入学式当日
不思議な女性と会った翌日、入学式の準備を終わらせ自分が行く高校に向かっていた。
「はぁ…」
ただし、あまりテンションは高くなかった。
(どうしたんだ、朝からテンションが低いぞ)
「朝からテンションが低いのは普通だろ」
(それにしては低すぎると思うが。入学式楽しみじゃないのか?)
「別に楽しみじゃない。長い休みが終わって久しぶりの学校生活が始まる。正直つらい」
(なるほど、休み明けだからこそ学校が憂鬱なのか)
「そういうことだ」
新しい出会いが楽しみという人もいるだろう。
しかし俺には今いる仲がいい奴らだけで十分だ。正直あいつらと似たような奴と何人も関わるのは疲れる。
そういえば、あいつらも同じ高校だっけ。
そんなことを思いながらしばらく歩いていると俺が行く高校が見えてくる。校門を見ると新入生があふれていた。
早めに出たはずなのにまさかここまで人が多いとは…。
どうせ早めに出たんだしもう少し早めに家を出て人が少ない時間帯に出るべきだったかと後悔をする。
今更後悔しても仕方がないのでそのまま人混みに近づいていくと後ろから走ってくるような足音が聞こえてくる。
嫌な予感がする。
そう感じた瞬間すぐに振り向こうとするが…。
パンっ!
「おはよ!!」
それは叶わず声と同時に叩かれたようで背中に痛みが走る。
「いっ!」
いきなりのことで思わず声が出る。
こんなことをしてくるのは…。
大体予想はできているが叩いてきた奴のほうをを見る。すると予想通りの男が立っていた。
「痛いだろ遼平。いきなりたたくのはやめてくれ」
「驚かせようと思ってな。どうだ、びっくりしただろ」
いい笑顔で面白そうにしているこいつの名前は東良遼平だ。小学生からの付き合いで友達といえる存在だろう。
遼平は気さくな奴で話しやすいが、こういういたずらをしてくのはやめてほしい。まじめな時は真面目なのだが…。
「痛みのほうが強くてびっくりする暇ねぇよ。せめて叩かないでくれ」
先ほど叩かれたところをこすりながら答える。
「すまんすまん」
まったく反省している様子はない。
「はぁ…とりあえずさらに人が多くなる前にさっさとクラスの確認しに行くぞ」
「そうだな、まだまだ集まるだろうしな」
俺たちは学校の案内に従って進んでいく。
「そういえば佐倉はどうしたんだ?」
いつも遼平と一緒にいるやつがいないことに気づく。
入学式当日に休みか?それとも…
「忘れ物をしたらしく一旦家に帰ったぞ」
「やっぱりか。相変わらずだな大事な日に忘れ物をするのは」
「だな。早めに出ててよかったよ。そういえば今年はどうなるんだろうな」
「何がだ?」
「今年もお前と同じクラスになるかどうかって言う話だよ」
「あぁ、流石に今年こそ別のクラスじゃないか。ていうよりそうなることを願う」
遼平とは小中通して違うクラスになったことがない。だから今年こそは別のクラスになりたい。
朝からこのテンションに付き合うのはつらすぎる。
「別のクラスになっても休み時間に会いに行ってやるよ。どうせお前は友達を作らずに寂しくするだろうしな」
「別にさみしくないから大丈夫だ」
「遠慮するなよ」
「してねぇーよ」
そんな話をしているとクラスの書かれたボードの見える位置までたどり着く。
そして一組と書かれているところから順に確認をしていく。
えっと俺の名前はどこにあるかな。
二組あたりまで確認し終わると遼平から肩をたたかれる。
「どうした、名前見つかったのか」
「ああ、見つけたぞ。ついでにお前のも。五組を確認してみろよ」
そういわれ俺は五組を確認すると俺の名前が書いてあった。
しかし、その上にある名前を見て固まる。そこには東良遼平と書かれていた。
「高校になってもクラス同じになったな」
ニコニコした顔でこちらを見てくる、どうやら今年も遼平と同じクラスになったみたいだ。
(記録更新だな。予想はできていたけど)
心の中で紡久が面白そうにつぶやいてきた。そんな記録作りたくなかったよ。
確かに俺も同じクラスになりそうだと思っていたが本当に当たると思わなかった。
これからのことを考えるとついため息が出てしまった。
「そんなにがっかりすることか。さすがの俺も傷つくぞ」
「お前も傷つくんだな」
「おいこら、お前は俺のことを何だと思っているんだ」
「…そんなことより教室に行こうぜ。また人が増えてきたし」
「今さらっと流したな」
俺たちは人混みを抜け学校内に入っていく。そして靴を履き替えボードに書いてあった番号のところに靴をなおす。
「そういえば春斗は学年代表じゃなかったんだな。お前の成績なら代表に選ばれてもおかしくないと思ったが」
「あれって成績がいい人がなるっていうわけでもないだろ」
「じゃあ、あれってどうやって決まるんだろうな」
「さぁ、主席に興味がないからどうでもいい。それに俺達にはもう関係ないことだ」
「それもそうだな」
そして俺たちはどうでもいい話をしながら教室に向かっていった。
☆★☆
ガラガラガラ…。
教室の扉を開くと教室にはまだ誰も来ていなかった。
「廊下にはほとんど人がいなかったとはいえまさかの一番乗りか…」
校門に人が集まっていたのでもう何人かは教室に来ていると思ったのだが誰も来ていないとは。
俺は黒板に貼ってある座席表を確認し、自分の席にに荷物を置く。
「それはそうだろ。時刻確認してみろよ」
遼平にそう言われ教室にかかっている時計を見ると8時20分となっていた。学校側からもらったプリントには9時集合となっていた。
「まだまだ時間はあるし外で中学生の頃の友達と話してるんだろ。俺たちも外に行くか?」
「いや大丈夫だ」
俺は遼平の提案に首をふる。
「そっか。そうだな春斗は友達少ないし合うやつなんていないか」
「確かに少ないが、お前に言われるのは腹立つ」
さっきの仕返しか?本当の事だから否定はしないが後半の言葉は必要ないだろ。
それにしても誰もいない教室って新鮮だな。
タッタッタ…。
そんなことを思っているとを続けていると廊下から走ってくる音が聞こえてきた。
そしてその足音はこの教室の前で止まり少し間をおいて勢いよくドアが開かれる。
「一番乗り〜!」
その言葉と同時に勢いよくドアが開く。
そして女性が一人勢いよく入ってきた。俺たちはその人と目が合う。
誰もいないと思って勢いよく入ってきたのだろう。俺たちの間に変な空気が流れる。
「………」
「「………」」
誰かこの空気をなんとかしてくれ…。
しばらく無言が続いたが時が動き出したかのように彼女は恥ずかしそうにゆっくりと口を開く。
「……どうも」
「「ど…どうも」」
俺たちは戸惑いながらも挨拶を返した。




