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武侠少女!絹之大陸交易路を往く!?  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
1章
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可馨様は白子らしい

遨家の説明回です。

「ありがとう、胡娘々。よく()()の願いを聞いてくれました。本当に、有難う」


 黄学姐は両袖に左右の腕を通す、差手(さしゅ)で礼を言った。


 後で述べるが、これはこの国の上位礼だ。


 何度言うが、浮浪孤児にする礼儀ではない。

 過礼は時として無礼となる。


 それが分からない、黄筆頭侍女ではないはずだ。


 旦那様、で無く、老師、ということは、

 黄女史は家人としてでは無く、遨家門弟として礼を述べている。


 そこの所を聞いてみた。


「黄学姐。いやこの場合は黄姐かな?黄姐は旦那様の門弟なのかな?

 旦那様はこんなに大きな道場を構える、拳法家だし」


 老師と談話するまで、ここを大量に残飯が出る大きな屋敷、としてしか認識していなかった。


「末席だけど、老師の直弟子よ。可馨様のお世話も、老師に任されていた程に信頼されているわ」


 可馨はすでに故人だ。他界して2年程だ。存命なら今年で12になる。


 他に長男がいるが、15で元服し、禁軍近衛兵士となっていた。



 蛇足となるが、少し遨家の内情に触れたい。


 遨家は、禁軍御留め拳術“極拳”の指南だ。


 遨家の他に、趙家、遨家から分派した墨家、が極拳三派として知られていた。


 二派は民間に根付いたが、遨家は官側についた。

 京馨の代からは、民間にも極拳を教え始めた。

 食料配布も、その一環だ。


 士大夫階級では良く有ることだが、有能、高位出自、家名存続などの理由で、外部から嫡子として養子を取る事がある。


 京馨もその天才的武技により、遨家の先代から養子に迎えられていた。

 先代の高弟だった。


 先代には、京馨と年令の釣り合う嫡男がいたので、普通なら嫁に取る所だが、

 嫡男は廃され京馨が当主として遨家を継承した。


 京馨の元々の姓は張だった。


 異常な養子縁組みだが、これには訳がある。


 極拳使いには、いや、()()()()()()()にも有ることだが、極々稀に()()()()()()が誕生する。


 分派した墨家も天才的女拳士が興していた。


 遨家を継がなければ、張家極拳が新たに興った事だろう。


 廃嫡された長男は先代当主より、遥か南方の土地に追いやられた、騒動を未然に防ぐためだ。


 幸い、看板の巨大さから、落ち着き先で興した道場も盛況だ。


 ただ、京馨個人には、深い怨みを残した。


 女性である京馨が、遨姓を名乗り、当主として旦那と呼ばれる所以だ。


「可馨様が、関連していると思うけど、黄姐、言える範囲でわたしに教えて。待遇の良さに落ち着けないよ」



「……私から聞いたとは内密にね。老師は可馨様を出産された1年後、懐妊されたわ。

 経緯は分からないけど流産されて、ひどく落ち込まれていらしたわ」



「どうやらそれが元で、二度と懐妊しない体になった様子で、殊の外可馨様を可愛がるようになったわ」



「可馨様は、大変お身体が弱く10才で鬼籍に入られた。

 老師のその時の取り乱し様は、忘れられないわ」



「以降、飄々とした態度こそ崩されなかったけど、無理にそう演じられている事は、お側に仕える者には分かるわ」


「老師が、どうやって貴女の事を知ったのかは分からない。でも今日という日を、待ちかねている様子だった」


「胡小馨。貴女は可馨様に似ているわ、顔立ちや背格好ではなく、肌の色、質が。

 遠目には可馨様の様に見える」


 顔立ちや背格好ではなく?それなら大概の子供が該当する様に思えるけど?


 わたしの怪訝そうな表情から、黄姐は言葉が足りないと思い当たった様で、言葉をつなげる。


「貴女は胡人の血を引いている、髪もそうだけど、肌の色や質がとても綺麗、透き通る様な肌の質感が、可馨様と同じ。

 可馨様は、白子だった」


 自分で自分の姿を見ることはできない。

 王家宰の時も思ったが、人の目にはわたしはそう映るんだと、他人事の様に感じた。

 それより、


「黄姐、白子って何?」


 わたしは、知らない事だらけだった。


「肌の、いや肌だけでなく、髪も透き通る様な白さの子供の事よ、瞳の色だけが赤かったわ」


 わたしは、兎みたいだなと思ったが、何分故人に対し失礼なので黙っていた。


「可馨様の替わり?かな?」


「……私からは何とも。でも、それほど似ている訳でもなく、髪や瞳の色も違う貴方に、そこまで求めるとは思えない」


 それもそうか、共通点は性別と肌の白さだけだ。

 そんな子供など五万といるだろう。


「ただ、老師は自らゴミ捨て場に足を運ぶほど、今日を楽しみにしていらした。

 ここ最近に無かった程はしゃいでおられた。

 それも、胡小馨、貴女のお陰だ」


 黄翠朱は姿勢を正した、そして。


「だから私は嬉しい。本当に有難う」


 そう言ってふたたび差手をすると、頭を下げた。


 ………結局の所、大した事は何も分からなかったが、黄姐とは仲良くなれた気がした。

遨家は以前から当主を外から縁組みしてました、血統的には遨家は既に途絶えています、大きな門派は似たり寄ったりです。

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