33 海の戦い
「最後尾のフラムに砲弾が撃ち込まれました!」
「なんだと!?」
「船長、フラムの後方に船が見えます!」
マストに上っていた一人の船員が叫んだ。
遠くの方から6隻のシップが見えた。
バートは遠眼鏡を使ってその船を確かめた。
「帆に、サメに巻き付いたウツボの絵が描かれていやがる。ブラック・キッドか!?おもしれえことしやがる」
襲った相手がキッドだとわかるとバートは怒りに燃え刀を抜いた。
バートが白い覇気を出した。
「戦闘。取舵150度!奴らを沈めろ!」
15隻のバート艦隊が敵前で大回頭した。
両者が一気に距離を詰めていった。
大砲とやらが一斉に火を噴いた。
蒙古が戦で投げつけた『てつはう』よりすごいものが飛んでいった。
ブラック・キッドの艦隊も砲撃した。
旗艦シークイーンに砲弾が当たった。
バートどのは某が全く知らない戦いを海で繰り広げた。
「ガキ共、そんなに海の餌になりたいか!」
シークイーンが火を吹いた。
続いて後ろにいる艦隊からもキッドの艦隊の一隻に集中砲撃を行った。
それによってその敵の船は傾いた。
バキィ!
「バートどの!マストが折れたぞ!」
敵の砲弾がシークイーンのマストを一本へし折った。
「あぁ!?一本折れたくらいが何だ!」
バートどのは構うことなく部下に指示をだしている。
某はバートどのからいただいた望遠鏡で敵の船をのぞいた。
「あそこに、おまえの女はいない」
「わかるのか?」
「もし、あそこに女を乗せていたら攻撃せずに女を甲板に立たせて人質交渉するはずた。キッドはどこかに隠れている。あいつらを捕まえて吐かせてやる!」
バート艦隊の砲撃が敵の船に無数の穴を開けていった。
キッド艦隊はかなわないと思ったか向きを変えて逃げ出した。
「俺にけんかを売ってただですむと思うな!」
バートが追撃を命じた。
どぉん!
轟音がなった。
遙か先に船が3隻見えた。その船は逃げるブラックキッドの船めがけて砲撃を開始した。
「俺の艦隊だ。キッドを探したと見せかけて、半分はこっそり戻して遠くから着いてこさせていた。あいつの考えることはお見通しだ」
バート艦隊に包囲されたキッドの艦隊は無数の砲弾を撃ち込まれ、どんどん傾いていった。
もはや敵は逃げられない。
バート艦隊が傾いて身動きできない船に近づき、接触した。
「行くぞお前ら!」
バートが仲間を率いて敵の船に乗り込んだ。
某はサハリどのからいただいた『記憶の種』を一粒飲んだ。
ルナどのに魔術をかけられることなく身体が覚えていた【疾風迅雷】が呼び起こされた。
バートどのに負けじと続いた。
敵の1人が刀を振った。
軽々と躱して斬った。
船の上の戦いは蒙古の戦の時の夜討ちで知っている。
明るい分むしろこちらの方が戦いやすい。
「全員刺身にしてやる!」
バートが、大声を上げて刀を振りまくり、その刃から無数の【鮫ノ刃】の刃が敵を滅多斬りにした。
「逃げた!?」
敵わんと思った敵が海の中へ飛び込んだ。
「奴を追うぞ!」
バートどのが言った。
「あいつらが逃げる先にキッドがいやがる」
「しかし海の中だぞどうやって?」
相手は海の中へ潜ってしまった。
人間が海の中を潜って、追うなど不可能だ。
「できる。まんぼ!」
「は、はい!」
ぽっちゃりして、めがねとやらををかけた一人の魚人が現れた。
「こいつは、魔術師だ。こいつに変化魔術をかけてもらえ」
「この者に?」
「は、はい!僕は、魔術師・・・い、いえただいま魔術師を目指して特訓中の・・・」
杖と本を持って、自信なさそうに立っていた。
「余計な話は良いから、早くせい!」
「はい!」
まんぼとかもうす魚人は急いで本を開いて、杖をかざし呪文を唱えた。
