バイト挨拶
どうしようか…。
ゴールデンウィークになりお金の使い方が荒くなったのかほとんどすかすかになった財布。
それを見てバイトをするかどうかを悩んでいた。
(流石に許してくれないんじゃないか?)
「やっぱそうだよな」
ゴールデンウィークが終わるとすぐに中間試験だ。そんな時期にバイトに入れるとは思えない。それに俺には紡久という問題がある。
優しいとはいえ父さんがバイトを許してくれるかわからない。
(とりあえず相談してみるしかないだろう)
「話してみないとわからないこともある…か」
そう決めると俺は父さんがいる書斎へと向かう。
「父さんいる?」
書斎に入る前にいるかどうかを確認する。すると中から足音がし、ドアの前に立ったと思われるとそのドアが開かれる。
「どうしたんだ」
「返事をしてくれれば入るのに」
「なんとなくこっちから出迎えたかったのさ」
うちの父、俊一は穏やかな性格でさわやか系の雰囲気を持った人だ。
話し方も少し若いような話し方をして三十路だがまるで二十歳のような見た目をしている。こういう見た目をしているからよく大学に間違えられるそうだ。
「それで、何かようかい」
父さんに少し緊張するが、だめなときはだめなので俺は話を切り出す
「…バイト初めてもいいかな」
「好きに始めなさい」
悩むことなく答えてくる。
「即答って…」
「そりゃあそうさ。子供にはいろいろな体験をしてをしいからね。断られるとでも思ったのかい」
「紡久のこともあるし反対されると思ったんだよ」
「そんなこと気にしていたのかい」
まるで気にしていないように微笑みながら言ってくる。
「そんな些細な事僕が気にするはずないじゃないか」
「…ありがとう」
俺は少し気恥ずかしそうにお礼を言う。
「いまだにそんなことを気にするなんてね」
父さんは昔のことを思い出しているか少しボーとしていた。しかし、すぐにをやめ話し始める。
「バイト先は決まっているのかい」
「それは今から探す予定です」
「なら僕の友達のところで働いてみないかい。喫茶店みたいなんだけどちょうど人手が足りないみたいだからちょうどいいかも」
「迷惑じゃないのか」
「多分大丈夫だよ」
多分って本当に迷惑じゃないのか。
つい反応してしまいそうになるが話が進まなくなるのでいったん抑える。
「大丈夫ならお願いしようかな」
「わかった連絡しておくから、いつ頃空いているんだい」
「明日が開いてるかな」
「わかった。明日そのお店に行きなさい。場所は近いからすぐにわかるよ」
明日はゴールデンウィーク最終日だが特に予定は入れてなかったちょうど良い日を言うと、とんとん拍子に決まってく。
「時間はあとで教えるから」
「了解」
会話が終わると父さんは書斎に戻っていく。
(よかったな)
「そうだな。こんなに早く決まるとは思わなかったが」
(それは俺も驚いた。実はバイトに入りたいことをもとから知っていたりしてな)
父さんは意外と勘が鋭いし家族の愛とか言って家族のことをなんでも察してくるからありえそうだ。
そういうところはある意味怖いがいい父親ということは変わりないので気にしないようにする。
妹にも話したが「一緒にいる時間が減っちゃうな」と少し残念そうしていた。しかし俺がバイトを始めたら来てもいいからというと機嫌を直していた。
夜に父さんから日時や場所などの連絡が届き明日に向けて準備をして早めに眠った。
☆★☆
「君が俊一くんの息子の春斗くんかい」
お父さんの友達がやっているという喫茶店に来てみると優しそうな雰囲気をした人が相手をしてくれる。
(お前の父みたく若く見えるな)
紡久の言っている通りお壮さんとおんなじタイプだと思った。
って紡久の言葉を気にしてる場合じゃないな。
「はい、そうです」
(ハハッ、何緊張しているんだよ)
紡久は笑いを押さえながら指摘する。さすがの俺も初めて知る父さんの同年代の人と話すのは緊張する。
「そんな緊張しなくても大丈夫だよ」
その感情が相手にも伝わったのか優しく笑ってくれる。
「ほかのところと違って面接はしないから。君は俊一君と同じで優しそうだからね」
「ありがとうございます」
家を出る前にいろいろと準備をしてきたがどうやら必要なかったようだ。
「そういえば僕のことについてな何か伝えられているかい」
「いえ、友達としか伝えられていません」
「そっか、なら自己紹介をしなくてはね。僕の名前は近藤智明っていうよ。バイト中も好きに呼んでかまわないから」
「わかりました。それでは普通に店長と呼ばせていただきます」
さすがに年上の人を名前で呼ぶというのは抵抗があるので普通に店長と呼ぶことにした。
「ふふ、やっぱり少し硬いね」
何かが面白かったのか店長は笑っていた。そして緊張をほぐすためか少しだけ話し緊張が薄くなったところで本題に入った。
「いつぐらいから入れそうかな」
「もうすぐ中間があるのでそれが終わりしだいは入れると思います」
「なるほど」
店長は考える様子を見せる。
「なら終わった後の昼から入ってもらえるかな。その時ほかに入っているバイトさんもいるからちょうどいいかも」
中間が終わったあとは元々帰る予定でいたので問題ないだろう。
「全然大丈夫です」
「ならその時間にさせてもらおうかな。ちなみに君のほかに3人バイトの人がいるから仲良くしてね」
「わかりました。これからお世話になります」
俺は簡単に挨拶をする。
そうして何事なく終わったことに安堵しながら家に帰るのだった。




