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28 帝王の強さ

「この森を飛んでいたとき、この竜が戦士の匂いを嗅いだ。魔術でこの森を隠すミストを払いのけたときお前がいた。名を名乗れ!」


 帝王と名乗るものがいきなり現れた。


「虎吉だ」


 某はその者に我が名を名乗った。


「そうか。我はアカツキ帝王4代目イズル!」


 この者が4代目帝王か。

 小柄で女みたいな綺麗な顔をしながら、威厳に満ちたその目はミハエルとは違う。

 自分が強者であることを無言で高らかに主張しているようだ。


 現に身体からミハエル以上の黄金の覇気があふれている。

 

 間違いない。

 帝王の身体はミハエルのような弱き身体などではない。


 帝王が太刀を抜いた。

 某も鞘を握った。


「これを見ろ!」


 帝王が持っていた朱塗りの太刀を某に見せた。その太刀は刃にも黄金の刃文が浮き出ていた。


「かつて100ネン前。初代帝王は異世界より現れ、この世界を治めた。これは初代帝王が四聖獣を倒し、作り上げた『最強ノ太刀』だ。そして今この太刀を俺が持っている!」


「それを言うために某に会いに来たのか?」


「いや、違う。一騎打ちだ!」


 一騎打ちだと。


 まずいな。


 ミハエルは己に【覚醒アウェイクニング】をかけたとき眼が真っ赤になり、気味悪く首を振っていた。

 だが、この帝王は眼は赤くなること無く冷静に某を見定めている。


 【覚醒アウェイクニング】に耐えられる屈強な身体を持っているこの者に某は勝機があるのか。


「おまえら手出しをするな!」


 イズルが上空にいる家来たちに言った。

 家来たちは降りてこずに上空で待機した。

 イズルはそれを確認すると太刀を置き、甲冑を脱いだ。


 ガッ!


「ぐっ!」


 帝王が一瞬にして間合いを詰め、帝王が右拳に反応できなかった。

 身体が帝王の速さについて行けず頭に衝撃が走った。


 帝王が数人に見える。


「今のは手加減だ!」


 帝王は余裕の表情で今度は右の拳を出そうとした。某は間合いを詰めて、組み伏せようとした。


「ぐっ!」


 帝王がおとりの右の拳から左の拳を飛ばした。

 これくらいの攻撃は予想して間合いを詰めたつもりだった。だが、捌くことができない。


 これで手加減だと。


 動きも、威力も抗することが出来ぬ。


「はぁはぁ・・・」


 額から血が流れる。


 これが帝王の強さか。


 たとえ今、【疾風迅雷ラピッドサンダーストーム】がかかっていても、とても太刀打ちできない。


「1つ答えろ!」


「何だ!」


「貴様は初代帝王と同じく『黄金の日輪』の時に現れし武士と聞いた。貴様は俺の敵になるのか味方になるのか?」


「某はルナどのに国を守って欲しいと連れてこられた。某が初代帝王と同じ『黄金の日輪』の時とやらに来た?」


「ルナ、どこの国だ?」


「セレーネ国だ」


「セレーネ国だと・・・」


 帝王がルナどのの国を聞いて少し考え込んだ。


「セレーネ国は我が帝国に忠誠を誓っている。お前は俺の味方か?」


 ルナどのの国は帝国に忠誠を誓っているのか。それはルナどのの国の王は帝国と主従関係を結んでいると言うことなのか。


「某はそこらへんは、よく知らぬ。従ってお主は某の鎌倉殿かどうかも知らぬ」


「知らぬ?・・・まあいい。だがこれだけははっきりさせる。初代帝王に最も近い武士はお前ではなく俺だ!」


 帝王が次の攻撃を出そうとしている。

 その攻撃をどうする。


 止めよう。

 師匠が言っていた。


 「勝利を絶対欲しいと思うとき、必死になって考える。ところが、考えすぎて動きが止まり負けることがある」と。


 某はただ構えた。


 帝王が拳を飛ばした。


「【疾風迅雷ラピッドサンダーストーム】!」


 ルナどのの声が聞こえた。


 その瞬間、今まで以上の身体の感覚が研ぎ澄まされたのを感じた。


 バン!


