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65 新たなる旅立ち

「ハイ、虎吉、ルナちゃん!」


「よう、主人」


「マスター、こんにちは!」


 戦いが終わって、ここからこの世界が始まったノム国のギルドハウスに戻った。

 大きな戦いが終わって、何だか落ち着きたくなった。

 それでどこで落ち着こうかと考えたら、このノム国でゆっくりしたいという思いが一番強かった。


 初めて来たのが嘘のように某は中に入ると何の気なしに座り、女童

が運んできた酒を何の気なしに飲んだ。


「ユーはすっかり世界を救った勇者だね。世界中が君の話で持ちきりだよ」


「ほんと、道を歩くとみんなこっちを見るんですよ。一緒に歩いているわたしは恥ずかしくなっちゃって・・・」


 某がイズルに勝ったことで大変な事になってしまった。


 アカツキ帝国の帝王が世界を破滅に導こうとした。

 その帝王を倒し、世界を平和に導いた勇者がいた。


 それは異世界からやって来た1人の武士だと。


「馬鹿を申すな。某はただ4代目と戦っただけだ」


 事実そうだ。


 某はイズルと戦いイズルを負かした。

 イズルは約束を守り軍に戦を止めさせアカツキ帝国を消滅させた。それによって戦争は終わり、世界は新しい時代へと入った。


 と言えば聞こえは良いが。


「冒険者教会もたいへんだったんだろ?」


「イエーッス、大変だったよ~」


 アカツキ帝国が消滅すると冒険者協会フェルディナンド・ガマは支援してくれる存在を失った。

 どうするかと協会で協議した結果、協会はホリー国と交渉した。

 そしてホリー国の支援のもと存続することとなった。

 

