜!」


 よくわからないところにいきなり放り出されたけど意外と何とかなるもんだった!


「当てもなく彷徨い歩いて数十分。すぐに温泉を発見するだなんて私ったら運が良い!」


 ……ん?いま私「わたし」って…。


「まぁいっかぁ!気分いいしこのままさっさと受け入れちゃえば!」


 どうせ前世の事なんてほとんど覚えてないんだし!


 なんだったか、確か高校受験の合否を確認したのは覚えてるんだけど…交友関係とかはほとんど覚えてないし。家庭環境も分からず。


 ただ、一つ。確かに覚えていて、今もなお常に胸を焦がすような情熱を感じさせるものはある。


「俺は魔王を目指していた。科学文明の発達し魔法や神秘が否定されたあの世界で。その方法はついぞ見つからず、せめてゲームの中で、と魔王ロールを目指していた」


 受験勉強はしつつも、毎日のようにゲームに没頭し、数少ない友人とともに魔王に至ろうと。あぁ、いつも隣で協力してくれた彼女は誰だったか。


「もう忘れた、この世界に来る時にちゃんとお別れができたかもわからない」


 願わくば、俺のことは忘れてくれればいいが。


「世界に居もしない人を、永遠と待ち続けるのに意味はない。俺のことは忘れて自分の夢を言ってくれれば… なんて思えるのは私がこの世界に来たからだろうか」


 ダメだな。誰もいない荒野で一人星を見上げているとどうしてもセンチメンタルな気分にならずにはいられない。


「魔王ねぇ…この世界でならなれるのかなぁ?」


 この世界がよくあるファンタジー的な異世界なら、私の夢見た魔王になることもあるいは可能なのかもしれない。


「どうせ元の世界に戻れないなら、この世界で好き勝手するのも悪くない」


 さて、茹だる前に出るとしよう。


「………あれ?」


 これどうやって体拭くの?着替えもないよ?






 朝、日の出とともに目を覚ます。


「ふぁ〜」


 この世界でも太陽は地球の頃と同じらしい。


「体痛い…」


 昨日は結局自然乾燥に任せて元々着てた服を布団代わりに地べたに寝たからお世辞にもいい睡眠が取れたとは言い難い。けどまぁ、子供の体だからか少し体をほぐせば意外となんとかなったんだけど…っと?


(怪し…)


 ラジオ体操もどきをして周囲の様子を確認してたら一冊の黒い本を見つけた。


 確かあんな物機能はなかったはず。つまり私が寝ている間に誰かが置いていったということ。


「仮にそうなら誰がなんのために?」


 普通の人がわざわざここにあの本を捨てに来ることはないはずだ。というかそうであっても間違っても私の近くには捨てない。こんな何処に捨てに来るような物を知らん浮浪者に渡すわけがない。

 そもそも私の姿を見かけたら何かしらの対応を取る。だって幼女が一人裸で寝てるんだよ?普通心配するか攫うか距離とるかするでしょ。


 そう考えれば…きっとあれは預言書だ。神様とかなんかそこらの人からのお手紙。


 ファンタジー的思考が多分に含まれてはいるけども、私がいきなりこの世界に転生したことからしてそんな感じの存在が介入しているのは確か。そして私はそんな存在となにか話した記憶はない。だからこそそこら辺の説明が書かれている。


「そんな気がする」


 と、いうことで思い切って黒い本を手にとってみる。


(触っても…問題なし。呪いの本ではないか)


 表紙も背表紙も、全てが黒一色の本。サイズ感はA5用紙くらいだ。


(開けるか)


 ゆっくりとページを破いたりしないように開くと、そこには墨塗りされたように黒一色のページだった。試しに他のページを見ても同様に黒一色。


(何これ怖っ…)


 総じてよくわからない本。もともとここらへんに捨てられてたわけだしこういうこともあるかとそこらに投げ捨てる。


「予想が外れたなぁ…」 


 てっきり私はこの世界の説明が書かれてると思ってたのに。


「って…うん?」


 背後でなにか光り輝いている気配。振り返ってみれば謎の黒い本が輝きを放ちながら宙に浮かんでいる。


「えっ!?これってまさか!?」


 〈異端者確認 神器の一時使用権を譲渡します〉


「当たりだ!?」


 神様も意地悪だ。下げてから上げるなんて!

