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28.お茶会


 イスフィール家の庭園で、お茶会が開かれていた。

 そこには俺も招待されていて、木の日陰でクッキーが置かれたテーブルに座る。


「アルトよ、あれから体の方はどうだ?」

「元気になりました。ご心配をおかけしてすみません」

「ほっほっほ、相変わらず礼儀正しいな。元気になったなら良い」


 そういえば、フレイはもう帰ったんだっけ。


 フレイは暗黒バッタの事件が収束したことで、王都に帰った。

 見送った時、ウルクに向かって泣きじゃくっていたが、軽くあしらわれていたのは少し可哀想に思えた。


「おじい様。王都の方から何か連絡は……?」

「うむ、レア王女殿下がそのことを伝えに来てくれるらしいが……」


 その時、


「アルト様!!」


 レア王女殿下がやってくる。

 怒った様子で、頬を膨らませている。


(な、何か俺悪いことしたかな……)

 

「わたくし、許せません!」

「な、何がでしょうか……」

「お父様がです!」


 お父様……あぁ! 国王陛下のことか。

 王都で何かあったらしく、大層機嫌が悪く見えた。


 そして、レアがさり気なくとんでもない発言を言い出した。


「アルト様に爵位を与えられることとなり、一代限りの男爵の地位が授けられたのですが! 私は子爵くらい与えても良いのではないかと直談判したのです! すると、『お前、勝手に鉱山の金塊を譲って悪用されかけただろ。我儘言える立場か?』と言われたのです! 酷くありませんか⁉」


 突如、レーモンが紅茶を噴き出した。

 さらにはウルクやテットまでもが、唖然とする。

 

「な、なんじゃと……? れ、レア王女よ。今何と言った? アルトに、爵位……?」

「それくらい当然だと思いますが? アルト様ですもの、一気に伯爵にだってなってもおかしくはありません」


 状況が掴めず、レアを宥めていると奇怪な視線を向けられた。


「あ、アルト……分かってないのか? お前……貴族になるんだぞ?」

「へっ……?」


 貴族……俺が?

 いやいや……ないないない。


「本当ですよ? アルト様は名実ともに貴族となるのです。わたくし、嘘は申し上げません。まだ発表されていませんが、一代とは言え貴族は貴族、胸を張ってください」

「……ま、マジですか」


 俺が貴族だなんて……しかも、男爵ってルーベド家と同じだ。

 ……そっか。そんなすごいことをしたんだ。


 ようやく、自分のやったことの大きさを理解できた気がする。


 レアが椅子に座って、クッキーを頬張る。


「はぐっ……まぁ、アルト様の快進撃はここから、だと思いますけどね」

「運が良かっただけです。レア王女殿下やウルクが居たから、暗黒バッタを倒せましたし」

「はぁ……わたくしは金塊の件がバレて、暗黒バッタの変化を見つけた功績と相殺です……」


 なんとも災難……と言えるのだろうか。

 

「どちらかと言えば、大きな悪事に繋がる前に回収できたことは幸運だっただろ?」

「それはそうですが……あら、あらあら……クッキーが無くなってしまいました」

「え……私はまだ一個しか食べていないのに……」


 ウルクが少ししょんぼりとする。

 もう少し食べたかったんだな……。


 小麦粉と砂糖を使ったクッキーはあまり食べられるものではない。


「ほっほっほ、また用意すれば良い。でも、砂糖は高級品じゃからの。暗黒バッタのせいで、しばらくは本当に高かった。今回のことである程度は価格が下がることを願うばかりじゃな」


 砂糖か……。

 そういえば、砂糖は特殊な花から作られていて、育てたり管理するのが本当に難しいと聞いたことがある。


「……確か、サトウ花という植物から取れるんですよね? 一部の魔物や砂糖を食べる虫に襲われたりと育てるのが難しいとか」

「そうじゃ……魔物なら、まだ人を雇えば何とかできるじゃろう。だが……虫の問題はどこへ行っても付き纏って来るの~」


 こればかりは仕方のないこと、とレーモンは思うのか諦観した様子で笑っていた。

 でも、俺はそこに妙案を思いついていた。


「……サトウ花の生産を安定化させる方法、あるかもしれませんね」

「「……っ!!」」

 

 小さくつぶやいた一言に、女性陣が反応する。


「アルト様! それはどういうことでしょうか!」

「アルト、詳しく……っ!!」

「えっと……っ」


 急に詰められ、困惑する。

 それほど砂糖が好きだなんて気づかなかった。


 成功するかは分からないけど、説明してみるか。


「暗黒バッタの変化した奴を使うんだ。肥料バッタだよ」

「ひ、肥料バッタ……? どういう効果があるんだ?」

「害虫を駆除する。作物の栄養を高める。この二つをメインにしたバッタかな」


 鉱石や宝石を食べると、バッタは変化することはみんな知っている。

 でも、俺はさらにその先まで研究した。


「複数の鉱石を【調合】した物を作るんだ。それを暗黒バッタに食べさせると、複数の鉱石の効果を持ったバッタが生まれる。それをサトウ花の生産地に放とうと思っているんだ」


 二つの効果を持ったバッタが生まれることは証明済み。それなら、きっと問題なく機能するだろう。


「……【調合】? も、もしかしてアルト……錬金術が、使えるのかっ?」

「【調合】だけだけどね。大したことじゃないよ」


 何かと【調合】は便利な魔法だ。

 

「普通じゃないのじゃが……まぁ、もう驚くこともあるまい」


 どこか納得されて、みんなが頷く。


「アルト様!! サトウ花の生産を絶対に安定させましょう!」


 お、おう……女性にとって甘いものってそんなに目がないんだ……。

 覚えておこう……。


 そうして、俺を主軸としたサトウ花の安定した生産をするため、すぐに農民が集められた。


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[一言] そこには俺も招待されていて、木の日陰でクッキーが置かれたテーブルに座る。 とありますが、木の日陰=木陰
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