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武侠少女!絹之大陸交易路を往く!?  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
2章
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誘拐未遂の件ならば。今日はそれにしよう

「いや、堪能したな。昼、晩と蟹尽くしだったからな、まだ海老も有るし明日が楽しみだ」


 何だかんだで日が暮れた。ここは客室内だ、善順は隣の客室に放り込んだ、まさか同室と云う訳には行かない。


「白太郎の扱いが分かった気がします」


 大漁だった。たまたま蟹の生息圏だったのか、全部で100匹は捕まえただろう。


 漁師にでもなろうか、洛都で変態冊子を書いているより余程マシだと思う。


 蟹は周海運に無償提供した。流石に100匹も生け簀に入らない、ならばと盛大に食べる事にしたのだが……


 流石に海の男達、次から次へと消化していき、蟹は食べきった。


 面白かった。不覚にも感動した。


 人とは何て偉大な胃袋を有しているのか。


 屈強な男達が、半泣き状態で黙々と蟹を咀嚼するのだ、確かそんな拷問が有った気がする。


 大食いも芸になるのだと感心した。


 明日の()()()()()が楽しみだ、マジで。


 こちらは5~60匹は捕まえてある、生け簀の中は大海老だらけだ。


 そうだな、大食い大会に賞金を積んでやろう、それだけの見応えと価値はある。


 船長から泣きが入り、蟹、海老漁は禁止された。明日からは干物に成るような海草でも漁ろうか?


(いいにしときな、それよりやっぱ大姐の魂も白太郎に混ぜな、意識添付できる様になるからそっちに意識飛ばせて退屈はしないよ)


 因みにマルコ君は意識添付は出来ない、いや出来なくは無いけれど、本体に意識が無くなるから危険だ。

 わたし達の様に意識が二つ無ければ無理だ。


 なので、マルコ君は意識が一つしか無いと知れる。同魂はやはり考え難い。


 まあ、輸魂の件は考えて置こう。小姐は慣れているから簡単に言うが、意識、思考を他に移すなど本来ならば大事だ。


 わたしは左道使いでは無いのだ。視界同調くらいで大体事足りるし。


「あの、胡姐。昨日の話の続きをせがんでも良いですか?胡姐の話は面白いので」


「そうかい、何処まで話したか」


「はい、人の、いや胡姐や師匠の周りにいる人達はとても愛情が深く、聞いていて心が温まります。私には縁の無かった事なので面白いですよ」


「ああ、洛都に着いたら紹介するよ。ただ、母さまは怒っているだろうな……」


(まあ、怒られな。全の手配で通行手形を手に入れたけど、やった事は密出関だからね)


 わたしが一人暮らしを始めた時、黄叔叔についポロリと、“旅に出たい”と溢したのだが、それを伝え聞いた母さまが、わたしに通行手形が発行されない様に手を回したのだ。


 現、治安維持庁長官、兼、洛都治安維持警邏局総監の郭价様に頼み込んだ様だ。郭价様は母さまの弟子なのだが……


 郭价様は変人だ。何せわたしの手形発行防止の為に、わたしを参考人出頭手配処置にしたくらいだ。


 怒った母さまは郭价様の所に捩じ込むが、そこで何やら取引が成されたらしく、和解?したらしい。


 まあ、その頃は荒れていて、楊親分を助けて似非侠客を伸して暴れていたから、全く罪科が無い訳ではないのだが……


 治安維持警邏局から参考人として出頭手配された事で、わたしは表向き遨家と切れたと周知された。


 謀反騒動が一段落した頃だ、一部の士大夫は騒動の中心近くにわたしが位置していた事を知っている。


 なので、それ関係での処置だとは思うのだが……わたしに接近を図った敵性士大夫の検挙も成された事では有るし……


 ただ何分、郭价様は本当に変人だ。他にも理由が有るのは間違い無い。母さまが大人しく引っ込んだくらいだから。


 つまりわたしは、わたしの知らない所で手形発行禁止になっていた訳だから、わたしは強行手段に出た訳なのだ。


 全の依頼の裏も取らず乗ったのは、こうした閉塞感の打破や反抗心の現れは否めない。


「?どうかしましたか?胡姐の都合の悪い事は話さなくても構わないですよ」


「いや、そうでは無くて、今更ながら母さまや黄姐が怒っているだろうなと思ってね」


「その……ごめんなさい」


「ん?マルコ君が謝る理由は無いだろ、今回の事は仕組まれた事だ、第一、マルコ君が一番の被害者だ」


「ですが、お話から胡姐と師匠は、周囲に愛されていたことが分かります。申し訳無く思います」


「あのまま洛都で不貞腐れているくらいならば、糞導師の策に乗ったがマシだ。自惚れていると思うだろうけど、小姐と一緒ならばわたし達は無敵だ」


(そうそう、それに巣立ちの時期でも有ったのよ、私も外の世界を見たかったし)


「今回だって如娥様や黻陵様、亮順様や豪順様、高師範や周一家と出会えた。マルコ君にもね、だからこの旅も悪い物じゃないよ」


(………同意ではあるけど、神々の御降臨御顕現を同一線上に捉えるのは、流石に不敬だよ)


 まあ、良いじゃん。簪の印のお蔭か、お二方がとても身近に感じる。


「さてと、そう、誘拐未遂事件の所だったね、結果、毋様は小姐の反魂を受け入れて感情も落ち着いたけど、わたし的には黄姐の変化の方が印象深いよ」


「と、言いますと?話の感じでは、胡姐の専属侍女として以上に胡姐に忠実な様子ですが」


「こういう線引きは嫌だけど、黄姐は忠誠過多だよ、あくまでわたしに仕える姿勢が崩れない。厳密には既に主従じゃ無いんだが……頑固だからねぇ」


「え?どういう事ですか」


「マルコ君には話して無かったかな、わたしは遨家を勘当されている。養女のままでは有るが、遨家仕官侍女長で、遨家極拳筆頭師範である黄姐が、わたしに仕えるには筋が違うんだ」


「勘当?ですか」


「そうか、そこからか。勘当とは一番軽い絶縁処分の事だよ、対外的に無関係と公言するだけの処分だ。戸籍上にどうこうする訳じゃ無いから、復縁は簡単にできる。

 わたしの場合………まあ、小姐関係で勘当されたんだが……」


(………何か今回はマジ怒っぽいから茶化さないけど、しつこい!)


「言葉を濁してばかりですが、可狐師匠は一体何をしたのですか?」


「済まない、制約で話せない。口外法度と、やんごとない身分の御方と約束をしたからね。まあ、この国を出国したら話せるかな?」


(………もう一度だけでも、お会いしたいなぁ……今、本気で怒ったね、言っただけよ、流石にね………)


 ……頼むぜぇ。


「誘拐未遂の件なら話せるから、今日はそれを。

 黄姐はこの事件を発端として、極拳内の序列を上げていったんだよ」


 そして、わたしは語り始めた。

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