 でもこれ私神器を投げ捨てたことになるよね?

 神罰とか落ちないかちょっと怖い。


 〈旧個体名『東嘉弥真(びがしかやま)候廣(ときひろ)』 現個体名『シオン・セレスティン』に神々からの伝達があります〉


 なるほど凄い。この世界での私の名前はシオン・セレスティンらしい。私はシオン、私はシオン。よし、覚えた。


「じゃあ、開くか…」


 神様からの伝達。一体何が書かれてるのやら。ありがちなのはこの世界に呼んだ理由とか、か。やっぱりよくある神様の手違いだったりするのかな。…っと。


『今回の件、ごめんね!この世界に刺激を取り入れようと思ったら失敗しちゃった!これだけじゃわかんないだろうから説明するね。


 私、人類は種の存続の危機にこそ粘り強さを見せ爆発的な進化を行うって考えたの。だから人類種の存続の危機を起こそうと思って…でもこの世界にはそんな存在はいるにはいるけど、私たちにも制御できないから新しく生み出そうと思ったの!


 だけどね、めっちゃ強い存在を生み出すのはつかれるから、既に強い奴を異世界から呼ぼうと考えたの!それでどんなの呼ぼうかって考えて、この世界では勇者や魔王がすごい強いから他世界の勇者、魔王を呼ぼうと思って、人類に敵対してもらうために魔王を探したんだけどぉ…。


 脳内が魔王のことでいっぱいだったあなたを、天性の魔王だと勘違いして呼び寄せちゃった!


 実際はただの一般人だったから世界間転移の際に肉体が耐えきれず死んじゃってね。流石に悪いから新しい肉体を与えようと思ったんだけど、詳細に肉体の設定を決めるのは手間だし、結構消耗するからランダムで決めて創ったんだ。ランダムだと、結果が何でもかかるコストが一緒で楽だからさ。ついでに面倒…面白そうだったからスポーン地点もランダムで決めたら、なんと誰も近寄らないかつての勇者と魔王の決戦場所だったの。これってやっぱり君が天性の魔王ってことだよね!


 あっそうそう、あと一枚ページをめくると君のランダム生成の結果が乗ってるから確認してね!ものすごいあたり引いたと思うから、これから魔王として頑張って!あと、間違えちゃってごめんね!』


「なんだこの女神」


 いや、女神じゃないかもだけどこういうのは大抵女神と相場が決まっているし文体的にも女神で合ってるとは思う。


「この女神、邪悪過ぎる。もはや邪神の類だろ」


 人類って絶滅寸前の時こそ輝くよね。あ、じゃあ絶滅寸前にしてみよ。うーんでも都合いいのいないなぁ…あっ!異世界から持ってこよ!これはいい考えだ!


 なんて思考してる時点でまずまともな善神じゃない。


 そしてその後も間違えて俺を呼び寄せて殺しちゃって、仕方ないから雑に(ランダムで)生き返らせて、その結果意外と都合良くなったから頑張ってね!


 うん。やっぱ邪神だわ。普通に生き返らせない上に人の寄り付かない場所にスポーンさせてるの邪悪過ぎる。


「まぁいいか。うまく人間に転生できたみたいだし。無事に?生き残ってるし。…まぁこれから死ぬかもだけど」


 それでも性別と年齢が変わってるくらいは誤差として受け入れよう。私的にも魔王にはなりたいしね。


 そんな事を思いながらページをめくって、思わず固まった。


(俺、人間になれてねぇ!?)

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