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59 裏切り者たち

「動くなよ」


 1匹のスケイブンがゆっくりと現れた。

 それに続いて10匹武装したスケイブンがジャックとアイネを取り囲んだ。


「ジャック・ハラル。アカツキ帝国への反逆の罪で、逮捕する」


 最後に、1人の老人が現れた。


 アラン卿である。


「反逆者?ここは帝国じゃないぞ。ここはホリー国だ。それに戦争を仕掛けたのは帝国だろう!もう帝国に尻尾を振るとは、恥を知れ!」


「どのみちお前達は反逆者だ。私は今のうちに反逆者を狩って帝国に恩を売る。来たるべき未来の現実のためだ」


「きさま!」


「おっと動くな。あれを見ろ」


 スケイブンの隊長が指さす方を見た。


「アイネさん!」


 アイネの後ろから弓を構えた別のスケイブンが現れた。

 鏃はアイネの頭を狙っていた。


「お前が変なことをしたら女の頭に矢が串刺しになるぜ、チュ、チュ、チュ」


「きさま・・・ん・・・ぐ!」


 アラン卿がジャックの膝を蹴った。

 ジャックは膝をついてしまった。


「恥を知れだと?・・・お前こそ現実逃避を恥じろ!」


 アラン卿は手を動かせないジャックを蹴り倒し、何度も何度も蹴った。


「チュ、チュ、チュ、さぁて・・・」


 スケイブンの隊長はアイネに近づいた。

 アイネの顔をじっくりと見た。


 アイネが嫌な顔をした。


「ほぉ・・・こいつは上玉だ。おいお前ら!このまま帝国に渡すか?」


 隊長が皆に聞いた。


「「「隊長、それはもったいないですぜ!」」」


 皆、反対した。


「というわけだ・・・」


 隊長が舌なめずりした。

 アイネが顔を背ける。


「顔を背けたって無駄だ。お前に自由はない。俺達がお前を自由に扱う」


 その言葉にアイネが向き直った。


「ふざけるな・・・私を誰だと?」


 アイネが自分を辱めようとするケダモノをにらみつけた。


「女王様だとでも言いたいのか?チュ、チュ、チュ・・・」


 スケイブン達は笑った。


 ガッ!


 その隙を突いた。

 矢で自分を狙っていたスケイブンを自分専用に作った杖の先にあった石突きで倒し、隊長から距離を取った。


「私は初代帝王の血をひくカリンだ!辱める気なら、道連れにして死んでやる!」


 石突きを隊長に向けた状態で呪文を唱えようとした。


「おい!」


 隊長は部下に命じると、部下は鎖を引っ張ってあるモンスターを引っ張り出した。

 それは獰猛な牙を生やした馬だった。

 

 ディオメーデースの人食い馬。


「おい、首だけ残して身体は餌にしろ」


「グォオオオオ」


 ディオメーデースは大口を開けてアイネに飛びかかろうとした。


「【吹っ飛び(ブロウアウェイ)】」


 突然どこからか声がした。

 そしてディオメーデースとスケイブン達は吹っ飛ばされた。


「女を辱めようなんて最低のやつらだね」


 現れたのはサハリだった。


「てぇてめ・・・ディオメーデースやれ!」


 隊長が叫ぶとディオメーデースが牙をむいて突進した。

 サハリが杖をかざすとディオメーデースは宙に浮いた。そして勢いよく地面に叩きつけられた。


「あたしの餌になりたいのかい?」


 右手に光りの球を出現させた。

 強力な魔力を込めて。


 ディオメーデースは一目散に逃げていった。


「あんた達、周りを見な」


 いつの間にかスケイブン達は囲まれていた。囲っていたのは騎士達だった。


「あ・・・悪かった!消えるよ!」


 隊長は必死に謝った。

 サハリが杖を隊長に向けると隊長はまたまた吹っ飛んだ。


「許さないよ。女に対してやっちゃいけないことを平気でするような奴は・・・」


 サハリが呪文を唱えた。

 スケイブンの傭兵は手が後ろに回って動けなくなった。


「あんた達こいつらをとっ捕まえて素っ裸にして川に放り込んじまいな」


 後ろにいた数名の騎士がスケイブンの傭兵を連行した。


「アイネさん、大丈夫ですか?」


 ジャックはアイネに駆け寄った。


「はい、大丈夫です。ジャックさんこそ、大丈夫ですか?」


「貴様、裏切ったのか!?」


 アランが、自分を拘束した騎士達の後ろから現れた、フェリシアを見て叫んだ。


「ざんねん~違うわよ。あたしは初めっからあんたの裏切りを、阻止しようとしていたのよ」


 間抜け面のアランを笑いながら告白した。


「あたしを信じて、ぺらぺらしゃべってバカね。私は幼い頃、祖父が語っていた無き国の思い出の話を今でも覚えている。国の復興なんて興味ないけど・・・。でも一番嫌いなのはプライドのない男。そして逃げずに一生懸命努力している人の味方はしたい」


