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武侠少女!絹之大陸交易路を往く!?  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
1章
34/156

亮順様と母さまか、気風がそっくりだ。わたしが気に入る筈だ

 わたしと豪順様は担架で運ばれた。


 ご丁寧に長輿(ながこし)の様な担架で、中の人間が分からない様に幕が掛けられている。


 当然と言えば当然で、わたしがノウノウと出歩けば、豪順様の面子が丸潰れになってしまう。


 と、云う意味もさることながら、わたしが勝者と知れて、報復対象になるのも面白くない。


 だから、勝敗、優劣は暈すに限る。


 どこにでも、過剰に反応する者はいるのだ。


 わたしは南遨家の私邸の、客間に戻ってきていた。

 水心様こと亮順様に重要な話があるので、まだ辞去していなかった。


 今後の事だ。南遨老師は、豪順様や高師範といった弟子に恵まれてはいるが、女拳士は育てた事は無い。


 修業の基本は同じだが、経を使う上で、男女では体構造に決定的に違いがあるので、それを伝えねばとても危険だ。


 これは秘奥とも呼ぶべきで、南遨老師以外に教える事は出来ない。


 豪順様、高師範、以下彼等に続く者達には、南遨老師が判断を下し、必要に応じて伝えなければならない。


 人払いをしてもらった。影に潜ませていた黒三も、念のため部屋周辺に散らせて、誰も盗み聞きできない。


「南遨老師、これからお伝えする事は、女人拳の秘奥です。

 遨家で老師から教わっているのは、わたしと黄ね、黄師範だけです。

 これを南遨老師の門弟達に伝える時期や人選は一任しますが、良く良く熟考願います。

 最悪、南遨家が割れます」


「了承した、()()()この亮順、恩義は忘れない」


 老師と呼ばれ、差手での最上位礼をされてしまった。いくらわたしがアレでもこれは受けられない。



「なっ!亮順様!南遨老師!お止めください、それはいけません」


「胡老師、姪殿にはその資格がある。一門を率いる儂に教えを説く事ができ、未熟な儂の蒙を明けた。

 人を導いたのだ、尊称を受けなさい」


 ……昔、母さまにも似た様な事を言われた。

 しかし、わたしにとって老師は一人だ、受ける訳にはいかない。


 顔に出たのだろう、亮順様にまたしても心を読まれる。今日だけで三度目だ。笑われた。


「は哈哈、そこら辺は京馨とは違うな、あやつは当然といった顔で受けていたぞ」


 老師ならそんな感じだ、目に浮かぶようだ。


「まだ、迷っておるな、京馨も慕われたものだ。

 胡老師、覚悟を決めなさい。胡殿には資格がある。敬意を受けるだけの事をしたのだ。

 尊称を拒否する事は、敬意を拒否する事でもある。

 京馨に恩義を感じ、遠慮があるのだろう」


 この辺は年の功だ。わたしには、かなわない。


「その通りです、南遨老師。

 遨老師から受けた恩義はあまりにも大きい、遨老師と同じ尊称を受けるなど、畏れ多いのです」


「うん、それもまた良し。そうだな、では京馨が喜ぶ事を教えよう」


「それは願ってもない、是非に」


「それはな、己の技量を継ぎ、更にそれを進化させ、次代に引き継がせる者の誕生だ。

 胡小馨。遨京馨の技と共に、尊号も受けとりなさい、儂は胡小馨を認めた」


「……やはり、わたしには重いです、南遨老師」


 亮順様は再び笑われた。


「やはり、京馨にそっくりだ。あれも頑固だったからな、それも又良しか。

 ただ、儂も頑固だぞ、一門には、姪殿を老師と尊号で呼ぶ様に通達しよう」


「……南遨老師……」


「その様な顔をするでない、まるで儂が苛めているみたいではないか」


 亮順様は呵呵大笑した。

 やはり母さまと兄弟弟子だ、迷いが晴れれば、南遨老師の気風は母さまとそっくりだ。


「……ひとまずは置きましょう、南遨老師。

 さて、話を戻します。

 経の反復、その基点となる“丹”ですが、老師はその“丹”をどのように認識していますか?」


「体の正中心にして、正重心だな。全ての活脈の始点にして、心脈、気脈の集積点だ」


「その通りですが、肝心な点が抜けています。それは、“丹”なる臓器は、人体には存在しない事です」


「それはそうだ。言い方を変えれば、“丹”とは心脈、気脈が存在する為に作られた概念だ。

 体幹の深奥で、経の反射する点を名付けただけで、そこに有るという想いその物が“丹”であろうよ」


「わたしも、かつてそう教わり、南遨老師の仰る通り、その事に疑いすら持ちませんでした。三練経に至るまでは」


「うん?それでは今はどのように“丹”を捉えているのだ」


「それはですね、兄弟子の黄師範と共に検証し、母さま、遨老師に尋ねました。

 答はわたし達の仮説通り、“丹”は実在する器官で有ると判明しました」


「何と!そんな!いや、しかし京馨や胡老師を目の当たりにしては、納得せざるしか…」


「もう、お分かりでしょう、()()()女人拳なのです。

 “丹”とは子宮です。

 もちろん概念としての“丹”も“丹”そのものです。

 けれど、女人は概念としての“丹”を、そのまま器官としての“丹”に置く事が出来るのです。

 月の物が始まる年頃には、三練経に達した女人は、嫌でも“丹”を認識するのです」


「そうであったか……途方もない話だ。

 極拳、いや経を用いる術では、男では女に及ばないとは正に至言であるな。

 “有るもの”と仮定して経を反射するのと、

 実際“有るもの”に経を反射するのでは、結果が違って当然だ」


「ですが、女が三練経に達する事は稀です。その前段階、いや武の用途、通念からして、女が武に触れる事は有りません。

 だから、女人拳を継承するためには、太老師の様に、女人を弟子に出来る男子が必要なのです」


「うむ、分かった。儂が極拳を元々の形に戻してみせよう。父上に出来て、儂に出来ない道理はない。

 胡老師、心から感謝する」


 南遨老師は、若返って見えた。気力が満ちれば体もそれに倣う。と云う事か。


 わたしも、嬉しくなった。


「ときに胡老師、老師は妙齢でそろそろ婚期が訪れてはいまいか?

 儂の末の息子に、胡老師と年の釣り合う者がいてな、名を…」


「善順様ですね、豪順様との立ち合いの前に、死合を申し込まれました。

 縁が無くて残念です」


 小姐は大爆笑をしていた。

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