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武侠少女!絹之大陸交易路を往く!?  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
2章
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任侠物が最近のお気になんだ♪

「叔叔、今日は本当に為になった、有難う」


 黄学習学問所玄関で挨拶を交わす。


「何の、胡娘の聡明さ有っての学習だ、胡娘もその内経験するかも知れないが、教え子が成長する事は、自身が成長する様に感じる物だ。

 儂も感ずる所も有った、有難う」


 そう言うと黄叔叔は立礼差手で送礼をしてきた。

 流石にわたしも送別礼は覚えた。


「では、また明日。再会」

 こちらも立礼差手で応礼だ。


 玄関は李昆が開ける、基本主人は歩く以外の行動はしない、声を掛けるのも黄姐にだけとなる。


 李兄を先頭にして、学問所を出る。


 さて、門内は流石に何とも無いが、門外となると黄家の及ぶ所ではない。


 黄学習学問所に通う商家生徒の()()()()、或いは主人などが腰を低くして待ち構えている。

 生徒自身では無いのが味噌だ。


 いや、チラホラ子供も見える、わたし位の子供だから、午前の学習だろう、家人と共に控えている。


 不躾に話しかけて来る者は居ない、通い始めた頃は居ることは居たが、李昆と黄姐が発経をして威嚇したため、極拳の存在を改めて思い出した様子だ。


 まあ、その頃打った小芝居が効いている事もあるだろう。


 なのでそれぞれの商家が、わたしとは身分的な距離を取り、屋号と扱い商品を大きく書いた、又は染め抜いた幟を掲げている。


 大店などは商品見本を展示だ。正に門前市を成す状態だ。


 通い始めた当初は、わたしあてとは思わなかったので、不定期市が黄家門前に立ったと思い、呑気に眺めていた。そしたらここぞとばかりの売り込みだ。


 遨家には当然出入りの商家が有る。なのでこの売り込みは、胡姓であるわたし個人に対する物だ。


 ここで件の黄姐と李兄による発経威嚇だ。


 従者が少なく、幼児と見て攻勢を掛けてきたのだ、つまり与し易しと舐められたのだけど、李昆はどうやら上級拳士らしい。


 黄姐の倍は発経音が大きい、商家の人間は震え上がった。


「狼藉者め!遨家を侮るか!こちらに御座すは遨家御令嬢に有られる、身の程を弁えよ!」


「浅ましく紹介状も無く売り込みか!胡家をそこまで下に見るか!無礼者!」


 最初、わたしの事を言っているとは思わなかった。李兄と黄姐がなんか怒っている位にしか感じずポカンとしたものだ。


 慌てて平伏する大人たちに、居たたまれなさを感じたので、黄姐の所に逃げた。


 黄姐は“何も心配する事は有りません小馨様”と優しくあやしてくれたが、わたしはそこまで幼くはない。

 見上げると、黄姐が目配せをする。


「貴様達!貴人に対する不敬の数々、許しがたい、おい警邏を呼べ」

 李兄は追加で発経威嚇をする。


 しどろもどろで商家家人達は言い訳や謝罪をした。黄姐が李兄に続く。


「あなた方は高位朝臣家、三品官位を何だと思っているのだ。こちらの胡小馨様は、遨家御当主様がたっての願いで御養子に迎えられたお方、本来ならあなた方が目通り叶う事は無いのだ、それをこんなにも怯えさせるとは、赦し難い!」


 再び黄姐の目配せだ、段々この寸劇が分かってきた。


「びっくりしただけだよ、大丈夫。警邏は呼ばなくていいよ、大事になると母さまが心配する」

 黄姐が小さく頷いた、わたしの台詞はマズマズだったのだろう。


「貴様達、お嬢様に何か言う事は無いのか、お嬢様は貴様達の無体を不問にすると仰られる。……それとも遨家と対立するか」


 口々にわたしに対して謝罪と寛容に対する感謝を述べる。


 とっさにこの寸劇に調子を合わせたが、この時は意味が分からなかった。


 そんな事がこの門前市に有ったのだけど、今日黄叔叔に諭されて、何となく意味が分かった。


 身分。これは威張る為、または威張られない為に有るんじゃ無い事に。


 この時、もしナアナアにすれば、商人達は慢心し、次はわたしに脅迫紛いの売り込みが有るかも知れない。

 当然大事になる、黄姐は頑固だ、宣言通り排除に出るだろう、最悪死傷者が出て警邏官吏の出番になる。


 それを未然に防ぐ意味でも、殊更身分差を振りかざしたのだ。嫌な役割だけど、結局誰も傷が付かないで済む。()()も買わないで済む。


 あれっ?


 わたしは目敏く、とある書店展示棚の冊子を見やる。

 黄家と付き合いの有る書類冊子商人だろう、わたしが見易い様にと、低い目線に合わせた折り畳み販売棚に、最近読み耽っていた任侠活劇冊子の新刊が展示してあった。


 飛び付いて手に取りたい所だけれど、そうも行かない。


 本式の礼事は黄叔叔から習う予定だが、恥を掻かない程度の礼儀作法は黄姐から教わっていた。


 なので、わたしは黄姐に伝える。


「文楽堂、お嬢様がそちらの書籍に興味をお持ちだ、後で屋敷に届ける様に。他にも同系の書籍が有るならば届けて欲しい。お嬢様が気にいられたら一緒に買い上げよう」


 直接商人に話かけては駄目なのだそうな、


 そう言えば母さまと初対面時に、母さまが王家宰に小言をもらったのも、わたしに直接話かけたからだった。


 浮浪孤児だったわたしと違い、礼を弁えた商人が、おかしな返答などするわけが無いので構わないと思うのだけど、これは言質を取られない為にするのだそうな。


 遨家の養子と云う身分は、わたしが思っていた以上に重い様だ。………正直面倒臭い。


 わたしはつばの大きな帽子を被っている。健康的な理由より顔を見られない様にする事が大きな目的だが、これはもうひとつ、いや二つ理由が有る。


 わたしは、兎に角顔に出る。黄姐と会ったばかりの頃、百面相を呈して笑われた事があった。

 それを防ぐ、と言うか、百面相を見られなくするのがひとつ目の理由だ。


 二つ目の理由だが、まあ、百面相を見られなくすると云う意味では、ひとつ目と同じだ。

 こちらは、どちらかと言えば独り漫才なのだが、端から見れば同じだろう。


 ……なにを遠回しに言っているのかと云うと。


(ただいま胡大姐、少し試したい事が有るんだけど)


 可小姐との対話で、どうしても独り漫才になってしまうからだ。

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