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武侠少女!絹之大陸交易路を往く!?  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
2章
83/156

庖殿と仰いましたな………フム。

「お呼び立てして申し訳ありません、毋大人」


(パァォ)様と仰いましたか、他ならない劉殿の頼みなのでこうして面会いたしましたが、面談予約を事前に欲しかったですな」


 ここは商談などでよく使われる老舗料亭の内庭亭内だ。


 周囲を見渡せるので、密談に向く会合場である。


 昼前に洛都に戻ったばかりの毋としては、本日は休息をしたかった。()とゆっくりしようと思っていたのだ。


 劉は、今回の平陳区街道拡張工事を請け負った建築土木業者の代表だ。件の乳製品の協同出資者でもある。

 比較的大規模な公共事業では有ったが、毋としては、今回の事業は、言わば顔繋ぎ兼実績造りが目的だ。


 本命は洛都、天湊間の新街道造成事業にある。

 造成工事は決定事項であり、後は入札による業者の選定待ちだ。


 近頃、建設省建設土木局開業府局長と伝が出来たので、何とか建築関係に事業展開出来ないものかと思案行動中であった。


 因みに、劉が代表の建築土木組合にも、既に出資済みである。


 さて、建築土木()()()()とは、些か他業種からすれば異質な感じではあるが、これは仕方ない。


 土木工事とは、大なり小なり公共事業で所在、所属が明らかでない人足は投入出来ない。

 事業所、事業者が定かであり信頼が有る事が求められる。


 ここまでは他業種もそうで有ろう。ただ、規模が大きな国家事業の工事となると、従事する人足も万単位で必要となり、常時その人員を確保している事業所などは当然皆無である。


 なので大概の土木工事事業所は10~20人位の人員で一事業所として、工事規模により数個事業所を投入する訳である。


 それら複数事業所を組合として囲い、代表として取り仕切るのが劉の様な事業者である。


 毋は(よろず)投資実業家であるが、劉は建築専門投資実業家と言った所か。


 それぞれが独立事業所では有るが、劉の資金が投資されていて、資金返済が成されるまで法的に劉も経営に参加出来るのだ。


 なので、複数事業所の経営に見合う仕事の入札するために、劉は組合の設備投資や人材育成を手掛けていた、当然資金は有れば有るほど良い。


 毋はその劉の組合に投資をしている、つまり劉の金主で有った。


「……何分大人が御多忙に過ぎまして、伝を辿り劉殿に大人の面会依頼を取り付けるまで時が掛かりすぎましたので。

 何でも明日には天湊に発たれるとか」


「はい、劉殿と現場の下見に出たついでに、天湊でも活動拠点を開こうと考えておりまして」


「いや、毋大人、急な面会依願で申し訳無い、明日からの旅程で話を通すべきなのだろうが、

後日では、こちらの庖殿の都合が合わなくなってしまうのだ。今日がたまたま双方の都合がついたのだ」


「成程、理解しました。して庖大人、大人も建築土木業組合を抱えている代表者で在られるとの事ですが、此度はどのような御用向きですかな」


 通例的に、会談がまとまるまで飲食物は饗応されない。理由は色々だが、そもそも会食を楽しむ為に集まった訳では無い。


「では短刀直入に言いますと、天湊の新街道造成事業。こちらの入札は毋大人に辞退していただきたいのです。毋大人は先頃の平陳区の街道整備を請け負い大いに潤われた筈。

 何卒、他の組合にも儲けさせていただきたいのです」


「な!」

 これは劉。彼も会談内容は知らされていなかった。他組合代表が、金主に面談を求める場合、資金援助を求める話がほとんどだからだ。


 彼としては、大事業参加にあたり、毋の下に付く組合を増やしてやろうと云う心算だったのだ、当然打算や思惑も有る。


 だが、単純に毋がこの業界で実力を高めてくれた方が、彼としても楽なのだ。


 本来ならば、これは金主同士でされる内容だ。


 先方の組合規模からして、金主が複数存在する筈であるが、そちらからの打診は無い。


 つまり庖が自己資金のみで組合を運営しているか、若しくは先方の金主が毋を下目と舐めて、庖に一任している事が考えられる。


 これは、洛都で事業展開している人間にはあり得ない事だ。


 毋の人脈は多岐に渡る、建築関係はまだこれからといった所だが、商業関係、軍関係、輸送関係、宗教(これは旦那寺関係、高額喜捨で院号を贈られている)に顔が利く。


 何よりも遨家の後ろ楯が有る、毋と対立する事は、遨家と対立する事だ。


 なので洛都拠点の事業者ならば、毋を下に見る事はまずしない。


「庖殿、自分が何を言っているのか分かっているのか?こちらの毋大人を侮っているのか?

 私はこの様な無礼を受ける為に、毋大人の貴重なお時間を割いてしまったのか」


 きつい口調だが、これも交渉術だ。


 妥協点を探る為に受け入れ不能条件を先に提示する事は常道だ。


 劉としても、海千山千だ、受け入れ不能を提示したのだ。


「……そこを伏してお願いする。此度の新街道造成事業、込み入った事情が有るのです。

 毋大人、大人は建築土木の業界では新参なのでお分かりで無いでしょうが、事は造成工事のみに収まらないのですよ」


「庖殿、成る程毋大人はこちらの業界では新参で、通例慣習に疎い事もお有りだ、だが私はこの業界で永らく活動をしている。その私が毋大人を推して新規事業参入をしているのだ、

 込み入った事情と仰るが、それが毋大人に何の関わりが有ると言うのだ」


「劉殿、劉殿は我等の後ろに誰が居るのかお分かりか、その御方が此度の新街道造成事業に新参者の参入を望んでいないのですよ」


「成る程、つまり我等は信頼が置けないと、その御方が名指しで弾いた訳ですか。

 庖殿と仰いましたな、貴方は開業府洛都の出自では有りませんな」


「全く。毋大人、この様な奴腹に面会願った事を深く御詫びいたします」


 これには庖も顔色が変わった。

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