思わぬ再会
「話し声も聞こえなかったし私が一番乗りかと思ったよ。」
「そうだとしてもいきなりあれはないだろ」
「少しテンションが上がってて。流石に恥ずかしいね」
彼女は頬を赤く染めて恥ずかしそうにする。
それよりもこいつらはすごいな。もう友達みたいに話している。
「それより自己紹介しようぜ。これから一年同じクラスだし何より面白い奴とは友達になっておきたい。俺の名前は東良遼平、こっちは藤川春斗よろしくな」
「よろしく。それと俺の名前は好きに呼んでくれ」
俺は遼平が紹介したタイミングでぺこりと頭を下げ挨拶をする。
「春斗君と遼平君だね。えっとわたしは鈴原茜。私のことも好きなように呼んでね。これからよろしく。あと、できればさっきのは忘れてほしいな」
「努力はする」
「流石に難しいかな」
いきなりの第一印象があれなら誰だって忘れることは難しいだろう。
鈴原さんは俺たちの返しに「う〜」と唸っていた。
俺たちは鈴原さんと親睦を深めていくと続々と他の生徒が入ってくる。時計を見るともうすぐ9時になりそうだった。
そしてしばらくすると、先生らしきスーツ着た女性の方が入ってくる。
「新入生の皆さんそろそろ席についてください」
その言葉を聞くと鈴原さんは「また後で」と言って自分の席に戻っていく。遼平は前の席なのでそのまま座っていた。
「私はこのクラスを担当をする星野といいます。それではこれからの動きについて説明しますのでよく聞いていてください」
☆★☆
(こういう話って意外と長いよな)
入学式が始まり校長先生がこの学校の歴史や伝統、これからのの学校生活のことなどの話をしている中、暇なのか紡久が語りかけてくる。
ここでは口で話すことができないので俺は見る位置を固定し、紡久と話せるように集中することにした。
前に言った通り口に出さずに心で話すのはどんどん疲れてくるが10分程度なら影響も少ないので倒れることもない。
『そうだな。話自体は長くないのにどうしてか長く感じるよな』
(珍しいなこっちで話してくれるなんて)
『暇だからお前の話し相手になりに来たんだ』
本当に久しぶりだ。前にこの方法で話したのは確か三ヶ月前だ。やはり少しずつ疲れてくるが問題なさそうだ。
(それはありがたい。ただ見るだけっていうのは暇だから話し相手がいるというのは助かる。まあ、さっきのは面白かったが)
『さっきの…。あぁ、鈴原さんのことか』
確かにあれは見ている分には面白いだろうな。
(ああいうのは何度見ても面白いな)
『こっちからしたら困惑するだけだけどな…。』
しかしここまで紡久が面白がるとはな。さすがに鈴原さんがかわいそうに思えてくるよ。
(そういえばさっき見覚えのあるやつがいたぞ)
『見覚えのあるやつ…。佐倉のことか?』
(そいつじゃなくて、ほら今代表で挨拶している)
紡ぐと話していたらいつの間にか校長先生の話が終わっていたみたいだ。
こっちに集中すると表で何が起こっているかわからなくなるから駄目だな。いつか両方できるように努力してみるか。使い続けると成長するみたいだし。
すっと意識を戻すと紡久が言っていた通り代表挨拶をしていた。
あれ、あの人なんか見たことがあるような…。
(昨日公園で寝ていたやつだな。名前は望月千歳ってなのっていたぞ。それにしても同じ学校のそれも同級生とはな)
俺の反応が薄いからか補足をしてくれる。
え…。あの女性も同じ学校だったのか。
もう会わないだろうと思っていた相手を見つけ驚きを隠せずに彼女の顔をじっと見つめてしまう。すると、俺は彼女と目が合ったような気がした。
「…っ」
どうやら目が合ったのは気のせいではなかったみたいだ。望月さんも驚いたようで一瞬言葉が詰まっている様子だったがすぐに続きを話し出す。
そのころには俺も気持ちを落ち着かせていた。
ちょんちょん…。
隣の遼平から肘で軽く小突かれる。遼平のほうを向くと顔がこれ以上ないほどニコニコとしていた。どうやら俺と望月さんの様子を見て何か感じ取ったみたいだ。
あぁ、これは後で何か聞かれる奴だな。
目を輝かせる遼平を見て、この後質問してくるんだろうなとこれから起こることを予想し、どう答えるべきか悩むのだった。