 ポイ達に鍛えられた反射神経が反応した。帝王の拳を躱し、手首を掴んだ。

 

 帝王が鳩尾に蹴りを入れようとした。

 それを脚で封じた。


「この!」


 帝王が某を投げた。

 放たれた時、黄金の覇気が弧を描くように走っていった。


 帝王は信じられない顔をしていた。


 後ろにルナどのが立っていた。

 サハリどのに鍛えれたのかルナどのの杖にある魔石が今まで以上に強い輝きを放ちルナどのを覆っていた。


「面白い!」


 帝王の覇気の強さが増した。広範囲に黄金の覇気が飛び周り、木々を揺らした。

 その覇気が某に痛みを与えるが、動きを止められるほど痛みを感じない。


 帝王が拳を飛ばす。


 ダン!


 某はそれを防ぎ、帝王の懐に入った。

 先ほどよりか帝王の動きが見える。まるで己が別人になったかのような強さを感じる。

 ルナどのの支援魔術が明らかに強くなっている。これで先ほどの感覚がつかめれば、帝王と互角に戦えるが。


 ガッ!


 帝王を今一度組み伏せようとしたが、帝王の肘打ちにより後退した。

 額の傷口が広がった。


「【風壁ウィンドウォール】!」


 サハリどのの声がした。

 それに続いて、某と帝王との間に風の壁が現れた。


「驚いたね。初代帝王のみが耐えられる【覚醒アウェイクニング】に耐えられる者が再び現れるとは」


 若い姿のサハリが帝王と対面した。


「大魔術師サハリか?」


 イズルがサハリに訪ねた。


「そうだよ。あんたが4代目だね」


「邪魔をしに来たのか?」


「邪魔をしてるのはあんたさ」


 サハリが防御魔術【風壁ウィンドウォール】を発動した。

 それによってイズルは風の壁に囲まれた。上空で見ていた衛士はイズルを助けようと武器を構えた。


 ドオオン!

 

 周りのパイリウムが一斉に揺れるとそこから無数の風がおき、衛士達も風の壁に阻まれた。


「あたしは今、調和魔術でこの森の力と一体になっているのさ。あんたらは黙ってみているんだね」


「サミング、イブルモール!」


 衛士の一人が叫んだ。

 土が大きく盛り上がると、中から大きな爪を持った巨大なモンスターが出現した。


「ふん、そりゃ帝王の衛士の中には上級召喚士がいるだろうね。だがね・・・未熟な上級者だね」


 サハリはイブルモールを見て余裕だった。


「サミング、イーミー!」


 サハリが叫ぶと、大空から聖獣イーミーが飛んできた。

 イーミーはイブルモールの首根っこを咥えると一瞬にしてイブルモールの首をへし折った。


「あたしは、魔術はおろか召喚士としてもあんたらより上なんだよ。初代帝王を支えた力を舐めるんじゃないよ!」


 サハリが上空にいる召喚士に不適な笑みを向けた。

 召喚士は奥歯をかみしめた。


「グゥオオオ!」


 イーミーが帝王の前に立ちはだかり、咆哮をあげた。それはまるで虎吉を守るかのようだった。


「帝王様、今日のところはどうかお引き取りを」


 サハリが丁寧にイズルにお願いした。


「かつて初代帝王と共に冒険者となり、初代帝王と共に帝国を創り上げた貢献者と聞く。もう一度我が帝国に戻れ!」


 イズルが威厳を持ってサハリに命令した。


「ふふ、帝王とはいえ偉そうに言うね。あたしは初代帝王が亡くなったときに引退したんだよ。お引き取りを」


 サハリはイズルの誘いをあっさりと断り、【風壁ウィンドウォール】を解いた。


「今日はこれで帰る。だが、その武士は放ってはおけん。我が帝国を妨げるのであれば、その首を討ち取る!」


 イズルはそう言うと小竜に乗って、飛んでいった。


「虎吉さま!」


「ルナどの助かったよ」


 帝王のせいで身体中が痛く、立てなかった。


「すぐに治療します!」


 ルナどのが治療ヒールをかけてくれた。

 額の血が止まり、痛みが消えていった。


「ペロペロ」


「なっなんだ!?」


 イーミーが某をなめてきた。


「あんたすごいね。イーミーに好かれてるよ」


 サハリどのが笑っていた。


「すまなかったね、フウカ。もうかえって良いよ」


 サハリがイーミーをなでながらそう言うとイーミーは大空へと飛んでいった。


「フウカ?」


「あたしがあの子につけた名前さ。さて、帰ってお風呂入ってご飯食べようかね」


 サハリどのがそう言うので我らは屋敷に戻った。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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