「感謝します、フェリシア様」


 ジャックは、フェリシアに感謝の言葉を述べた。


「ここにいるのは、祖父が遺した私兵、ラハビ騎士団。サハリ様も協力してくれる。一緒に戦うわ」


*       *       *


「アサヒ、カリン・・・ヒノ」


 アサヒ帝国領辺境の湖畔の邸宅に住む太后は湖畔を眺めていた。手に3つの産衣を持ち、彼女の瞼にはある光景を思い出していた。


 3人の小さな子供がこの湖畔で遊んでいた光景を思い出していた。


「太后様、隊長がお戻りになられました」


 メイドがやって来た。

 その後ろに太后親衛隊隊隊長、ユウカが立っていた。


「間違いございません。黒幕は宰相です!」


 ユウカは太后に近づくと、ある調査の結果を報告した。


「なんてこと、あの子が信じていた者が裏切り者だったなんて」


 その報告を聞いて、太后は深く落ち込んだ。


 最近起きている数々の事件。


 アートリアに現れたリザードマンの盗賊達。

 ホリー国で起きた連続殺人事件。

 ハサルト海で起きた海賊事件。


 不可解を感じていた彼女は自分がもっとも信頼するユウカに調査を頼んだ。


 ユウカはサハリと協力して調査した結果、それらは宰相ベルガが帝国の威信を低下させ、4代目帝王を狂った道へと誘い、4代目が死んだ後、自分が世界を治めようとしていたことが分かった。


「宰相はマカミ様によって倒されたそうです。ですが、すでに『月の清水』を飲んだ4代目がジン国との戦いの時、カリン様とお会いになったという報告が・・・」


「カリン、カリンは無事なのですか?」


 女主人が動揺しながら尋ねた。

 手が3つの産衣を強くつかんで震えていた。


「はい、大魔術師サハリから報告を受けました」


 その報告に女主人は小さな安堵を得た。

 しかし大きな不安は消えない。


「宰相は『月の清水』の危険を知っております。おそらく、宰相はあの子を殺して自分が新たな帝王になる気だったのでしょう。100年私たちを欺いて!」


 帝国の妃として嫁いで初めて会ったときから彼は自分に対してとても丁寧に対応していた素晴らしい紳士だった。

 だからこそ自分が館を後にした時も彼に我が子を守るようお願いした。


 その男は裏切り者だった。


「如何なさいましょう。太后様?」


「ユウカ、あなたはその武士と出会った時、どのような印象でしたか?」


「わたくし以上に立派な武士でございます!」


「その武士に頼みましょう」


*       *       *


 40万の帝国軍が戦場に到着した。無数の竜胆の旗印が戦場を埋め尽くした。


「ほう大軍団だな・・・」


 指揮官のクロード大将はホリー国の軍勢を見て感想を述べた。


 全軍のうち、10万は港町オーシャンバート近海に船団をようして布陣していた。 

 バートは帝国に対し、独自の交渉を要求した。


 だが、その要求はかなわないままバートは戦争に巻き込まれた。このときバートは帝国との約束を破りホリー国につき、帝国艦隊に奇襲をかけた。


 自分の力など帝国艦隊の前では知れている。


 だが、帝国は間違っている。

 その間違いに従うのはもっと間違っている。


 故にバートはホリー国についた。


 帝国の艦隊の一部分は圧倒的戦力でバート艦隊及びホリー艦隊を牽制。その間本隊はホリー国の南にある小国ナーバル国の港街から本隊を進軍させた。


 ナーバル国の突然の裏切りにホリー国は大慌てでナーバル国へと軍を進めた。

 ホリー川ほどの大きさは無いが、それでもそれなりの幅はあるナーバル川でホリー国の部隊と対峙した。

 

 帝国側に複数のモンスターが確認できる。

 巨大な魔方陣で帝国お抱えの数名の上級召喚士に呼び寄せたモンスターだった。


 アラクネ、マンティコア・・・。


 攻撃力があり、気性のあらい手懐けるのが難しいモンスター達はイズルの覇気にすぐにおとなしく忠実になった。


「帝王様が来られました!」


 見張りの兵士が大声で叫んだ。

 イズルと100名の近衛兵が上空から降りてきた。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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