表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/65

44 古の王

「どこだここは?」


 光りが収まったとき我らは、とある場所に立っていた。

 大きな円形状の広場の周りに高い柱が何本も立ち、円形の真ん中には龍が描かれていた。


 遠くの方にも雲は浮かんでいて建物が見えていた。


「これはグローリ国の都の中心地にあったとされる・・・『竜の広場』!」


「誠か?」


「間違いありません、この広場はわたしが小さい頃、本で見た絵と全く同じです!」


 ルナどのが我らが立っている円形状の広場を見渡して断言した。


「かつて、グローリはこの広場で龍に捧げ物をして、共に国の繁栄を祝う祭りを行っていたと聞きます」


「龍が僕たちをここまで運んだんだ」


 童男がつぶやいた。


「龍の奴、我らをここに飛ばしてどうする気だ?」


 辺りを見回した。

 この都に住んでいたであろう人々など一人もいないのは当たり前だが龍すらいなかった。


「ところでルナどの。今某にかけているのは、まさか・・・」


「はい【覚醒アウェイクニング】です」


「なんと・・・・・・」


 ミハエルを思い出した。未熟な身体でかけたためにおかしくなって死んでしまった。


 真に鍛え上げられた身体を持った者のみが許される最上の支援魔術。

 身体にかつて無い力が前進へと駆け巡った。そして全く違和感を感じない。

 マカミどのにしっかりと鍛えてもらったおかげでミハエルのよういにはならない。


 某は強くなった。


「虎吉さま、わたしも強くなりました。アルブティガーと違い今度は一緒に戦いましょう」


「うむ!」


「勇敢な戦士よ。お願いがある」


 そう言いながら童男がフードを脱いだ。

 童男は頭に何やら周りに爪のような飾りがついた輪っかのようなものを載せていた。


「お主、その頭に・・・」


「おお、そこのあなた!」


「な、なんだ!?」


 今度はよくわからん中年の男が現れ、某にしがみついた。

 緑の綺麗な衣服を着て、頭に童男とは別の宝石がたくさんついた何かを乗せている身分の高そうな男だった。


「あなたはとてもお強い方とお見受けします。わたしはあなたのような勇者を待っておりました!」


 必死にしがみついて訳の分からぬ事をもうしていた。


「離れろ!」


 しがみつく男を引き剥がした。


「お主は何者だ?」


「わたしはこの国の、最後の王です」


「何、最後の王!?」


 男をよく見た。

 顔はどこにでもいそうな普通の顔だ。

 だが確かに高貴な姿をしているので王なのであろう。


「お願いです勇者様。我らの無念を晴らしてください」


「無念?」


「我らの国の繁栄と歴史は龍達に消されたのです!あの神殿に、龍達がいます。退治して我らの無念を晴らしてください!」


「あの神殿?」


 古の王が我らが目指す方を指さした。

 どうやらあの神殿には童男とこの者の何かがあるようだ。


「あそこに行けば、我らの歴史を取り戻す力があります。それを朕は手に入れたいのです!」


 古の王は懇願しているが、そもそもこの王は何故目の前にいる。

 この王国は5000ネン前に消滅したはずだ。


「ルナどの分かるか?」


 ルナどのに小声で聞いてみた。


「もしかしたら、龍がわたしたちを5000ネン前に飛ばしたのか。でもそれならば5000ネン前に生きていた国民だっているはずです」


「・・・とにかく行ってみるか」


 このまま何もしないわけにはいかないので、あの神殿に行くことにした。

 神殿がある雲まで飛び石の雲が続いていた。我らはその雲を飛びながら渡っていった。


「あと一歩か・・・」


 神殿に近づくと何かを感じた。

 某は太刀を握った。


「!?」


 突然周りが赤々と燃えだした。


 ドオオオン。


 あと一歩のところで、巨大な魔物に阻まれた。


「グルルルル・・・」


 翼が生えた大きなトカゲだ。

 真っ黒な身体に真っ白に光る眼から怒りを感じた。


「竜だ」


 童男がつぶやいた。


「龍だと?これが?」


 竜から熱い空気が流れてくる。

 竜の大きな翼が音と共に、熱波を飛ばして我らを威圧している。


「来るぞ!」


 童の某が叫ぶと同時に竜が大口を開けて某を食おうとした。

 躱しながら太刀を抜いて斬った。

 竜が飛んだ。


 上から来るようだ。

 竜が急降下した。


「むん!」


 すさまじい速さで迫り大口を開けた。


「あまいわ!」


 さらにその奥で爪を立てているのが見えた。

 口と爪を躱し、竜の脚を斬った。


 ザッ!


 竜はさらに尻尾で一撃を入れようとした。


 全て躱した。


 竜は上空を舞っていた。


「降りてこい!」


 竜に叫んだ。

 竜は口を開いた。

 口の中から煙りが出てきた。


「ダン!」


 竜の口から火の塊が飛び出した。

 その火の塊を躱した。

 火の塊は雲に当たるとその周辺を燃やした。


「あれは【竜のザブレスオブァドラゴン】。自分の息を固めて体内で燃やして吐き出してます」


 ルナどのが教えてくれた。


「ダン!」


 竜が続けて【竜のザブレスオブァドラゴン】を打ち出した。


「・・・くそ!」


 【竜のザブレスオブァドラゴン】はかろうじて躱している。

 だが、あの高速で飛び回る龍を太刀で斬るのは無理だ。

 

 弓を持ってしてもあの巨体にして軽々と飛び回る様子は射貫くのは難しいだろう。


「何とかしてください!」


 その後ろで古の王が叫んでいる。


「ダン!」


 竜が打ち続ける。


「武士は戦士なのでしょう?お願いします!」


「うるせぇな、なんでもかんでも簡単にすまねぇんだよ!」


 竜よりも古の王がやかましかった。


「・・・・・・」


 童男が虎吉と龍の戦いを見ながら懐に隠していたあるものを見た。

 それは鍵だった。


 童男が鍵を強く握った。


「虎吉さん。僕を神殿まで連れて行ってください!」


 童男が叫んだ。


 虎吉の瞳が、童男の瞳が合った。


「・・・あいわかった・・・」


 ブゥオオオ!


 竜が某の周りを炎で囲んでいく。


 竜が【竜のザブレスオブァドラゴン】を吐くのを冷静に見た。


 三呼吸くらいの間がある。

 一呼吸すると瞬時に胸を膨らまして炎を吐く。

 そして某が太刀で斬りかかろうとするとその瞬間を狙って吐いている。

 マカミどのが竜と戦うにあたって言っていた。


 「竜は炎を吐くが絶対に臆するな。アルブティガーを倒せる実力とその天狗の刀があればあの炎は打ち返せる」


 某は太刀を鞘に収めた。

 【覚醒アウェイクニング】の力が全身を駆け巡る。


 竜の全身を炎が包む。

竜が口を開く。


 ダン!


 某は飛んだ。

 【覚醒アウェイクニング】の力で竜のもとまで一気に飛んだ。


 竜が吐いた瞬間、太刀を抜いた。


 バン!


 炎弾を真っ二つに切り、竜の額に一撃を入れた。

 竜のおでこから血が流れ出した。


 竜が後ずさりした。


「とどめだ!」


 某は再び跳躍しようとした。


 バサァァァァァァ。


 竜が翼を広げると大空へと羽ばたきどこかへ飛んでいった。


「逃げたか?」


「いえ、戻ってきます・・・仲間を連れて」

最後までお読みいただきありがとうございます。


下にある☆☆☆☆☆から、作品への評価お願いいたします。

星1つなど、正直な感想でも構いません。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