86.火種の作り方
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魔法騎士学園にある会議室で、学園内でも有力な女子生徒たちが集められていた。
これまでファンクラブはフレイ派とヴェイン派の党派が存在し、当初の二つは非常に仲が悪かった。その原因はフレイとヴェインの不仲によるところが大きく、ファン同士も親の仇の如く苛烈な争いがあったという。
しかし、二人の仲が突然改善したことにより、その戦争は自然と消滅していった。争いなど醜い、好きな物同士を一緒に称え、見守っていこうとファンクラブは手を取り合い、魔法騎士学園の歴史において最も平和な時代が続くこととなる。
だが、謎の貴族、はたまた平民の英雄と呼ばれるアルトの登場により、その平和は崩されることとなった……。
生徒会書記を務める生徒が、会議室でそう書き記していく────。
「それで、なんですの? 話によると、アルト様の党派に反対だとか」
レアが扇子を開き、口元を隠す。
女子生徒たちが息を飲む。最も身長が低いはずのレアが、どことなく大きく見える。
それでも、自分たちの平和を揺るがそうとする王女に挑まなければならない。
フレイ派、フレイファンクラブ当主の女子生徒……ジュラが口を開く。
「レ、レア王女殿下……ファンクラブの党派はフレイ様とヴェイン様の二つのみです。均衡が保たれていたからこそ、学園は平和でした。もしもアルト様の党派を作るとなれば、新たな争いの火種になるかと……」
「あら、あらあら! 争いを気にしていらっしゃいますの? 本当に?」
ヴェイン派当主のサニーが言う。
「ジュラの言う通り、本当です。私たちが争う事を、きっとヴェイン様も望んでないはず……平和が一番なのです」
サニーに向かって、レアが視線を鋭くする。
あまりの威圧に、サニーが背筋を伸ばした。
(こ、これが天才王女と名高いレア様の威圧……!)
「争わない? 平和? あなた、それでも本当にヴェインファンクラブの当主なのですか?」
レアが扇子をパチンッと閉じる。
「ファンクラブの意義とはなんですか?」
「……推しの人を応援するクラブです」
レアがサニーの言葉を聞いて、鼻で笑う。
「馬鹿をおっしゃい。ファンクラブとは、推しをナンバーワンにするための物でしょう!?」
「っ!!」
サニーが目を見開く。
「争いをやめた時点で……サニー、あなたはヴェインを応援していないのです」
「そんなつもりじゃ……」
「いいえ。では、今の魔法騎士学園でのナンバーワンは誰ですか?」
「……フレイ様、です」
レアが目をつぶって、「そうでしょう、そうでしょう」と何度も頷く。
この事実は、ヴェイン派である生徒たちも認めていた。
ヴェインは常にナンバーツーであり、先頭にはフレイがいる。
自分たちの王子様は2番手。それに甘んじている。
その事実を、レアによって叩きつけられていた。
「自分の推しをナンバーワンにできない方が、当主を名乗らないで欲しいですわ!」
「うぐっ……」
大ダメージを受けたことにより、サニーは押し黙る。
ヴェイン様への気持ちは本物だ。自分たちの気持ちを侮辱されたも同然、そのことに怒りを覚えないヴェイン派の生徒たちではない。だが、レアの言っていることは正しかった。
自分たちは、ファンとして失格だ。
フレイ派当主のジュラが小声で言う。
「くっ……サニーがやられた……! こうもあっさりと倒されるとは……」
化け物め……というような眼でレアを見る。
すると、レアと目が合った。
「おや……あなたもですよ?」
「へっ!?」
自分に火の粉が飛んで来るとは思っていなかったのか、ジュラから裏返った声が出る。
「学園でナンバーワンのファンクラブ当主というのならば、まさか、他の人と付き合ったりなどしていませんわよね?」
その言葉を聞いて、ジュラが目を泳がせた。
会議室の生徒たちがジュラを見る。
「いえ! 違いますよ!? 私はフレイ様一筋です! 信じてください!」
「往生際が悪いですわね……これでどうです?」
長机に、数枚の絵写真を置く。
そこには、学園の校舎裏で密会している男女の絵があった。
「なっ……! なぜこんなリアルな物が……!」
「美術部に作らせましたわ。証拠が必要だろう、と思いまして。あなたと彼氏さんは否定するでしょうから」
「でも、まさか見られていたなんて……!」
「学園に耳あれば目あり、特に私の知らないことなんて、ありはしませんもの」
ホッホッホッと高笑いするレアはさながら悪女のようであった。
既に敗北し、声に元気のないサニーが言う。
「ジュラさん……? この絵写真は本当なんですね?」
「い、いやその……これは……」
ジュラが言い淀む。
そこにレアが追撃する。
「確か、ジュラさんの彼氏さんも白髪の学生ですわね……王子様が手に入らぬからと妥協する女なんて、彼氏さんも可哀想でしょう」
「そ、そんなつもりじゃなくて! 彼は良い人なんです!」
「恋愛がしたい気持ちはよく分かりますとも。まぁ、私はアルト様以外など、絶対にありえませんが」
魔法騎士学園のファンクラブの掟において、彼氏を作ることはご法度である。自分たちの推しである王子様一筋であることが、入隊の条件だ。
それを、当主であるジュラは破っていた。
しかも、フレイと同じ白髪の学生だ。
レアは扇子で静かにトントンと机をたたく。
「さて、では問いましょう。今日は、なんの集まりですの?」
ヴェイン派、サニーが言う。
「……レア王女殿下、今日はもうお開きに致します。私たちはまず、ファンクラブ内の規律を正す必要があるようです」
「よろしい。ジュラさんも同じですわよね?」
「は、はい……」
フレイ派から怖い眼で見られているジュラは、肩を震わせていた。
ファンクラブの掟を破った報復をこれから受けるのだろう。
「まぁ、ファンクラブの争いなど、私がアルト様をナンバーワンにするために作るのですが。まずは潰し合ってもらいましょう」
レアが軽く笑う。
完璧にレアの空気に飲まれた会議室は、本題である『アルトファンクラブ創設に対する反対』に対する意見はなかった。
これからファンクラブ戦争が起こる。
フレイ派は粛清が始まり、ヴェイン派は規律が正される。
血のファンクラブ戦争の幕開けであった。
その出来事を、セシリアはドアの隙間から覗いていた。
「は、はわわ……! レア王女殿下にだけは、私の秘密バレないようにしよう……こ、殺される……!」
自分がBL本を書いているとか、しかもアルトも加えようとしているとか……バレる訳にはいかない。
何をされるか分かったものではない……。
そうセシリアが思うと、ふとレアと目が合う。
「あら……セシリアさん……ふふっ」
セシリアがその不敵な笑みを見て思う。
(えっ……なに、なんで笑ってるの!? もしかしてBL書いてるって気付かれてるの!? 気付かれてないの!? どっち!?)
第七話が更新されております!
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