ぼくのクツの中、大人気!
朝、七時四十五分。
学校に行く時間だ、いそがないと。
黄色いぼうしをかぶって、ランドセルをせおって、げんかんで赤いクツをはこうとしたら。
「あ、おはようございます」
「…おはようございます?」
なんで、ぼくのクツの中に…ねずみがいるんだろう。
「あの、それはぼくのクツなので、出ていってほしいです」
「これはしっけい、いごこちが良くてつい。…いってらっしゃい」
ねずみは、ちょろりと長いしっぽを…くつひもに一回からませてから、おじぎをしてどこかにいってしまった。
……なんだい、これは。
ちこくしたら、たいへんだ。
ぼくは気を取り直して、クツをはいた。
足のうらに、ほんのりとしたあたたかさを感じながら、学校へといそいだ。
朝、七時四十分。
そろそろ学校に行く時間だ。
黄色いぼうしをかぶって、ランドセルをせおって、げんかんで赤いクツをはこうとしたら。
「あ、もう来ちゃった」
「…おはようございます?」
なんで、ぼくのクツの中に…セミがいるんだろう。
「あの、それはぼくのクツなので、出ていってほしいです」
「これはしっけい、ちょうど羽化に良くてつい。…いってらっしゃい」
セミは、透明な羽で…くつひもをはじいたあと、どこかにとんでいってしまった。
……なんだい、これは。
ちかくの木で、元気なセミの声が聞こえはじめた。
ぼくはセミのぬけがらをポケットにつっこんでから、クツをはいた。
足のうらがちょっとざらざらしているような気がしたけど、まあいいかと思ってそのまま学校へとむかった。
朝、七時五十五分。
学校に行く時間がすぎちゃった、いそがないと…怒られる!
黄色いぼうしをかぶって、ランドセルをせおって、げんかんで赤いクツをはいたら!
「ぐぎゅー!!!」
「へっ?!」
なんで、ぼくのクツの中に…トカゲ…いや、ヤモリがいるんだ!!
「ごめん、ふんじゃった…つぶれてない?!」
「ひ、ひぃー、じまんの、しっぽ、しっぽがー!!!」
ヤモリは、切れてじたばたしているしっぽをだきしめて…泣いている。
……なんだい、これは!!!
ちこくしたらたいへんだけど、気になって…!!
ぼくは、とっても悪いことをしてしまったと…思ってしまった。
せっかくあんなにのばしたしっぽが、ぼくの、せいで……。
「ごめんね、そのクツ…ええと、とりあえずあげるから。かえったらまた、あやまる!!」
ぼくは、くもひとつないいい天気だけど…、ながぐつをはいて学校へといそいだ。
その日の午後、ながぐつをはいて家にかえると、お母さんがおかしなかおをしてまっていた。
「おかえり。…なんで長靴、履いてったの?」
「ええと…、はきたかった、から……?」
「まあ、確かにちょっと小さくなってたもんね。じゃあ、明日からはこの水色のクツ、はいてってね!!」
あたらしいクツをはいてみると…ゴワゴワして、かたくて、ちょっとなんか…へんな感じだ。
「古いクツ、もらってもいい?」
「いいけど…何に使うの?」
「ひみつ」
ぼくはもらった赤いクツを、くつばこの下においた。
…これなら、ぼくのクツの中に入ろうとするモノはいなくなる、はず……。
朝、七時四十五分。
学校に行く時間だ、いそがないと。
黄色いぼうしをかぶって、ランドセルをせおって、げんかんで水色のクツをはこうとしたら。
「この使い古された感じが良いんですよね」
「やわらかいもんねえ・・・」
「新しいクツはダメだな!かたすぎるよ!」
「水色は目立つし落ち着かないし」
「でも、長くはき続けていたらきっとあのクツも居心地がよくなると思うよ!」
「その時が楽しみですねえ…」
ネズミ、ヤモリ、セミ、カブトムシ、スズメ、カエル、モグラ、あれは…なんだ?
赤いクツをかこんで、何やらパーティーをしているものたちが、わんさかいる!!
気になるけど!!
きになりすぎるけど!!
ゆっくりかんさつしていたら・・・ちこくだ!!
ぼくは、ものすごーく、気になったけど、学校へといそいだのだった・・・。