体力測定
望月さんから嫌いですと言われた日から数日が立った。昼休みは佐倉の誘いでよく一緒にご飯を食べているが一人の時は宣言通り関わることがなかった。
「春になったとはいえやっぱりまだ寒いよな」
体力測定の50メートル走の待ち時間中に遼平は俺に同意を求めるようにこちらを見てくる。確かに今は春とは言えまだ肌寒い日が続いている。
ただそんなことを言ってくる奴に俺は言いたいことがあった。
「そう思うんだったらせめてャージを着ろよ。来てないのお前ぐらいだぞ」
周りのほとんどの人はジャージを着ていた。来ていないのは遼平ぐらいで回りと比べると若干浮いていた。
「体力測定って言っても体を動かすからあったかくなると思ったんだよ」
「そんなわけないだろ。1学年全体でするんだから待ち時間のほうが長くて寒くなるに決まっているだろ」
「それは身にもって体験しているよ」
体を震わせながら言ってくる遼平の姿を見ているとこっちが寒くなってくる。
すると遼平はこちらを見ると少し考えるそぶりを見せ突然両腕を広げる。そしてそのままじりじりと迫ってくる。
「な…なんだよ」
身の危険を感じ近づいてくる速度に合わせて離れる。
「あったかそうだから、抱き着いて温まろうかなって思って」
「それだけは絶対にやめろ。そんなことをしてきたら殴るぞ」
恐ろしい提案をしてくる遼平に対し脅しをかける。そういうとあきらめたのかこちらに近づいてくるそぶりをやめる。
「さすがにやらねえよ」
「それにしては結構ガチに感じたんだが…」
「気のせい気のせい」
ごまかすように笑顔で言ってくる。
…これは俺が断らなかったらできついてくるつもりだったな。
「それよりどうしてこの時期にあるんだろうな。もう少し暖かくなってからのほうがよくないか」
「お前朝の話聞いてなかったのかよ」
「何か言ってたっけ」
本当にこいつは…。
俺はあきれるようにため息をつく。
「簡単に言うと六月に体育祭があるからこの時期に体力測定をやるらしいぞ」
「体育祭か…。かなり早いな」
それは俺も思った。中学校の頃は夏に体育祭があったので余計に早く感じる。
(学校側としては早く学校に慣れてもらうためっていう理由があるだろうな)
なるほどな。確かに上の年代と関わることができるしこの時期にあるのは変なことではないか。そういえば、中学生の頃も五月に行っていたところもあったし意外と普通なことかもな。
そんなことを考えていると男子たちがざわめきだす。そんな男子のほうを見てみるとあるところを見ていた。視線を動かし男子たちが見ているところを見るとそこには望月さんがいた。
「すごい人気だよな」
「そうだな」
「昼ごはん中気づいてるか」
「男子の嫉妬の視線だろ」
入学式から数日望月さんはその容姿からすぐに学校中の噂になっていた。すぐに告白した人もいるらしいが断ったらしい。
まぁそれはそうだろうと思った。知らない奴からいきなり好きだから付き合おうとか言われるの怖すぎだろう。友達から始めようとするやつもいるらしいがそれすらほとんど断っているらしい。
そのせいで普通に関わっている俺たちに対して男たちはすごい目で見てくる。
俺は別に好きで一緒に食べているわけではないのにな。
「次の男子は並んでください」
そうこうしているうちにいつの間にか走る順番が回ってきていた。
「望月さんにいいところを見せないとな」
「イケメンだけにいい格好をみせさせるわけには行かない」
少し単純すぎないか。望月さんが見に来ただけでこんなに盛り上がれてここまでやる気を出すなんて俺はあきれながら準備をする。
「まぁしょうがないんじゃないか。男子なんて意外と単純だろ」
「それを男のお前が言うのか」
「それぐらいわかりやすいってことだ」
確かに女子の一言や行動ですぐにテンションを変える男子は意外とわかりやすいのかもな。
「俺たちもあいつらに負けないように頑張ろうぜ」
「そうだな、少しは頑張るか」
そういって少しやる気を出し合図とともに走り始めるのだった。




