人気者のいない昼休み
昼休み。今日は珍しく佐倉たちはクラスには来ず二人で昼食をとっていた。
「お、どうしたんだいつもは総菜パンなのに弁当だなんて」
カバンから弁当を取り出すと珍しそうに見てくる。
「妹から弁当を作ってほしいと頼まれてな。余った分を詰め込んだだけだ」
「へえー。今日中学校で何か行事でもあったか?」
「遠足だってさ。俺たちもこの時期に動物園に行っただろ」
「あーあったなそんなの」
思い出したのか納得したような顔をしていた。
(こいつ去年あんだけはしゃいでいたのに忘れるものなのか)
それは俺も思うが、いちいち気にしても仕方がない。
「っていうこととはそれを作ったってお前なのか?」
「そう言っているだろう。おかげで少し寝不足気味だけどな」
「だから授業中も眠たそうにしていたのか。相変わらず妹のためなら何でも引き受けるよな」
遼平は少しあきれた顔で言ってくる。妹のためっていうより家族のためならこれぐらい引き受けるだろうと思うが…。
そう思いながら昼食を取り始める。
「二人とも珍しいね。いつもは四人で食べている気がするけど」
すると後ろから声をかけられる。振り返るとそこには鈴原さんがいた。
「綾乃たちはクラスの友達と食べてるよ」
「そうなんだ」
「さすがに毎日っこっちにいるわけにもいかないしな」
毎日俺たちのクラスに来ていてはクラスとの交流を深めることはできないからたまには分かれて食べることも必要だろう。
それに俺もたまにはきがるな気持ちで昼休みを過ごしたい。
「そういう鈴原さんも珍しいと思うんだが」
これまでに鈴原さんが昼食をこのクラスで食べているところを見たことがない。
多分友達のところに行っているのだろうが今日は教室にのこっているので珍しいと思った。
「友達が今日休みだから教室で食べようかなって思って」
「それなら俺たちと一緒に食べるか。別にいいだろ春斗」
「別に俺に聞かなくても断らないよ」
そういうと鈴原さんは「ご一緒させてもらおうかな」と言って隣の席の椅子にすわる。
「それにしても春斗くんの弁当おいしそうだね」
「それはありがとう」
「どうしてお礼を?」
「この弁当こいつが作ったんだよ」
俺の代わりに遼平が答えると俺が作ったということが意外だったのか鈴原さんは驚いたように目を開けていた。
「ちなみにこいつの料理は本当においしいぞ」
何度か俺の料理を食べたことのある遼平は俺のというより紡久が教えてくれた味付けをたいそう気に入っている。
「そうなんだ」
そういうと俺の弁当をじっと見つめてくる。その鈴原さんの姿を見て少し笑いそうになるが何とかこらえる。
(餌付けでもしてみたらどうだ)
餌付けって…。
紡久の言い方に問題があるような気がするがいったんは置いておこう。
「…何個か食べてみるか」
「いいの?!」
提案するとやはり俺の弁当の味が気になっていたのかすぐに顔を上げた。
とりあえず俺は食べやすいものを何個か選び弁当の蓋に置きそれを望月さんに渡す。すると遼平から視線が送られていることに気づく。
「俺にも少し…」
「駄目だ、さすがにこれ以上は俺の分がなくなる」
予想通りの言葉に俺は即答で返す。
(少しぐらい分けてやれよ)
紡久は俺の行動にあきれたような声を出していた。
そんなやり取りをしていると鈴原さんはミニハンバーグを口のお中に運んでいた。
「……」
「もしかして口に合わなかったか」
口に運んでから少し無言の時間が続いていたのでさすがに心配になる。すると口を動かしてからにすると話し始める。
「おいしんだけど…」
「だけどどうしたんだ」
「女子として負けた気がして」
それは誉め言葉として受け取っていいのか。紡久は「ふふん」と少しうれしそうにしているのできっと誉め言葉なのだろう。
「やっぱこいつが作る料理はおいしいよな。来週のゴールデンウィークのどこかで泊まりに行ってもいいか」
「お前それ話の流れ的に俺の料理が目当てだろ。別に泊まりに来てもいいが俺が作るかわからんぞ」
「わかってるって。それに久しぶりに遊びたいだけだから安心しろ」
本当かよと思うが、どうせゴールデンウィーク中は暇なので許可することにした。
「二人って本当に仲がいいんだね」
「まぁ、小学生の頃からの友人だしな」
「こいつ、小学生の頃はこんなに明るくなかったんだぜ」
「え、そうなの」
「ずっと暗くて寂しそうにしていたんだよこいつ」
あの頃は紡久が現れたばっかりでちょっと大変だったからな。
話さないようにするのも最初は慣れてなかったからぼろが出て周りのこどもからは変な奴とみられていたからな。
今となってはどうでもいいことだから何も感じないんだけどな。
「ならこういう性格になったのは遼平くんのおかげなんだね」
「お、そうなのか」
「お前のおかげじゃない」
「まったく照れんなよ」
「照れてない」
さすがにうざいと思ったがそれを口に出すことなくご飯を食べ進める。
(男のツンデレは需要がないぞ)
紡久にまでなにか言われため息をつく。
まったくあいつらがいなくてもゆっくりできないなと苦笑するのだった。




