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プロローグ
愛を知らない私が愛を知ってしまうと
何年も守り続けてきた「わたし」がこうも簡単に崩れてしまうのか。
その愛が偽物だと気づいた時にはもう酒を浴びるほど呑み、数少ない友達に話を聞いてもらい
鬱憤を晴らして家に帰ったと思えば、寂しくなって私をこんな風にした化け物に
電話してしまうのだった。
「親の愛は無償だよ」そんな言葉は私にとっては現実味のない言葉で遠い存在だ。
きっと私は一生親に対して無感情なのだろうなと思っていた。
けれど、どんな親でも親は親なのだ。
親の余命を知ったとき、私は涙があふれだして声にならない声で
気づいたら「死なないでと」呟いているのだ。
きっと誰しもが、素敵な思い出も、汚い思い出も全部自分の都合のいいように塗り替えて
都合のいい自分を作り出している。
私は、あの頃を忘れてしまう前に、嘘が本当になってしまう前に書き残したいと思ったのだ。