「【変身】!」
「・・・・・・」
何も感じない。
身体に何の変化も無い。
「もう一回!」
まんぼはもう一度呪文を唱えた。
某の身体に異変を感じた。
何かが変わった気がした。
「手を見てみろ。あと耳も触ってみろ」
バートどのに言われて手を見た。なんと某の指と指の間に水かきのようなものがついていた。
そして耳の後ろがぱっくり割れていた。
「お前は一時的に魚人になった。俺についてこい!」
バートどのが海に飛び込んだ。
「よし!」
海に飛び込んだ。
何の問題も無く息ができ、普通に泳ぐ以上に素早く泳ぐことができた。
確かに某は今、魚人になっていた。
「なんだこれは!?」
海の中に無数の船が海底に沈むことなく、海の中を浮かんでいた。
「ハサルトの海はな、まるで刻が止まったかのごとく、ゆっくりと流れている。ここで沈んだ船は皆、長い刻を経て朽ちていく」
「刻がとまるかのごとく?」
この船達がいつ頃からここに浮かんでいるか知らない。だが、この海は確かに刻が止まったかのごとく船を浮かべていた。
その中によくわからない大きくて黒い異様な玉がいくつも浮いていた。
「こ、これは魔機雷だ!」
バートどのが教えてくれた。
「魔機雷は多くの魔術師がこの巨大な弾に魔力を注入する。これに何かが触れると巨大な爆発を起こす強力な武器だ。未だにロード商人達がハサルトを捕獲するためにあちこちの海に沈めていやがるが、キッドのやろう・・・」
バートがこぶしを強く握りしめた。
「来たな、はっはっは」
目の前の船の残骸からブラック・キッドが現れた。それと同時にキッドの一味が周りを取り囲んだ。
「キッド・・・これが貴様の言う新しい海賊か?」
「おうよ。俺たちはこれでビジネスをやって新しい時代をつくるんだよ」
「ハサルトを商品にしようってのか!?ハサルトは俺たち魚人の大切な仲間だぞ!」
「仲間?もともと俺たちは何でもありの生き方をしていた・・・ブラック・キッド様がつくるあらたなる自由だ!」
キッドが高らかに宣言すると、キッドの一味が一斉にウツボがサメに巻き付いた旗を掲げた。
「自由だと~!?お前には無理だ!」
「いや、手に入れてみせる!」
キッド一味がいっせいに襲ってきた。
バートが水中で鮮やかに泳ぎ、刀を振るった。
某も太刀を抜き、魚人となった身体でキッドの一味を斬りまくった。
身体に少しの違和感を感じるが、『記憶の種』で某の身体が記憶しているルナどのの支援魔術の力がそれを補ってあまりある力を与えてくれた。
「バート!」
キッドの眼は異様に丸くなり大きな口を開けてギザギザの2本の刀に濃褐色の斑紋が付き、それを振り回した。
キッドが刃を間合いの外から振ると、歯のような覇気がバートを。襲った。
「若造、なんだその歯抜けは!」
バートは刃でキッドの覇気を吹き飛ばした。
ガッ!
すぐにキッドの刃が飛んできた。
だがバートはその刃を受け止めた。
バートの周りに泡が集まってきた。
その泡が白い覇気となり、黒い刃とバートを包み込んだ。
バートはキッドの刀を飛ばした。
「終わりだブラック・キッド。連れ去った女を出せば命は助けてやる!」
「ふっ」
キッドの不適な笑みを浮かべた。
「バートどの!?」
「!?」
バートどのの下から突如巨大な魔物が口を開けてバートどのを食らおうとした。
バートどのは間一髪避けた。
「アクアキラーか!」
それはサメの3倍はあろうかという大きなトカゲがサメのように泳いでいた。
10匹ほどのアクアキラーなる魔物が我らを取り囲んだ。
「俺の最高の相棒だよ・・・はははは!」
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