34 意外な援軍
「はっ小魚が!」
バートがアクアキラーに突進した。
アクアキラーが口を開けた。
バートの刃に無数の水滴が表れ、その水滴が刃を覆った。
「喰うのはお前じゃ無くて俺だ!」
バートの【鮫ノ刃】が大口を開けたアクアキラーを上顎から背中にかけて切り刻んだ。
アクアキラーは黒い斑紋がついた素石へと変わった。
某も達を構えた。
1匹のアクアキラーが襲ってきた。
ザス!
アクアキラーの攻撃を躱して、反対に太刀で頭部を刺した。アクアキラーは暴れたが、某はその傷口を広げた。
アクアキラーは青い素石へと変わった。
「俺の仲間はまだまだいるぞ!」
キッドの声と共に20匹近くのアクアキラーがいっせいに某を襲った。
「キッド!」
某はキッドを捕まえようとキッドに向かって泳いだ。
だがその道をアクアキラーが塞いだ。
「じゃまだ魚どもら!」
アクアキラーの攻撃を躱しまくり斬った。
ルナどのを助けたいと必死だった。
だが、アクアキラーは狂ったかのように我らの周りを泳ぎ、四方八方から攻撃してきた。
「・・・くそ!」
絶え間ないアクアキラーどもらの攻撃に体力が落ちてきた。
キッドが余裕の笑みを浮かべた。
「何がおかしい!」
ルナどのを助けなければ。
ルナどのの約束を守らねば。
その思いとは裏腹に体力は落ちていく。
「!?」
不意を突かれた。
側面から別のアクアキラーが近づいていたのに気づかなかった。気づいた時にはアクアキラーの大口が某を飲み込もうとしていた。
ザン!
アクアキラーの巨体が真っ二つに切り裂かれた。
「!?」
現れたのは4代目帝王だった。
黄金の覇気を放って海中に現れた。
4代目はキッドに最強の太刀、暁を向けた。
「・・・・・・」
キッドの表情が変わった。そしてすぐに周りを泳いでいるアクアキラーに命令した。
アクアキラーはいっせいにイズルを襲った。
ザン、ザン、ザン、ザン、ザン、ザン!
イズルの【覚醒】の力で振るう暁の刃がアクアキラー達を切り刻んでいった。
イズルが覇気を最大限にしてアクアキラー達を睨んだ。
アクアキラーは恐れをなしたのか距離を取ってイズルを襲うとしなかった。
「このやろう!」
キッドが刃を振り、覇気を飛ばした。
だが、その覇気はイズルの黄金の覇気の前に泡になって消えた。
キッドが逃げ出した。
(ルナを返せ!)
某は追った。
キッドは魔機雷が浮かぶ船の残骸へ逃げ込んだ。
ゴオオオ。
残骸の中の一艘の船が浮かび上がった。
そこにキッドが乗っていた。
某は船尾を掴んだ。
船は巨大な水流を立てて海面に浮かんだ。
よじ登って甲板に上がった。
「来た来た・・・」
ブラック・キッドが立っていた。
「逃げやがってこのやろう・・・」
逃げることは兵法の上では卑怯ではない。
「お前の女だ・・・」
だが腹が立つ。
キッドが縄を引っ張った。
それに引っ張られるかのようにルナどのが現れた。
猿ぐつわをかませられ、縄で縛られていた。
それを見た瞬間、感情がわき上がった。
「弟を殺しやがった、報いをうけさせてやる」
勝手なことを言いやがって。
身体に力が入る。
一呼吸した。
「怒りの心に怒りで会わせるのは小物の兵法」
師匠が言っていた。
一呼吸して身体の力みを抜いた。
「某を殺したいのだろう?その者は某ではないぞ」
「はっはっはっ!」
笑ってやがる。
まるで、罠にかかった獲物をゆっくりと料理して食べてやるかのように、長い首をゆらゆら揺らしながら、笑ってやがる。
「これから2人まとめて死ぬんだよ!」
キッドが縛られたルナどのを持ち上げた。
そして海に投げ入れた。
「ルナ!」
某は海に飛び込み、必死に泳ぎルナどのを掴んだ。
ドオン!
魔機雷が爆発した。
爆発の中、ルナどのを必死に抱きしめた。
(くそ!)
だが魚人に変化していないルナどのは水の中で苦しんでいた。
早く海面に上がらなければならない。
だが、魔機雷の爆発が海面へ上がろうとするのを邪魔していた。
(・・・へび?)
一瞬とてつもなく大きな赤い蛇に見えた。
だが、それは赤い尻尾を生やした宝石のように光る大きなウミガメだった。
さらにその後ろから見たことのある大きな魔物がついていた。
(龍神だ)
鱗に覆われた身体を持つ水を司る龍神だ。この巨大なウミガメは龍神を率いているのか。
そのハサルトと龍神達が我らの周りを泳いだ。蒼い光が某とルナどのを包んだ。
「・・・・・・」
ハサルトと目が合った。
なんと穏やかで、深い青色をした目だ。
心地よい光に包まれ我らが海の底へと落ちていった。
「どこだここは?」
そこは透き通った琥珀色の水面だった。
岩に囲まれた、砂浜の上に心地よい蒼い空が見えていた。
「オーシャンが助けてくれたか!」
「バートどの?」
バートどのが立っていた。砂浜に打ち上げられたシークイーンと共にバートどのもそこにいた。
「ルナを助けたか?」
「ああ・・・」
某はルナどののさるぐつわを外し、縄を解いた。
「!?」
ルナどのが震えながら某に抱きつき某の胸に顔を埋めた。
それほど怖い思いをしたのであろう。
「・・・・・・」
何と言って良いのか分からぬ。
某はルナどのを傷つけてしまったのか。
ずっと、ほったらかしにして、こんな危険な目に遭わせてしまった。
「・・・怪我をしておるのか?」
顔を上げたルナどのの頬にあざが出来ていた。
「すまぬ!某がルナどのの身をおろそかにしたばかりに」
「いえ、少し痛い思いをしただけなので。助けてくれてありがとうございます」
ルナどのは笑顔で返事をしてくれた。
ルナどのの笑顔を見て少し心が落ち着いた。
戦いの最中だ。
油断はしてはならぬ。
まだ、ルナどのを安全な場所に避難させていない。
某は太刀を握り直した。
「見ろ」
バートが指さした。
その方向に破壊されたキッドの船があった。
その壊れた船の側でキッドがいた。
「キッド、ここがどこだか知ってるのか!?」
「もちろん知ってるぜ」
バートが持っていた同じ筒の武器をキッドがバートに向けた。
「ハサルトの巣だ。ハサルトは俺が飼育する。そうすることによって俺はハサルトの雫を絶えず手に入れる事が出来る・・・無限の富が手に入る!」
キッドは笑った。
笑いながら、キッドはバートが持っているのと同じ筒の武器をバートに向けていた。
「この能なしの若造。自分勝手な夢をほざいてそれ以外を見ちゃいねぇ!」
バートが怒る。
「お主、一騎打ちできるか?」
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