 世界を治めていた存在が消え、この世界はさらにいくつもの勢力に分裂した。

 ロード商人もそれによって力を失った。

 聞いた話によればロード商人は帝国の力で、小国程度の王なら逆に自分たちが王に命令していたとか。


 彼らはアカツキ帝国という巨大な力があったからこそ自身も力を持てた。


 そんな帝国なき世界をホリー国が、己が提唱するやり方でお互い協力しながら世界を動かそうと1つにまとめようとしている。

 それにしたがってホリー国のような国に作り替える国もある。

 一方でアカツキ帝国がなくなっても従来通りのままでいく国もある。


 ホリー国に反対しようと結束する勢力まで現れているという。


 世界から大きな存在が消えると某ではどうにもならぬ問題が吹き出してきた。


「でもわたしにとって虎吉さまは勇者さまです!」


「う~ん、素直に受け取れん」


「だって、あの4代目と一騎打ちを挑んで打ち負かしたおかげで戦争が早く終わったんですよ。あれが無かったら戦争はいつまで続いていたか分かりません!」


 硬くなっている虎吉を解きほぐすかのようにルナは虎吉の肩を揺すった。


「セレーネ国がホリー国の支援を得て再建の道を歩けるのも虎吉さまがホリー国にお願いしてくれたからです。わたし・・・」


 ルナが虎吉に耳打ちしてきた。

 その言葉に虎吉は、驚いた。


「あはは、虎吉さま驚いた~」


「ルナちゃん~、虎吉になんて言ったの?」


 それを見てルナが大笑いし、マネージャーもつられて大笑いした。


「お、虎吉」


「虎吉くん」


「お、ハンツどのと武蔵も来たか」


 光明を作ってくれたハンツどのが現れた。ハンツどのには大変世話になった。

 もしハンツどのがいなければ某はこの最強の太刀でイズルと戦えなかったであろう。


 武蔵どのはホリー国で出会っていらいだ。

 後ろにレミどのもいる。


「レミさん、お久しぶり!」


「ルナさん、お元気でしたか?」


「もう、元気!でも大変だったのよ。わたしの国潰されちゃったのよ!」


「聞きました。ひどい話です!それでセレーネ国はどうなるんです?」


「そこは・・・勇者さまのおかげで再建できます」


「まぁ・・・」


 2人してこちらを見ている。

 耳が赤くなる。


「武蔵どのだいぶ鍛えたようだな・・・」


「いや、虎吉くんに比べたら全然だよ」


 見てわかる。

 武蔵どのも修行を積んで強くなっている。


 聞いた話によると武蔵どのは、冒険者達のとある集まりの仲間になり、その仲間と共に情報を共有しあい依頼をこなしているらしい。


 武の力はそれほどではないが、それ故に仲間の情報を大切にしてうまく冒険者をやっているようだ。


「世界を救った勇者どのと一緒に酒をごちそうしよう」


 ハンツどのが持っていた『鉄の味』を卓に置いて蓋を開けた。


「ハンツどのも、そんなことを・・・」


 一体某はどれだけ、いつまで言われ続けるのだ。

 道を歩けば子供たちが武士の姿をした某を見て「勇者だ」と叫んで付いてくる。

 途中、面白いものが置いていた店でそれを見ていたら店の主人がうろたえて何度も頭を下げていた。


 戦で手柄を立てて有名になるのは良いが、これは有名になりすぎた。


「さっきアイネと出会ったぜ。ホリー国大使としてノム国の王と会談をするために、やって来たそうだ」


「アイネどのが、来ているのか?」


 アカツキ帝国が消えた後、『自由の風』も次へと動き出した。


 ジャック・ハラルは今、ホリー国の最年少の元老院となっている。ホリー国の子供達を育て、将来を委ねることの出来る優秀な大人をつくると張り切っているらしい。


 そしてアイネどのは、ホリー国の大使となった。

 大使として様々な国を駆け巡りホリー国と共に新しい世界作りに協力を要請しているらしい。


 ヘンリー・バートは海で華々しく散ろうとしたときハサルトの大群に助けられた。


 これは大変珍しいことだそうである。


 ハサルトは独りで海を泳ぎ、争いを嫌うそうだ。

 そのハサルトが大群となってしかも魚人を助けた。


 おそらくはオーシャンが仲間に頼んでいたのであろう。


「アイネどのは、4代目のことで何か言っていたか?」


「今は、ジャック、亡きロベルト、何よりも自分自身に約束した新しい世界を作るので忙しい。けど・・・もし仲直り出来るなら仲直りしたいと言っていた」


「そうか・・・」


 フウカが迎えに来たとき、イズルに「一緒に戻ろう」と言ったがイズルは拒否した。

 守りたかった帝国を守れなかったイズルに今、姉と母上に会う気などさらさらないだろう。


 だが、気になることにあの時、イズルはアイネどのが身につけていた笹竜胆の首飾りと同じものを首にぶら下げていた。


「で4代目はどうなったんだ?」


「暗黒大陸へ冒険に行った」


 その後、イズルは迎えに来たサハリと共に帝国の館を跡にした。


 そしてイズルは冒険者となった。


 神のいたずらかアカツキ帝国が消滅したのと入れ替えにとある情報が世界を駆け回った。


「いったいどういうことだろうね?なぜこのタイミングで行けるようになったんだろう?」


 主が酒を飲みながら不思議がっていた。


 分厚い雲に覆われ海が荒れて、今まで行くことが出来なかった暗黒大陸が突然晴れた。

 まるで我らを招き寄せているかのように晴れ渡っているらしい。


 イズルは依頼を受けて魔術師と共に暗黒大陸へと向かった。

 その依頼主はホリー国。

 魔術師はサハリどのだそうだ。


 依頼内容は「暗黒大陸にいるという賢者に会いに行き、こちらの世界と交流を結び、『とある存在』がこちらの世界に来ないように協力してもらう」。


 3千年前に書かれた古い書物によればその大陸には『賢者』と呼ばれる者がいるという。

 その者は新たなる世界を創造し、新たなる秩序をもたらすという。


 同時にその世界には恐ろしく危険な者もいるという。その者は世の中を意のままに動かし、我々はその者の意のままに操られるという。

 嘘か真か知らぬが、ホリー国も選りすぐりの冒険者達を暗黒大陸に向かわせるという。


 極めて危険な依頼につき、成功報酬は好きな国を1つ治める権利。


 その依頼がイズルにやって来た。

 と言うよりこの依頼はホリー国はもともとサハリどのに頼んでいた。 だがサハリどのはその依頼をイズルに渡した。


 イズルはもう一度帝国を復活できる望みを得たと意を決して依頼を受けたという。

 イズルはサハリどのと共に、出立したそうだ。


 おまけにその事に関してサハリどのは某にも伝えてきた。


 どういうことだ。


「虎吉さま、実は虎吉さまあてにサハリさまから依頼があるのです」


「え?」


「内容は同じです」


 そういうことか。


「僕もそこへ行こうと思っている」


「何、武蔵どのも行くのか!?」


「うん」


 初めて出会った時とは違う力強い眼で頷いた。


「かなり危険だとサハリどのは言っていたぞ」


「うん、でもみんなが言うにはその大陸に未来があるかもしれない。それが良いものか悪いものかわからないけど、行かなければいけないって言ってるし。それで僕も行こうって決めたんだ。・・・レミさんもついてるし」


 武蔵どのの側でレミどのが微笑んだ。

 やはり強くなっている。


「虎吉さま、どうします?」


「その依頼を受けるに当たって条件がある」


「どんな?」


「ルナどのが某の側にいてくれること」


「はい!」


 ルナどのが飛びっきりの笑顔で頷いてくれた。


 某は、自分の領地が欲しかった。


 その願いは消えた。


 と言いたいが、実は消えることなくまだ心の隅に残ったままだ。


 とりあえずはこの世界で最初に始めた冒険者とやらを続けるとしよう。

ここまで呼んでくれた方。


本当にありがとうございます。


拙い文章で、読みにくい部分が多々あったと思います。

そんな私の作品を、最後まで読んでくれた事に深く感謝したします。



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