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武侠少女!絹之大陸交易路を往く!?  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
2章
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人柄は嫌いじゃないのよ、ただね、筋肉がねぇ

「父上、母上、只今戻りました。母上とは練兵場で何度かご挨拶が出来ましたが、父上とは正月以来となり、大変不孝を致しました、お許しの程を」



 初対面時、大柄な義兄だと思った。母さまは今の私と大体同じ位の体格で、毋さまも、どちらかと言うと体格には恵まれていない。


 極拳使いは、多分持久力が必要ないからか、筋肉の肉の部分はあまり発達しない。


 筋の部分が発達するのだが、一概には言えない個人差は有る。わたしの主観では有るが。


 兄さまは軍の鍛錬によるものだろうが、ミッシリとした筋肉密度だ。贅肉の無い力士と言った所だ。


 禁軍近衛兵士、最終的には陛下の肉盾で有る事も求められるのだから、むしろ筋肉体型でなければならないそうだ。


 ちなみに、黄姐と小姐が生理的に最も嫌う体型である。


(兄上の人柄は嫌いじゃ無いのよ、ただ、筋肉がねぇ、キモいのよ、ほら、筋肉の造形って油虫(ゴキブリ)の腹側に似ているじゃない。だから無理)


 だ、そうだ。



「休暇が取れたか、ただ事前に教えろ、近衛兵総兵監の孟殿から連絡がつく様に根回ししたぞ」


 近衛兵士に限らず、兵舎居住の兵士は外部との連絡には制限が掛かる、面会は事前に申告が必要だし、手紙の類いは送返共に検閲される。

 当然時間がかかる。


 これは機密保持の為当然の措置だ。


 ただ、官位を有する高位軍人は役宅を賜るので、大概通いとなる。

 手紙の類いは、彼らの様な高位者に頼めば即日届くのだ。


 勿論、伝が無ければ無理な話だが、近衛兵総兵監の孟は京馨の弟子の一人である。


 矢鱈と弟子が居る様なので少し説明すると、一般門弟の中でも京馨から直接教えを受ける者を外弟子と呼ぶ。

 郭价や孟といった地位、官位を有する者達である、これには皇帝も含まれる。


 王や黄といった極拳の伝承理由で弟子とした者は内弟子と呼び、特に身分による選別は無い。

 ただ、別に内弟子全てが師範位に就かねばならないと言う訳でもなく、生業が他に有る事が普通である。分館として道場主を務める者も居る。


 遨家として門下は南遨家、墨家となり、これは京馨個人の子弟では無いが、遨家総帥である京馨からしたら分派子弟家となる。誇大に解釈すれば、禁軍もこれに該当する。


 つまり京馨は、公人としての弟子と、極拳士としての弟子と、遨家総帥としての子弟家を抱えている事になり、私的な弟子の小馨を加えて四種類の弟子の面倒を見ている。


「申し訳有りません、昨日許可が下りたのですが、孟様は非番でしたので」


「まあ、良いではないか京馨。奉可、朝食は取ってきたのか、今乳製品の食を研究させていてな、まだならば試食してくれ」


「父上、先ずは私に挨拶をさせて下さい」

 正式差手礼で()()が挨拶する。


「随分とお久しぶりです兄上、大分お変わりになられて驚きました。兵書を朗読されていた頃からしたら、まるで別人の様に鍛えられましたね、文人志望と思っていたので武人仕官をなさるとは思いませんでした」


(わたしも挨拶するから替わるよ)


「初めまして兄さま、遨家に養女として迎えられました、胡小馨と申します。よろしくお願いします」


「え、あぁ、うん、奉可と云います、こちらこそよろしく。いや、母上から聞いてはいたけれど、驚いた。本当に可馨だ、小馨…とはまるで雰囲気が違うからこれは本当だ」


「馬鹿者、そんな挨拶が有るか、やり直せ奉可」

 ごもっともと頷いて正式差手礼をとる。


「初めまして小馨殿、私は奉可、貴女の兄になる。今は禁軍近衛兵士として、禁城の兵舎に詰めているから挨拶が遅れてしまい申し訳無い。

 妹の可馨が大変()()になっている様で申し訳無くも感謝している、以後よろしく。

 可馨、相変わらず物言いが賢い、懐かしくも嬉しく思う。よくぞ帰ってきてくれた」


 そう言うと互いに終礼した。


「奉可、休暇は何時までだ、可丘殿が今日から天湊に出掛けてしまうのだ、長い休みは貰えたのか」


「何と父上、間の悪い事で。十日の休暇をいただいたのですが、天湊ではほぼ入れ違いではありませんか」


 洛都~天湊間は徒歩で三日の旅程だ、往復で六日だから用事入れてほぼ十日だ。天候如何では更に旅程は伸びる。


「ああ、新街道予定路を視察しながらだから十日は越すかな、だが今回は残念だったが非番時に帰宅するのだろ、新しい妹が出来たのだから」


「勿論ですよ、父上」


「全く家に寄り付かなくなったからな。まあこれからはマメに帰って来るなら不問にするがな」


 こうして兄さまとの初対面挨拶は終ったのだが、兄さまは妙な所で好奇心が強く、色々と聞かれた。


 ただ、母さまが話を誘導した。どうやら設定の方で兄さまには話を通しているらしい。


 設定上では、母さまの遠縁のわたしに、可小姐の魂が適合するので旱導師が反魂施術をした事になっている。


 あながち外れでもない設定だ、わたしの戸籍諸々が細工の上に成り立っているから丁度良い。


 わたしは洛都から南西七百里(約280㎞)に位置する胡家荘の出になっている。母さまの祖母さまの出身地だ。


 胡家荘はその名の通り、元々は胡人による開拓村であったそうだが、現在では地方都市として栄えている()()()


 設定上の話なので、わたしは行った事すら無い。


 わたしは祖母さまの実家の家系で、先祖返りで赤毛で生まれた()()()


 貧困家庭で、貧困を見かねた王家の頼みで母さまが養女としてわたしを迎えた事になっていた。反魂諸々の説明は相手によりけりだ。


 王家と胡家は親戚で王家宰の実家でもある。つまりわたしは王家宰とも親戚()()()()()


 地方では、七つになるまで出生届を出さないのが一般的だ。


 無事に育つか分からないからで、更に女の場合、婚姻時に出生届と婚姻届を提出することもザラだそうな。


 無戸籍なので手形が発行されないわたしは、浮浪孤児の()()で洛都に入関した()()()


 前にも言ったが、浮浪孤児は扱いが犬猫家畜と同じなので、開門中他者に紛れて通関しようが、態々誰何する者も居ない。


 徒手なのは、母さまが適当に言った“従者に荷物を持ち逃げされた”設定がそのまま採用されたからだ。


 因みにこれは王家宰の考えた設定で、王家宰は作家としての才能も有ると思う。

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