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武侠少女!絹之大陸交易路を往く!?  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
2章
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いえ、私は高級娼館で生まれました

「言葉は、この国への道中に覚えさせられました。二度目に購入した奴隷商が、最初から私をこの国で売るつもりでしたので。

 ただ……この体になってから、細かい発音とかが自然と出来ますね、導師が何かしたのでしょうか?」


「それなんだがマルコ君。その体は元々自分の体で、導師が外見を変えただけとかは無いか?」


「それはありません、体格が、背丈が縮んでいます。大体頭半分位視線が低くなっています。人種も違いますし……」


「人種?胡人にも人種の違いが有るのかい?ローマヌスは白人種と聞いたが?」


「ローマヌスは国際都市ですよ、多様な民族、人種がいます。私は母が南方大陸の血を引いているので、黒人種と白人種の更に混血の果てなのです」


「雑胡?で良いのかな」


「はい、大雑把に分類するならばそうです。元々は、薄い褐色肌の黒髪黒目なんですよ、ただ骨格特徴は白人種の物で、今の体は明らかに違うのです、体年齢的には6才位でしょうか」


「金毛、翠眼、白色肌で体年齢6才か、確かに別人だろうね」


「はい、ローマヌスから更に北方の厳寒地に住む人達に多い人種特徴です、友人に多かったですね」


 南方大陸と云う響きに琴線が触れたが、そっちは後だ、昔黄叔叔に聞き齧ったから興味が有る。


「……教育は、その奴隷商から受けたのかい?」


 ここが一番不思議だった。言葉は、必要に駈られるから覚えるのは早い。


 現にわたしが基本文字を覚えるのに、小姐が付ききりで家庭教師をしてくれた事も有るが二月はかからなかった。


 だが、品性は別だ。生まれついてから、そう教育されなければ身に付かない。


 小姐がそうだ。ここ最近斜口を覚えたが、元々の育ちが良いので、巫山戯ている風にしか聞こえない。


 わたしが悪食だと嗜めたり、飲茶店主とのやり取りを下品と叱ったりと、それが自然に感情に表れる。


 方やわたしは、物心付いた頃から極貧民街の住人だ。


 大分矯正され礼法を教わったが、基本的な感覚は大して変化していない。


 例えば草を見て、それを雑草と見るか食用菜葉と見るかでは、わたしは食べれる草なら食用と見る。

 酔うとそれが顕著となり、家格越しに人間性、品格を見られて引かれてしまう。


 マルコ君にはそれがなく、感性は小姐同様上品だ。

 生まれてから飢える環境に無かったのだろう。食事一つ取っても、食器の扱い、仕草、作法、見ていて不快に感じる事が無い。


 ローマヌスの倫理、道徳感は知らない。ただ、人身売買が罷り通るのだから、こちらと大差無いだろう。だから国民皆上品では有るまい。


 つまりマルコ君は品性が下劣化しない環境下で、高等な教育を受けていた筈だ。それは一般人では考えにくい。


 こちらで言う士大夫階級、または、資産家階級に所属していたと考えていたのだが、どうだろうか?


 突飛な発想ではあるが、身代金目当てで誘拐され、そのまま売り飛ばされたと考えた方が、通りが良い。


「いえ、私は高級娼館で生まれ、そこで教育を受けました」


「何と!」

(何と!)


「こちらに似た様な娼館が有るのかは知りませんが、故国の高級娼婦は上級階級しか相手にしませんし、契約者一人しか客にしません。

 娼婦と言うより愛人契約者でしょうか」


「何と!」

(何と!)


「上級階級者の子供なので、認知されて引き取られる事も有るので、教養を身に付けさせられるのです。

 私の場合、両親供に認知引き取り拒否をされたので、教育終了後、高級男娼として売買される事となりました」


「そうか……言いにくい話だったろうに、よく話してくれた。そこまでわたし達を信頼してくれたと解釈するよ」


(………ねえ、マルコ君。それならば故国にそれほど思い入れも無いんじゃないないかな?この国で私達と暮らさない?)


「そうだな、マルコ君。わたし達は君を気に入ったしどうだい?善順にもした話だけど、わたしの養子なり何なりにして、身分は保証するよ」


「………有難うございます、でも、折角のお話ですが……やはり帰りたいです。……この国は……怖い」


「怖い?この国が?」


「はいとても。この国の人は私の理解を越えている、あまりに頓着が無さすぎる、命に、血に、傷みに、宗教に、奇跡に、神に。

 私には怖くて堪らないのです。もう、意味もなく死にたく無い、………帰りたい」


 マルコ君がポロリと涙を溢した。


「分かった、わたしが絶対にローマヌスへ連れていくから安心してくれ」


 そう言うと日課となっていた頭撫でをした。

 確かにこの数日は奇妙な事の連続だった、マルコ君が慄くのも当然だ。可哀想にな。


(……ねえ、大姐。マルちゃんが怖がった事の大半が大姐絡みなんじゃ……)


 はあ?何言っているのこの小娘は、わたしが何時そんな妙な事した。


(……マジで言ってるもんね、やっぱ大姐はスゲぇや)


「有難うございます、胡姐……」


 バシャン!


 マルコ君の言葉を遮って、わたし達のいる後部甲板に打ち上げられた物が有った。


「……いや、そりゃ確かにわたしは言ったけどさ」


 放置していた三が、デッカイ海亀を咥えて海から上がって来たのだ。鼠捕まえた猫かよ、三!


(おやおや、何で分かった、どうやら三の主格が動物靈、化猫系で統合したかな)


 何だよ化猫系って?


(士の主格もそうだけど、旱導師の人造黒靈が混ざっている。士は犬蠱靈で三は化猫靈。犬は従順だから使役しやすいけど、猫はねえ…反目しあって纏まらなかった)


 言葉の響きから碌でもない術なんだろうな。


(まあね、今日日蠱毒なんか施術したら死罪だよ、古い犬蠱みたいだけどさ。化猫は生体を捕獲後黒靈化するの、化猫系は強力だから)


 何だ?化猫の生体って?


(猫は十年野良で生きると化猫化するよ、見た目は変わらないけど、矢鱈と知恵がつく)


 ふうん、それで最近三が猫っぽいのか。


 騒ぎを聞き付けて船長がすっ飛んできた、船長職は暇なのか?


 善順も興奮気味で海亀を検分していた、そうだ、こいつに振って誤魔化すか。

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