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武侠少女!絹之大陸交易路を往く!?  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
2章
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学ぶ事は楽しいよ、黄叔叔。

 知らない事を学ぶと云う事は、面白い。


 母さまと初めて会話した時の事を、まるで昨日の事の様に一字一句覚えているのも、つまりは未知を知る事に興奮したからだろう。


 黄姐は、わたしを人懐こく愛らしいと称したが、わたしはどちらかと言えば人見知りだ。


 厳密には、暴力を振るうかもしれない他人を警戒していた。


 食糧にしろ所持品にしろ、奪われるのは暴力と対になっての事だ。小柄で非力、殺そうが何処からも咎められない無力な存在が、わたしだ。


 だから、他人の、特に目の色には警戒した。


 嘲りや、蔑みの色ならむしろ安全で、その時の機嫌によっては小銭なんかを恵まれたりした。


 嫌悪、怒気の色は、やや危険と認識していた。ただ、態々近寄らないからまあ安全なだけで、汚ならしい浮浪孤児が寄れば、罵声の一つは貰う、石つぶてを貰った事も有った。


 最悪なのが無色の時だ。害意、殺意を実行する際、感情の色は目から落ちる。

 行動直前なのが、無色の目だ。これはいきなり来るから、予想は難しい。


 それまで仲間内で普通に会話していた者が、こちらを見た瞬間に色を落とす事もある。


 極端な嫌悪感から、排除感を感じるのだろう。

 まあ、貧相、貧弱、汚いだけの汚物を見れば大概の者はそう感じるだろう。


 わたしだって、死にかけのドブネズミを見たらそう思う。


 問題なのは、わたし達が別段害され様が罪に問われ無い事だ。だから、嫌悪感から面白半分に撲殺される孤児もいる。熱湯を浴びせられた孤児もいた。


 無戸籍の浮浪孤児だ、商品にならないから無縁、無宿人狩りの対象外で、扱いは犬猫家畜と同じだろう。


 また、わたし達もそんな物だろうと自覚していた。


 わたし達は群れた。自衛の為と言うより生存の為に。

 屋根下で生活出来る貧民はまだマシだ、犬猫家畜と同じ扱いのわたし達は、貧民街の空いた土地に穴を掘り、身を寄せて過ごしていた。


 風を防げるだけで過ごしやすい。

 互いの体温で何とか寒さを凌ぐ。


 こんな生活をしていて、生き永らえる訳など無く、浮浪孤児は一冬事に消えてゆく。


 そして極貧民から新な浮浪孤児が補充される。


 運良く成長し、孤()とは呼ばれなくなると、今度は商品価値を見いだされ、()()によって無縁狩りにより捕縛され、売買される。


 浮浪孤児は何時も、浮浪孤児として街中にあり続け、増えも減りもしない。


 だから、わたしの周囲には同じ様な浮浪孤児しか居らず、教わる事も教える事も無い。


 精々が所、食べれる草木、昆虫、残飯の出所を教え合う位だろう。


 わたしの孤児歴は一年程だ。5才迄はまだそれでも極貧民として扶養されてはいた。


 屋根下で暮らせていただけで、浮浪孤児みたいな物ではあったが、それでもたまに煮炊きされた物を口にした覚えがある。


 母親から特に名で呼ばれた覚えは無い。そう言えば、親の本名も知らない。通名ならば覚えている、桃華といった。


 雑胡の女だ、極貧民に落ちぶれた所からして、胡人の伝など無いだろう。


 ある日忽然と消えた。後年教わったが、あんなボロ小屋だろうが、書類上は建屋で母親は無宿人では無かった。

 無宿人では無いので、キチンと税務官吏が税を取立に来ていたとは驚いた。


