御御柱は黻陵様
久しいな二人も、息災であったか。
え?いえ、如娥様、昨日お会いしましたが。
如娥様では無い?母さまとは感じが違う。
む、そうであったか。成る程、如娥はこの時間軸に定めたのだな、成る程、成る程。
何れの大神に在られましょうや、昨日顕現された如娥様と、比肩される神格の大神とお見受け致しますが。
可馨と言ったか、畏まり過ぎである。我はニィヨガで有り、フツリオゥで有る
え?
うん?
其方達に礼をしたくて探していた。ニィヨガに奉じられた魂滴を手繰った所、この時間軸に出たのだ。
すると、フツリオゥ様、黻陵様で在られましたか。 幾つか理解の及ばない点が御座いますが、御尋ねしても宜しいでしょうか?
ははは、可馨とやら、相変わらずだ。其方は考え過ぎる性分だ、何でも聞くが良い。
はて、やはり如娥様で在られる。
小馨と言ったの、我は同じ存在だ、如娥であり黻陵である。夫婦神とされたが、さても面白い事よ。
と、申されますと。
うん、人は我に母性を求めた。それが如娥であり大地神格に定着した。父性の顕現が黻陵であり、こちらは海神格となった。
それがいつの間にか夫婦神と崇められ、別神格で祀られた。
一神二役で有りますか。
ははは、そうだ小馨。その理解が一番しっくりくるな。
それでは黻陵様、何やら不思議な事を仰っておられましたが、如娥様がこちらの時間……軸と言われたのは如何なる意味なのですか?
それよ、我はこれより先の時間世界に顕現しておった、其方達のお陰でな、有り難い事よ。
黻陵様の感謝の感情が広がる、純粋に嬉しくなった。
ああ、やはり大神に在られる、居わすだけでも神威が溢れ畏れ多いけれど、同時に心が満たされる。
其方達が広州と云う南の地に、我等の廟を建立したのだろう。日々魂滴を奉じられ、我等を楽しませようと舞いを献じられ、大いに満足しておる。如娥など、たまに一緒に舞いおる。
いえ、黻陵様。廟の建立は提案いたしましたが、それも昨日の事でして、黻陵様の感謝を受けるには参りません。
つまり、黻陵様はこれから建立される廟のお礼に参られた訳ですか?これから成す事にお礼を頂いては……それでは余りに畏れ多い事です。
なんの、我等が顕現した広州では、大層な信仰を集めておった。
近頃人との関わりが薄くなって、寂しく感じておった我等にしてみれば、二人の発願による廟建立は誠に喜ばしい事であるのだ。
はて、黻陵様。お話しからして、先々の時間での事とは理解致しましたが、そちらの我々には会わなかったのでしょうか。
いや、この時間世界の其方達に会いたかった様であるな、ははは。
して、廟近海に小馨の魂滴を感じたではないか。それをたどりここに在る訳だがの、時間を飛び越した。如娥が其方達を気に入ったのであろう、この時間軸に気を留めおる。
流石です黻陵様、わたしは如娥様を大層気に入りましたので、昨日より信仰いたしましたが、黻陵様も同一の存在で在られるならば、同じく信仰いたします。
ははは、嬉しい事を言ってくれる。うん、小馨。其方、ウゥに似ておる、如娥が気に入る訳だ。
黻陵様、御尋ね宜しいでしょうか?
うん、何であるか。
はい、先程から感じていたのですが、黻陵様は先々の事や、先日の事柄を、まるで今しがたの様に語られますが、どの様に解釈すればよろしいのか。
過去の事はまだしも、これからの事を過去の事象として語られますので、困惑いたします。
長いよ小姐。
どこがよ大姐。ものすごい事なのよ、つまり、先々の事象は予め定まって……
ははは、仲良き事だ。可馨よそんな事は無いぞ、先々の事は無数に同時並行に存在するのう。
我々は可馨達と出会った展開での我等であるからのう。当然出会わなかった展開での我々も存在する。
え?それでは……
天下は一つでは無いの、ほぼ無限に同時に存在する。我等はそれら無限の天下を睥睨する存在であるのう。
その睥睨する我等すら、同時に無数に存在するのだ。
誠に世界は広大無辺であるの。
流石、流石です黻陵様、如娥様!わたしは大層驚きました、流石です!
え?あの?いえ、どのような?どういう?
小姐、察しが悪い。数多ある天下の内の一つがここだ。さらにここから無数に枝分かれする天下がある。
如娥様や黻陵様はそれらの天下を往来出来る神力を御持ちなのだ、なんと偉大なのだ。
それほどでも無いぞ小馨、我等は同魂を含め人々に想われてこその存在だ。永劫に生きられる人と違い、忘れられれば消滅する有限の存在なのだよ。
だから我等を信仰する者達の増加は、大変喜ばしい。
ご冗談を、黻陵様や如娥様こそが永劫を生きられるのであって、人こそが有限の生では有りませんか。
ははは、以前に教えたぞ小馨。人は天下を循環する雨のようなものだと、肉体の入れ替わりなど、蛇の脱皮のようなものだと。魂こそが本質で有ると。
黻陵様、如娥様。最後の部分は初耳です。魂こそが人の本質なのですか。
如何にも。どうやら別の時間世界の其方達にした話の様であった。うん、成る程、成る程。
如何されましたか、黻陵様。
うん、我等が何故この時間世界の其方達に、謝意を伝えに来たのかが知れた。
如娥が其方達の母者と接触したの。
いえ、昨日の今日なので、母さまに如娥様と接触する術など知り様が有りませんが。
名入の絡奉納が如娥様との交信方法なので、絡奉納自体を知らない母上には、出来る術ではありません。
いや、これより先々の時間世界での話である。其方達から教わったのだな。
成る程、確かに愉快な母者であるな、それに其方達の事を大層案じておる。
うん、広州の廟建立に、其方達の母者も大層尽力したのだな、如娥が其方の母者の願いを聞き届け、其方達の庇護を請け負うた。
我等がここにこうして礼に出向いたのも、この為であったのだな。
???どゆこと???
これより先に起こる事態を起因とされては、人に理解できる訳がありません。黻陵様。
ははは、良いではないか。我も其方達が気に入った。そうさな、小馨、其方のその簪に印をしよう。
銀の簪ですか?
うん、これで何処の時間世界からでも其方達の居場所が知れる。我等の助力が必要な時に、その簪に語り掛けると良い。
な、なんと、有り難いくも勿体無い。
ははは、良いでないか、我等の感謝だ。ではまたな。
そう言い残すと、黻陵様は何処へと去っていった。
如娥様もそうで在られたが、本当に唐突に降臨されたかと思えば、お帰りも唐突で有られる。
神様は皆そうなのだろうか。




