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武侠少女!絹之大陸交易路を往く!?  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
1章
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黄姐との運命的出会い

黄翠朱、きいろ、みどり、あか、順不同の信号機ですね~

 話はまとまった。


 裏が有ることは分かった。


 だけど、老師は物言いが明け透けで、嫌だとは思えなかった。


 奇妙に思うだろうが、裏事情を含めて信頼できた。


 どのみち、寄る辺ない身上だ。


 誘いを断る事は、無意味に思う。


 そのあと、老師と会話を()()()()。会話が楽しいとは、初めての感覚だ。


 思えば、まともな対話はこれが人生初だ。


 なぜ、女性の老師が、旦那様と呼ばれるのか、


 老師が何をしている人なのか、


 わたしが普段何をしているのか、


 少し触れた可馨(クゥシン)という娘子、


 好みの食べ物、


 行方不明になった母、


 その他もろもろの四方山話。


 今だに昨日の事の様に覚えている。


 わたしの宝の一つだ。


「旦那様、お時間になりました」


 家宰の人が会話に区切りがついた頃、声を掛けてきた。


「もうか、久しぶりに話し込んだ。小馨(シャオシン)、楽しかったぞ」


 そう言うと、老師は立ち上がった


(ワン)、小馨は俺の侍女になった。戸籍諸々面倒を見てくれ。それから(ホァン)お前に預ける、教育を頼む」


 老師はそこで一度言葉を切った。


小馨(シャオシン)の名は俺がつけた。可馨(クゥシン)に因んでな。

 俺は養女に望んだ、分かるだろう」


 老師の口調は変わらないが、二人(家宰の人が王で、わたしを睨んだ侍女が黄だ)は表情が緊張した。


 意を汲んだ事もそうだが、()()()()()遨家では禁忌だったからだろう。


 先ほどの会話から、そう推測された。


「わかりました旦那様」

「お任せくださいませ」


 揃って返事が返った。


 老師はわたしに

 “では、な。また時間を作ろう”

 と言うと部屋を出ていった。


 わたし達は(わたしは二人の見よう見まねで)退出時の送礼をした。


 部屋の外には、いつの間にか随員が待機している、老師は忙しい中時間を作ってくれたのだろう。


 迂闊な事に、わたしは老師の名を聞きそびれていた。


 二人はわたしに跪いた。驚いた。


「小馨さま、大変無礼を働きました、お許しを。

私は第三家宰の王慶。お見知りおきを」


「御初にお目にかかります。遨京馨(アォヂィンシン)様付き侍女、黄翠朱です。

小馨様、以後よろしくお願いいたします」


 もちろん巫山戯ていない事はわかる。


 老師の下命に忠実なのだということも、理解できている。


 ただ、ほんの数刻前に、残飯を漁りにきた卑しい浮浪児には大仰すぎる。


 わたしは、わたわたと、言い訳みたいな返事をした。汗顔の至りだ。


「そんな、やめて、ごめんなさい。

旦那様に良くしてもらって調子に乗ってた、やっぱり帰ります」


 こんな感じだっただろうか、却って二人を慌てさせてしまったものだった。




 同時に、老師からの条件が、尋常でない事も思い知らされた。



 ……なぜ、わたしなのか……


 偶然、老師が随行員を引き連れて、


 ゴミ捨て場に足を運び、


 たまたまそこにいた、不浄な子供に興味をもち、


 会話をするために身なりを整えさせ、


 場所を用意させ、


 忙しい中時間を割いて、


 身分差を感じさせないほど親しく接し、


 自身の養女にと望み、


 周囲に何も言わせない。


 あり得る筈がない、

 つまり、わたしが残飯を漁りにくる前提で、仕組まれた事だ。


 ……これまでに接点などある訳がない……


 世界そのものが違うのだ、わたしの存在自体知らない筈だ。


 そこまで考えて、なんだか面倒臭くなって考える事をやめた。


 考えてもどうせ分からない。


 信頼を得られれば、教えてもらえるのだ。

 だから、わたしは二人に言った。


「旦那様の侍女見習いになった、胡小馨です。旦那様の信頼が得られる様に頑張るから、いろいろ教えて」


 二人はホッとしたようで、“お任せを”と力強く答えてくれた。




 一室を与えられた。


 侍女見習いにである。


 侍女に限らず見習い、いや下人、下女も妻帯しない限り、男女別で雑魚部屋での同室が普通だ。


 今日何度目かの驚きだ。

 更に驚くことに、離れの館にである。


 老師の私室付き侍女など、よほど信頼がなければ、無理だろう。


 当時、勝手が分からなかったわたしは、驚きはしても、そんなものなんだ凄いな、などと、大して気にもしていなかった。


 黄学姐(ホァンシュェジェ)(呼び方で揉めたので、指導的な先輩という意味でこうなった。(ホァン)と呼び捨ててくれと言われても、呼べる訳もない)はここの館の主宰も兼ねる。

 その隣の一等室が与えられた。


 初めての見たときは、あばら家に毛の生えた館擬きと思ったが、

 わざとそう造られただけで、流行りに合わせた新築だ。


 与えられた部屋に向かう途中で目にした、下女、侍女が使う通路の床や壁の材質、明かり取りの窓、照明。


 全て新築で高価なものだった。


 いや、いくらわたしが貧民街の住人とはいえ、それくらいはわかる。


 部屋に着く。室内は明るく清潔だ。

 本来自分ですべき室内整理、管理も全て済んでいた。


 ()()()()()()()()()()()


 いや、良くしてもらって不満など有るわけない。


 だが、不安と居心地の悪さと、単純な喜びが重なって、百面相を呈していた。


 黄姐(ホァンジィェ)に小声で笑われた。


なるべく毎日投稿したいと思います。

しつこいですが、前作、突撃砲兵のほうも御願いします。

突撃のほうも、こちらが一段落ついたら再開します。

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