 ただ、わたしはそもそも出生届が出されておらず、所謂無縁人だったと教わった。


 教えてくれたのは、遨家に養子縁組の時、手配をした王家宰だ。その為逆に戸籍を作りやすく書類上の手配は簡単だったと聞いた。


 保証人の身柄がしっかりしていれば、新規に戸籍は作れるのだ。これは無縁人が身柄を買い戻した時等に戸籍を新規に作るので、戸籍法に則った合法である。


 因みに、誕生日は一律一月一日とされる。これは仕方ない、公的年齢は数え年齢としているので当然と言えば当然だ。


 ただ、わたしは母さまと初めて会った3月20日を誕生日と自称している。


 話が逸れた。


 文字や一般的な事は黄姐と年上の妹から教わった。


 年上の妹は、ややこしいので省くが、言葉通りの意味で言葉通りの存在だ。


 黄姐とは、わたしに付けられた侍女であるが、わたしは実姐の様に慕っていた。


 母さまは大好きだが、黄姐も好きだ。ただ、意味合いは少し違う。


 母さまは貴人であり、畏れを感じてしまうのだが、黄姐とは距離的に近いのだ。


 黄姐は市井の人だ。黄翠朱(ホァンツゥイジュー)、三女の為、黄三娘とも呼ばれる。


 わたしの学門の師であり、遨家極拳の師であり(後に正式に遨老師の弟子となったわたしは、黄姐とは兄弟弟子となる)

 姐であり、親友である。


 黄姐の実家は出版を生業にしており、母さまがまだ張姓だった頃からの付き合いだ。


 黄姐が母さまの直弟子となるのは、黄家との付き合いの深さによる所が大きい。


 黄姐の父、黄文書。こうして説明してみるとすごい名だ。わたしは黄叔叔と呼んでいたが、なるほど出版業にふさわしい名ではある。


 黄叔叔は、母さまがまだ遨家の家督を継ぐ前の、張京馨だった頃の門弟だ。


 極拳拳士としては中位、目録伝承程度の腕前であったが、黄叔叔の真価は極拳には無い。


 黄叔叔は侠者だ。いや、任侠系では無くて学者系の侠者だ、仁義礼知信、これらの則を越える事を嫌い、自らに厳しく課す。


 礼法の実践学者が一番近い感じがするが、頭の回転はかなり柔軟だ。


 ………黄姐の性癖は、特殊だ。唯一の欠点でもある。


 なんでも、母さまの後押しが有ったそうだが、発禁指定間違いなしの冊子を執筆し、その添削を黄叔叔がしたのだから、本当に驚いた。


 更には自家で出版したのだから、黄叔叔はかなり面白い人格をしている。


 普段は、学者然として学問所を開いており、割りと盛況だ。


 あんな特殊嗜好破廉恥冊子を出版しているとは、とても思えない程だ。


 わたしは黄姐の実家で開いている学問所と云う事と、母さまの古い門弟という伝もあって、黄学習学問所に通う事になった。


 基本的な文字は覚える事が楽しく、黄姐の手持ちの教材では物足りなくなったからだ。


 本来ならば、遨家程の家格ならば、家庭教師を雇い通う事など無いのだが、元々わたしは浮浪孤児だ、市街を通う事に衒いは無い。


 黄姐と、賄い方の李昆兄をお供に学習学問所に通った。


 李昆は王家宰、王慶門下だ。王家宰と黄姐は母さまの直弟子なので兄弟弟子なのだが、李昆は母さまからしたら孫弟子となる。


 ただ、黄姐は王家宰から普段指導を受けており、李兄とは修行仲間ではあった。


 李兄は指弾術の達人で、わたしも教わったものだった。


 この当時は、二人だけが供と思っていたが、実は陰供がゾロゾロ付いていたのだから、母さまには頭が上がらない。


 黄学習学問所は思い入れが深い場所となる。



お久し振りです、突撃砲兵の二章が完結しましたので、武侠少女の二章を再開します。

まだストックが少ないので不定期投稿となりますが、応援よろしくお願いいたします。

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