表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遠い思い出にしよう  作者: 橘 楓
2/2

一番憎い相手

私の22年間は普通じゃなかったと思う。


私の人生はずっと誰かのものだった。

長女で育ちいつでも弟

ため、父母のため、親戚のためにいい子にしていなさいと。

大嫌いな勉強をして、朝のごみ捨てでおばあちゃんが近所の人に

「うちの孫、生徒会に入ってるのよ」と自慢できるように私はなんだって頑張った。

けれどいくら頑張っても

「お姉ちゃんなんだから当たり前よね」

と言われてまた新たに目標を勝手に定められてしまうのだ。

逃げ出せばよかったんだと思う。

でも私はできなかった。

嫌われたくなかった。

5歳にして親の愛は無償ではないと知った。

5歳の時なにか悪いことをしたのだろう。

私の小さな手の甲に父が根性焼きをしたのだ。

どんなに熱くて悲しかったか。

数年たってあの時のこと覚えてる?と聞いたときに

「今じゃ虐待だけど父さんはそうされてきた」

と答えた言葉にあきれて笑ってしまったと同時に

この人の血が自分に流れてる気持ち悪さを感じた。

悪いことをすれば容赦もしない父親の手が自分に落ちてくる。

けれど怒ったあとは優しい父親に何事もなかったように戻るのだ。

「俺はお前が大事だと」

今思えばバカみたいだが、幼い私は未成年の私はそれに縋るしかできなかったのだ。

私が保育園生の頃から両親の喧嘩が絶えなかった。

両親が喧嘩する度、父親が

「離婚だ!」

というのだ。

私は幼い弟の耳を塞いでどうにか弟には聞こえないようにしていた。

私は寝る前にいつもお願い事をした。

「両親が離婚しないように」

父親が約束した数カ月先の家族との約束に縋って

あの約束があるから何月までは大丈夫と布団の中で自分に言い聞かせていた。

今思うと自分かかわいそうで仕方がない。

かわいそうと思われるのは好きじゃないけど、自分くらいは当時の自分のことを

丸ごと抱きしめて、かわいそうに思って頭を撫でてやりたい。


私の人生に大きな波を作った出来事がいくつかある。

一つ目は5年生の時に女子の学年で一番大きなグループに入ったときのことだ。

私はそれまでどこのグループにも属さず自由に遊んでいたけどそのグループを少し

うらやましいと思っていた。

入ったときはすごく嬉しかった。母親に自慢できると思った。

だが、そこで始まったのが女子グループの中でルーレット制で毎月いじめの対象が変わるのだ。

バカみたいだった。本当に。

みんな最初はビクビクしているくせに、リーダーの女の子Aコちゃんとしよう。

A子ちゃんが

「明日から○○ちゃんはみんな無視ね」と言うとすんなり言うことを聞いてしまうのだ。

私はその時、「A子ちゃんを泣かせてやりたい」の一心だった。

A子ちゃんの下駄箱にグループ代表として

「もう我慢できないからみんなでグループを抜けます」と書いて手紙を入れたのだ。

だが、次の日面白いことが起きた。

「おい橘!ちょっとこい!」

いつもは怒らない担任の先生が私の名前をすごい顔で呼んでいる。

なんだなんだと思って着いていった視聴覚室で、A子ちゃんのお母さんが泣いていた。

「A子の下駄箱に死ねって書いた手紙を入れたのは橘さんね」

とA子ちゃんのお母さんは私をにらみながらそう言った。

何が起きているのかすぐに分かった。

A子ちゃんが自分で私の書いた手紙に死ねと書き足して母親に泣きついたのだろう。

呆れてA子ちゃんの母親を見て笑ったのをよく覚えている。

きっとこの頃から他人に失望すると笑ってしまう癖ができたんだと思う。

死ねなんて書いていないということと、A子ちゃんが今までしてきたことを赤裸々に話しても

担任も、保健室の先生も誰も信じてくれなかった。

当たり前だ、A子ちゃんの母親はPTAの会長なのだから。

適当に謝ってそのあとどうなったか覚えていないけど、きっと人生で一番許せない相手だと思っている。

憎悪でしかない。

私は学校の先生になりたくて必死で勉強した挙句 、金銭的な問題で大学に行けなかったのだが、

人を何人も傷つけて盛大に嘘をついた相手が一浪して勉学に励むことなく遊んで暮らして今大学に行ってると思うと世界は不公平だなといつも思う。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