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武侠少女!絹之大陸交易路を往く!?  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
1章
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二角帽、実は密かに気に入った

 街中に出た。黒靈を纏う事にも馴れた。今日は士だ。


 三は質量を増やしたいとかで、目の届く所で放置している。


 三は喰意地が汚いので、そこらに浮遊する雑靈を喰らっている。でかくなったな。


(三を分靈して午朗を少し混ぜるの、マル吾子を少々加えて、新規に使魔を作るのよ。マル吾子用に)


 まるで料理を作るノリだな、名前は何にする?


(それは、マル吾子に決めてもらおう、ただしこちらの言葉の名前でね)


 なんで?


(元々こちらの靈だから、西域の発音だと名前と認識しないかも。私の分量が多いからマシになったけど、基本黒靈に自我は無いから)


 そうか?感情みたいな物は感じるぞ。


(良い得て妙ね、そう、感情()()()な物よ。三はまるで餓狼ね、餓死者の靈が多いのかな、飢えが形になった感じ)


 ふうん、士は?


(あれは、動物靈が多い。圧倒的に犬かな、使役靈としては理想的。従う事が本能みたいになってる)


 じゃ午朗。


(まだ、個性と云うほどの物は無いかな。いちいち特定出来ないくらい雑多に靈が固まっている、以前三を混ぜたから、飢えを感じているみたいだけど、補食より維持に方向が向いているね。動かないだけで、士よりは狂暴)


 士までは、糞導師が微かに残っていた自我から名を聞き出したそうだが、


 いつの間にか士に憑いてきていた黒靈に、小姐が自身を混ぜて、“午朗”と、こちらで名付けたのだ。


 よく三に喰われなかったな。


(ちょっと違う。午朗が士を食べようとしていて、士が興味無しと放置していただけ。三は士には手出ししないから偶然じゃないの)




「一番近い胡服の店はここだ」


 近いと言っても裏通にある店舗で、某の乾物店より四半刻近く歩いた。


 と、云うより、ここらに胡人の店が固まっているのだが。


 店内に入る、胡人の男が出迎える、珍しくもない髭面だ。


「これは周若旦那、見回りですか、お疲れ様です」


「どうだい、景気は。今日は客を案内したんだが、勉強してくれよ」


 まるでヤクザの地廻りだな、縄張りかいな。


(いや、ヤクザで縄張りの地廻りでしょ、私達を連れているだけで)


 勘違いされているが、ヤクザが侠者では無い。侠者がヤクザをする事はある。


 いや、ヤクザだろうが、商人だろうが、役人だろうが、武術家だろうが、職人だろうが、その他諸々の生業だろうが、侠者は存在する。


 侠とは生き方だから当然だ。


 周家は、侠者が商家でヤクザなのだ。


「街中でよく見かける外套が欲しくてね、胡人が羽織っているやつ。わたしと、この子用に」


「はいはい、少々お待ちを」


 外套の専門店と云う訳ではなさそうで、現物売買だ。


 最も明日出立だから、呑気に仕立てられても困る。


 見立てが良いのか、他に無いのか、わたしとマルコ君の体格にちょうど良い。ただ、


 街中では気づかなかったが、結構匂いがキツイ。

何でも外国船の船体に塗る“たーる”なる油性塗料で染めてあるそうだ。


 防虫効果があるそうだが、臭くてわたしは嫌だ。


 在庫期間が長い、匂いが薄くなった物を購入した。


 子供用の物は、頭部から覆う形状で、わたしもそちらの形状が良かったが、生憎在庫に無かった。


 代わりに同じく“たーる”染めの二角帽子なる物を購入した。

 こちらは、ほとんど無臭だ。


 当然だ、誰だって臭い帽子など被りたくない。

 防水防虫効果は落ちるが、洗浄消臭を施したらしい。


 外国船の船乗りが被る帽子らしく、作業の邪魔にならない様に、ツバが天頂に曲げられている。


 ツバがボタンで留めてあり、外すとかなり外縁が大きい。


 わたしは片面だけを広げ、後頭部側の通気孔に簪を通して帽子を頭部に固定した。


 船員用の何の飾りの無い帽子に、銀の簪飾りが付き、少しは華やかになった。


「普段は竹簪だな」


 今頭に挿していたのが、銀簪だから仕方ない。


(なんで?色気じゃないの?)

 色気じゃないの、簪は使えるんだよ。


 総計銀十両の所を、某の顔で八両に勉強して貰った。


 まあ、在庫で埃を被っていたのだから、御の字だろう。


「しかし胡嬢も流石だな、地味な色目の作業帽が、簪一つで華やかになった。逆か、銀色が引き立つのか」


 そうかえ、普段は竹簪が楽でいいんだが。銀は手入れが面倒だ。


 わたし達は胡人と雑胡だから、外套、帽子でこの国の服を覆うと、本物の胡人の旅人に見える。

 更に黒靈を纏っているので、肌色は二人共黒褐色に感じて見えるから、傍目には姉弟だろうな。


 胡人街で、他に面白い物を物色して歩いた。


 折角だから、マルコ君には兎歩で行動してもらう。

 歌のヒントを教えると、かなり滑らかに歩ける様になった。


 よしよし。


 ん?あれは。

 わたしは露店に並べられたゴミの中からゴミを見出だした。


「クズ硝子玉?胡嬢そんな物が欲しいのか?」


 まあ、欲しいと言う程でもない。硝子の加工中に出る本物のゴミだ。


 中には、硝子玉も混ざっているが、気泡が混ざりとても売り物にならない。


 店主に尋ねると、全部で銭五十枚というので、手頃な革の巾着袋を銭百枚で買うから、只で寄越せと交渉した。


 まあ、本物のゴミだ。交渉は成立した。

 革の巾着にすべてゴミを詰める。


「胡姐、そんな物どうするのですか?」


 革巾着を腰帯に結わえた、あまり収まりがよくない。革帯を探そう。


「これはね、マルコ君」

 黒三、受けろ!


 わたしは雑靈を貪る黒三に投げつけた。


 ビシッ!


 クズ硝子は砕け散った。指弾(しだん)だ。いや、わたしのはそんな大仰な物ではなく、せいぜい飛礫(ひれき)だ。


 投擲術は、賄いから料理人に進んだ李兄が達者だった。


 指裏に摘んだ小石を、弾く様に投げるのだ。

 燕を打ち落とした事も有った。


 幼いわたしは、はしゃいだ物だ。


 李兄から基礎的な投法は教わっていたのだ。


 いきなり壁際でクズ硝子が弾けたのだ、マルコ君は驚いた様だ、いや驚いたのは某も同じだ。


「砕ける投擲物はこんな感じで便利なんだ、広範囲に広がるから目潰しに良いんだよ」


「それでクズ硝子か、成る程な」


「あと革帯とマルコ君用に小刀が欲しい。周兄、案内頼む」


 周囲の注目を集めてしまった、誤魔化す様にして某に話を振った。

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