表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/102

64.魔法騎士学園


 魔法騎士学園は王都にあるが、俺たちは寮に入ることにしていた。

 フィレンツェ街から馬車で二日近くかけ、数日の休暇を挟んだのちに、その日はやってきた。


「ウルク、大丈夫?」


 そう声を掛けると、ウルクが頬を赤く染めた。


「……あまり、こっちを見ないでくれ」


 ウルクが馬車から降りず、スカートの裾を必死に押さえていた。


 俺たちが魔法騎士学園へ登校した初日、なぜか堂々と学園の入り口に馬車が止まっていた。

 

 俺も緊張がないと言えば嘘になる。執事服や正装こそ慣れているものの、学生服なんて着たことがない。昔から学校には興味があったけど、通うなんて夢にも思わなかった。 


「なぜ女子はスカートなんだ……短すぎないか……ううっ……」

「似合ってるよ?」


 そういうと、ウルクが恨めしそうに俺を見る。


「アルトはなんでも似合っていると言うだろ……恥ずかしいんだぞ、私は」

「あ、アハハ……」

 

 苦笑いを浮かべる。 

 

(本当のことなんだけどなぁ……)


 アルトは先に馬車を降りて、襟を正す。

 ふぅ……っと息を吐くと、視線が集まっていることに気付いた。


(あれ……なんでこんなに見られてるの?)

 

「な、なぁあの紋章……イスフィール家の紋章だよな……」

「あの貴族っぽい人、学生……みたいけど、知ってる?」

「知らない……でも、イスフィール家の人かな?」


(うわぁ……登校中の人がいっぱいだ……)


 そう思いながら、馬車の中へ手を伸ばす。


「無理そう?」

「いや……大丈夫だ。行こう」


 ウルクが俺の手を掴む。

 

「ありがとう、アルト」

「いえ、これも執事の務めです。お嬢様」


 そういうと、ウルクが目を丸くする。

 

「……ふふっ、なんだそれは」

「俺のことを執事だと思えば、緊張もほぐれるかなって」

「アルトにお嬢様と呼ばれると、少し照れるな」


 緊張がほぐれたようで、アルトがウルクをエスコートする。


 その光景を学生たちは眺めていた。

 

「すげえ……誰だよ、あれ」

「綺麗……」


 アルトの耳にも聞こえ、じっとこちらを見ていた一人の女子生徒と目が合う。


「……っ?」


 アルトは自然に微笑み返した。

 すると、横から声がする。


「アルトくん、君は相変わらずだね……」

「フレイ! 久しぶり!」


 白銀の髪をした美青年が立っていた。

 

「さっそく女の子に目を付けたのかい?」

「目を付けた……? 目が合っただけだから微笑んだだけだけど」

「そういう所だよ。目が合った彼女、照れて走って行っちゃった……ああ、いや、ごめん。君は天然だったね」

「天然……?」


 別に変なことはしてないと思うんだけど。

 ウルクが若干半眼で俺のことを見ているが、なぜだろう。


 フレイの背中から、ひょこっと人影が飛び出す。


 金髪の青年だ。


「やっ! 久しぶり、僕のこと覚えてる?」

「ヴェイン! もちろん覚えてるよ!」


 ヴェインは滅尽の樹魔(エクス・ウッズ)の戦いで、一緒に過ごした友達だ。

 ヴェインは愛人の子として生まれ、誰かに自分を認めて欲しいと躍起になっていたが、お互いの過去を教え合うことで仲良くなった。


 数少ない同性の友達だ。


「学園に来るって聞いてビックリしたよ。アルトと同じ学園で学べる日が来るなんてね」

「そう言ってくれると嬉しいな」


 そこへ、今度は声が響いた。


「アルト様~!」

「レア王女殿下!?」


 俺の胸に飛びつき、首に手を回す。

 あまりの勢いに、落とさないように思わずお姫様抱っこをしてしまう。


「ちょっ! いきなり危ないですよ!」

「アルト様なら抱えてくれると思ってました! 信じてますから!」


 満面の笑みで言う。


「し、信じてるって……」


 それにしたって、凄い飛びつき方だ。

 俺がちゃんとキャッチできて、怪我もしなくて良かった。


「ずっとこの日を待っていたんですよ? アルト様が居なくて、寂しかったんですから!」 

「レア王女殿下……」


 確かに、最近あまり構ってあげることができなかった。

 王女と言う肩書きは苦労も多いだろうし、誰かに甘えたい気持ちも分かる。

 

 ただ……、と辺りを見渡す。


 凄い見られてる……。


「お、おい……レア王女殿下が抱き着いたぞ……!」

「妹様のウルク様なら分かるけど、フレイ様があんなにも親し気に……くっ!」

「ヴェインって、気難しい奴じゃなかったか……?」

 

 突然現れた入学生は、自分たちにとって学園のスターとただならぬ関係に映っていた。


 他の生徒たちは強い興味を抱く。その場にいた全員は、アルトを『コイツ、何者だ』と思う視線を向ける。

 

 だが、アルトはその視線の意味に気付かず首を傾げていた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

となりのヤングジャンプ様より、コミカライズ連載開始!
【世界最強の執事】最強執事の英雄譚、始動!!
クリックすれば読むことができます!
― 新着の感想 ―
[一言] ヴェインもスッカリフレイと仲良しになりましたね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