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頑張らないと

「そういえば中間考査はどれくらいとれていそうですか?」

「え?」


 帰りの途中に望月さんに話しかけられる。正直前のように静かに帰ると思っていたので話しかけられることは予想外だった。


「えっと、多分あの出来なら全部九十点以上か満点だと思うぞ」


 まだ採点もしていないため確かなことは言えないがそこまで間違っていないだろう。


 しかしなぜこんなことを聞いてきたのか。人の点数が気になるのはわかるが順位が張り出されてからでもいいだろうと思う。


「やはりそうですよね」


 望月さんの言葉に少し疑問を持った。


「やはりって俺の点数予想できていたのか?」

「大体は」


 なぜ予想できたんだ。今回の中間考査は学校全体でやる初めてのテストだ。だから俺の成績を知っているはずないんだが…。


「前にも確認したが俺たち本当に会ったことないんだよな」

「はい。高校に入って初めてお会いしました」


 前にも俺のことを知っているような言葉を使っていたので改めて聞いてみるが答えは前と同じだった。


(いっそのこと聞いてみればいいだろ。どうして春斗のことを知っていたのかを)


 じれったく感じてきたのか少し強めに言われる。


 さすがに聞くのは悪いかと思っていたがなぜ知っているのか気になってきたし紡久の言う通り聞いてみることにしよう。


「なぁ、どうして俺のことを知っているんだ」

「え?」


 いきなりの意味が分からない質問で頭に疑問符が浮かんでいた。


(さすがに言葉が足りないだろ)


 呆れた声が聞こえてくる。説明足らずで悪いとは思っているがあきれなくてもいいだろ。


「前々から俺のことを知っているような発言をするだろう。あったこともないのにどうして知っているのか気になってな」

「あーそういうことですか」


 質問の意味が分かり納得したようにうなずく。


「あなたのことは本当に何も知りませんよ。しかし、成績ぐらいなら知る方法はいくらかあります」

「…例えば?」

「例えば、全国模試とかですかね」

「あーなるほど?」


 確かにあれは順位が出るからどんな成績だったかわかるかもしれないが、それでもおかしく感じるんだが…。


『あれって名前まで出るっけ』

(いや、さすがに出ないと思うぞ)


 だよな。やっぱり俺の勘違いというわけではなくおかしいよな。


「あの…」

「すいません。私の家はここなので」


 どうやって名前を知ったのか気になったがその前に望月さんの家についたみたいだ。


「では、お疲れ様でした」

「お、おう。お疲れ様」


 挨拶を聞くと家に入っていった。


 結局なぜ名前を知っていたのか聞けなかったがどうやって知ったかは知れたしいいか。知った理由は誰かに聞いたからだろう。


 そう考え俺も家に帰っていく。


 それにしても結構家近かったんだな…。



☆★☆



「ただいま帰りました」 


 家族は妹の稲穂とどこかに食べに行っていて家に誰もいないはずなのに玄関で丁寧にあいさつをしてから靴を脱ぎ家の中へと踏み込む。


 すぐに部屋に荷物を置きいつものように晩御飯の準備をする。


 あるもので簡単なものを作りいただきますと挨拶をして食事をとる。


 中学まではさみしいと思いながら食べていた。今では何とも思ないぐらいに慣れてしまった。


 お父さんたちは私に興味がない。いえ、正しくは興味がなくなってしまった。

 

 理由は簡単。私が一番ではなくなってしまったから。

 私は小学生のころまで一番を取り続けていた。習い事でも勉強でも。しかし、中学に入ってからは変わってしまった。


 中学になってから全国模試というものを受けることになった。その時に取った最初の順位は17位だった。

 最初の頃は初めてだからとまだ期待するようなまなざしで見てくれていたし私のことを家族として見てくれていた。


 その後勉強を頑張ったが1位にはなれなかった。1位の人はほとんど満点を取っていてとても追いつけるような点数ではなかった。


 一位をとれなくなった私はお母さんたちから見放されてしまった。


 そしてお母さんたちは妹の稲穂のほうを溺愛するようになった。


 私は許せなかった。私から家族を奪っていったその一位の人のことを。だからその人のことを調べだした。


 いろんな人に聞きまわり三年になったころ一位の人の名前が分かった。藤川春斗という名前を。


 そして最後に受けた全国模試でも結局勝てなかったがその時思ったことがあった。ズルをしているのではないかと。


 その考えが浮かんだとき私は激怒した。絶対そうだと勝手に決めつけその人のことを恨んだ。


 だから高校で見つけた時私はその人にできるだけ近づきたくないと関わりたくないと思った。そしてあの時あんなことを言ってしまった。


 でも、藤川さんと関わっているとすぐにわかった。ズルをするような人ではないと。


 だから次はそれを知ってうえでちゃんと勉強をして中間考査に挑んだ。でもきっと今回も藤川さんに負けている。


「ご馳走様でした」


 食べ終わるとすぐに部屋に戻り机に向かい合う。


 だからもっと頑張らないといけない。誰かに…家族に認めてもらうために。

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