アルバイト初日
中間テスト最終日最後のテストも全く迷うことなく答えを埋めていく。
「そこまで。今すぐ書くのをやめ今すぐペンを置け」
先生の指示に従ってペンを置く。そしてプリントを前に回していく。
プリントをすべて回収し終わると枚数を確認する。それが終わると先生は口を開く。
「今日はこれで終わりです。今日から部活が始まるところもあるので忘れずに向かってください。それではこれで以上です。疲れ様でした」
そういって先生が出ていくと解放されたように生徒たちに活気がもどる。俺は体を伸ばし緊張していた体をほぐしていく。
すると前の席の遼平が体の向きをこちらに変えて話しかけてくる。
「今回はどんな感じだったんだ」
「いつもと変わらないかな、さすがに何問か間違えてそうだけど」
テストの時はさすがに紡久からのアドバイスはないため完璧とは言えないだろう。
しかし少しでもミスをすると紡久から(あっ)とか(そこ)とか声が聞こえてくる。なので紡久センサーが間違えていない限りはあっているはずだ。
「よくやるな。先週熱で2日休んでいたはずなのに」
先週の休んでいた時のことは母さんが熱と言って休んでいる。
その時少しうざかったのは連絡が100件を超えていたことだ。心配してくれるのはうれしいことだが意味が分からないことも送ってきていたので学校で会ったときにはたいておいた。
「確かに休んでいたがあの時にはほとんどの範囲を終わらせていたからな」
「うへー、そんなに早く終わらせれるかふつー」
あきれるような感心するような目を向けられる。
「お前はどうだったんだ」
「俺もまぁまぁだったな」
「なるほどな、だったらこれからは勉強をおしえなくてもいいな」
「それはまた別の話で」
「なんでだよ」
ふざけた発言に思わずツッコミを入れる。
(お前今日バイトだろ時間は大丈夫なのか)
遼平と話していると紡久から話しかけられる。
『確かにそろそろ向かってもいいかもな』
時計を見るとまだ早いが初めてということならちょうどいい時間帯だった。
「じゃ俺はそろそろ行くわ」
「ん?もうそんな時間帯か」
遼平は不思議そうな顔をしていた。
「今日はバイトなんだよ」
「お前バイトなんてしていたのか」
「今日は初の出勤日なんだよ」
「なるほど」
遼平は納得するようにうなづいていた。
「じゃあ、また明日」
そういって教室を出ようとすると遼平から呼び止められる。
「今度バイト先に行ってもいいか」
「絶対に来るな」
そういって俺は教室を出る。
(あそこまで強く言わなくてもいいんじゃないか)
『あいつがいたら絶対に何か言われるだろ。それは面倒だ』
紡久にそう伝えてのんびりとバイト先へ向かっていった。
☆★☆
お店に入るとまだお客さんは来ていない様子だった。
「お疲れ様です店長」
「春斗くんお疲れ」
お店に入ると店長が作業している様子だったのですぐに挨拶をする。すると笑顔で挨拶が帰ってくる。
この笑顔を身につけなきゃならないのか…。
そう思うと少し気が重く感じる。
「以外に早く着いたんだね」
「今日はテストだったのですぐに来れました」
「そうだったね。それじゃあこっちに来て」
店長は裏のほうに行くと俺も後をついて行く。そして休憩室と書かれた部屋に入ると机の上に置かれた服を渡してくる。
「それじゃあこれに着替えてもらおうかな」
どうやらこれはこのお店の制服のようだ。俺はその制服を受け取るとそのままその部屋で着替える。
「大きさは大丈夫そうかな」
「そうですね問題ないです」
「それにしても…」
そう言って俺の顔をじっと見つめてくる。どこかおかしいところでもあるのだろうか。すると店長は手で俺の前髪を上げる。
「やっぱり髪が長いね」
「問題あるでしょうか」
「問題はないよ。だけど上げたほうが雰囲気が明るく見えるからそのほうがいいかも」
確かに今の俺の髪は目が少し隠れるぐらい伸びている。
接客は明るいほうがいいだろうしこれを機会に髪を切るか。
そんなことを考えていると、店長は何かを探すようにあたりをあさっていた。少しすると何か見つけたようでそれを俺のほうに渡してくる
「これはヘアピンと…メガネですか」
「メガネには度は入ってないけどね。いわゆる伊達メガネだね」
ヘアピンはわかるがなぜメガネまでと思ってしまった。かけたほうが良いならかけるがこれにいったいどういった用途が…。
「どうせなら雰囲気をがらりと変えてしまったほうがバイトとの切り替えが簡単にできるでしょう」
「そういうことなんですね。てっきり店長の趣味かと思いました」
「それもあるんだけどね」
店長は正直に答える。素直に認められるとなんて言えばいいかわからなくなる。
硬直していると店長は俺の髪をヘアピンでとめ、メガネをかけてくる。
「うん。やっぱり俊一くんの息子だね。似合っているよ」
そう言って鏡を持ちこちらに向けてくる。
(意外と似合っているな)
紡久にも褒められられる。
いつもと違い暗めな雰囲気からがらりと変わり明るい青年へと変貌していた。
「そのメガネとヘアピンは上げるよ。でもバイトの時は念のためつけておいてね」
「わかりました。ありがとうございます」
店長にお礼を言いホームへと戻ってくる。
「もうすぐバイトの子が来ると思うからゆっくりしててね」
そういえば今日はバイトの人も一緒なんだっけ。どんな人なんだろうと思っていると入口のドアが開く。
「お疲れ様です」
そう言って入ってきた人物に俺は驚いた。
なぜならそこに立っていたのは望月千歳だったからだ。




