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武侠少女!絹之大陸交易路を往く!?  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
2章
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昔から黒靈が悪さをしてたのか、要研究かな

(今年に入って二度目?)


 頻度が多すぎる、と言うより鎌鼬自体が事実事象であったとは。

 犯人は黒靈。これはたった今目撃したから間違い無い。


 民間伝承になるくらいだから、昔から黒靈は、人を襲い生霊を取り込んでいたのだろう。


 幾つか疑問が有る。まず、何故襲う。

 高位黒靈は、人を襲える程()()()()()()()筈だ。

 そもそも捕食対象では無い。

 人霊が多いのだ、人は人など捕食しない。


 動物霊も同様だ、猛獣が人を襲い喰らう事は有る。だが、ざっと見た感じでは動物霊は家畜の類いだ。


 もし、猛獣霊が混じり本能的に人を襲うとしたら、三の主人格?はその猛獣の物だと云う事になる。


 それは無い。三は語り掛けに応じる。人霊が多いからだろう、いや、その程度の知能は有るのか。

 三の知能はその内計測しよう。


 何故、生霊の一部を食べた。そして何故その後、雑霊を喰らい成長した。成長するために生霊は必要なのか?


 何故、血止めをした。何度も突き当たるが、黒靈は人道的に行動するほど、知能は高く無い。


 …………いや、本当に知能は低いのか?


 導師に言った事は、仮説では無く、実際同調した上での結論だ。

 無垢な魂程思考は明瞭で、混ざれば混ざる程思考は出来なくなる、それこそ餓え、恐怖、絶望と云った、生前最期に感じた感情位しか保てない、それくらい劣化する。


 “よし、まあ痛くないのが救いだ”

 手当てを終えた農夫はそう言うと、普通に歩き始めた。多少は傷口を庇っているような歩みだが、歩行自体に問題は無さそうだ。


(………右膝から下の生霊が無いのに、普通に歩けるんだ。あんまり関係が無いのかな?あれ?)


 よくよく観察すると。左手首から先の生霊が薄い。更に観察すると、指先にまでは生霊が行き渡っていない。


(今年になって二度目と言っていたけれど、一度目は左腕かな?………再生している?)


 今まで、周囲を霊的に観察した事は無い。意味もない事だからだ。だが、今日黒三に同調していたお陰でヒントを得た。


 黒三視界で、霊的視野で周囲を観察してみる事にする、何か分かる事もあるやも知れない。



 未の初刻を(午後一時)を告げる鐘が聞こえた、近所の寺院のものだ。帰宅時間だ。


 特に学習時間に割当てが有る訳ではない、聞こえてくる時刻鐘で内容を変える程度だ。


 小馨の場合、初歩の読み書き算盤を習っているので、半日程度の学習時間だ。


 何も科挙(かきょ)に及第し高位文官として登用されたい訳では無い。そもそも女性は科挙試験自体に受験出来ないので、初級学問で充分であった。


 古来よりこの国では、文を尊び武を下に置く。戦時に置いて、高位文官が軍司令官に任命されることもあり、科挙の科目には兵事、兵法も含まれる。


 国事、民事、礼事、農事、兵事、法事。科目としてはこの六事が試験内容となるが、複合的に出題されることが普通であった。


 例として、〇〇との国際紛争の解決手段を現国力に基づき解決案を示せ、と云う出題なら、国事(歴史を背景とした国際情勢)と民事(税収を含めた国力、民意など)の理解を大前提として、

 礼事(外交手段)兵事(武力解決)法事(礼事の補足、交渉条件の算定)農事(現状の総国高、収穫高の把握、経済認識)を用いて、各人がそれぞれの論旨の基に展開した方策を、論文型式で答案するのである。


 正解など有る訳がなく、全回答の中より最良の答案が学監により審議され、皇帝に奏上される。そこで更に閣僚による審議を経て、10答案程が合格者として採用される。


 三年毎に実施される科挙試験だが、受験人員は毎回10万人を越える。


 各州で予備試験が行われ、それぞれの州の上位100名程が洛都で件の論文試験が行われる。

 最終試験受験者は大体3000名程だ。


 科挙試験合格とは、狭い門なのである。


 前述した奉可だが、軍部の推挙により近衛兵士に任官しているので、当然科挙試験は受けていない。なので、当人が志望する、軍務省参謀方に任官したとしても、そこで出世する事はまず無い。


 平時の軍隊だ、軍部首脳も高位文官から選出される。


「時間となりました、小馨様」

 黄姐が終了を教えてくれた。今日は計算問題が主だったから疲れた。


 わたしは大体この時間に帰宅する、科目が少ない事も有るけど、午後からは鍛練が有るのだ。


 どうやらわたしは、自分で思っていたより体力が無いらしい。


 考えてみたら、浮浪孤児の時は体を必要最小限にしか動かさなかった。お腹が空くからだ。


 動かなければ、筋肉はつかない。だからひ弱でいつも奪われてばかりいた。


 今は御飯を沢山食べれる。だから気兼ね無く鍛練できる。大好きな黄姐に極拳の基礎鍛練を教わるのだ、たまに母さまが教えてくれる。


 今日は母さまの予定が空いているので、一緒に昼食を取り、鍛練を見てくれる事になっている。朝から楽しみにしていた。



(未の初刻か、今日は戻らないと母上が心配するかな)

 意識を黒三に同調、というよりは乗せてあるので胡娘に戻らないとならない。


 ただ、黒三を放置する訳にも行かないので黒三ごと胡娘の所に戻る必要が有る。


 同調状態で強く念じれば、黒三も従うのだ。


 洛都は碁盤状に大通が通されており、都市の中心に禁城が配置されている。


 時々の皇帝により禁城は拡張されるが、概ね前後左右に均等に拡張される。


 風水的観念から、中心をずらしたくないからだ。

 大通りに囲まれた区画を房と呼ぶ。その房内をやはり碁盤状態で小道が通り、その小道に囲まれた区画を町と呼んだ。


 遨家は南東にある遨大通(逆説的だが、遨家極拳所在房なので、大通り名に冠された)に面した一等地で、町割の敷地面積を有していた。


 広大な敷地だが、元々はここまで広くはない。

 遨京馨の夫、毋可丘(ウークゥチォウ)の才覚で財を成し周辺の土地を購入したのだ。


 立ち退き住人の内、希望者はそのまま遨家で雇用している。


 小馨一行は同房内なので、帰宅と言っても歩いて四半刻もかからないが、黒三、可馨組は東大門を抜けた東洛外だ。俊足の黒三だが、早く戻りたい。


 疾風と化した黒三は、一路黄家学習学問所を目指した。

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