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武侠少女!絹之大陸交易路を往く!?  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
1章
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簪は使い様なんだよ、何だよカラスとは

 夜が明けた。今日は南遨家当主、亮順様に招待されている。


 無事に済めば明後日は周家の輸送船で、沙海まで船旅だ。


 実は船旅は初めてで、少しワクワクとしている。


(……大姐、貴女は本当に大物ね。南遨家の出方次第では、今日が私達の命日になるかも知れないのに)


「それは無いから、小姐。

 拳士としてなら、わたし以上の達人など、いくらでも居るだろう。

 けど、わたしには小姐と黒靈達が憑いている。そんな私達に勝る相手は、多分いない」


(そりゃそうだけど……でも、大姐が私を買っている事は嬉しいね♪)


 思えば奇妙な関係だが、文字通り一心同体だ。


 歳上の妹で左道術士だ、あの日小姐を受け入れた幸運を……いや幸運ばかりではない、相応の悪運も持ち込んで来ている。


 そもそも小姐がやらかした事は、わたしがやらかした事になる。


 あんな破廉恥な本を、何故わたしが編集して黄姐の実家で出版などを……


(良いじゃない♪稼げたし♪仕事と割り切れば。お陰で自活出来てるし)


(自活する原因も、小姐だけどな)


(何時までもうるさいよ、まあ、大姐の考えも賛同したし、お互い様よ)


 あの件は、最悪の場合、国を割るかも知れない事件だった。


 わたしが我を通して遨家を出たのも、わたしに接触してくる、士大夫のあぶり出しの意味もある。


 あるが、堪えた。……本当に。


 居場所と云うものは、本当に得難いものだ。


 周とやらには、ざっとあらましを説明した。遨家の内情の、あまり外聞の良くない所は省略した。


 高師範を呼び出した事が、事の一端になっている訳でも有り、恐縮していたが、これも成行だ。特に含みは無い。


 ただマルコ君の事は、請け負って貰った。


 やはり船旅だと、生活費分が足りなかった。そこで、銀百両分を周物品卸に投資して、増やす事にしてはどうか、と提案された。


 面白い話なので、提案を受ける事にした。


 更に、わたしが南遨家から無事に戻ってきたら、金五十両を投資することにした。

 内容は、どうせ分からないから一任だ。


 元よりわたしの金じゃないし、楽しみだ♪


 そうこうしている内に時間がきた。

 招待された側なので、南遨家から輿(こし)が廻されたが、固辞し徒歩で行く事にした。


 はっきり言って信頼できない。いや、黒士が興味なさげなので、担子(かつぎご)に害意が無いのは分かる。


 だが道中は分からない。担子ごと弓で外部から、と云う事も有る。


 昔そんな活劇小冊子を読んだ覚えがある。


(出典が雑誌なの?)

(そうなの♪)


 わたしの衣装だが、流石に汚れた旅装と云う訳にも行かず、

 暗器を仕込める内衫(うちびとえ)こそそのままだが、上衣は失礼にならない程度には質の良い生地の服を纏った。


 ただ、装飾的ではあるが、手甲、脚絆をし、動きを阻害しないよう心掛けた。


 これらの装備も実は周家で調った。本当に手広く商いをしている。


 出費は最小で済んだ。


 唯一の女らしい装飾は、この間購入した銀の簪だ。日の光りがよく反射するように、丁寧に磨かれている。


(大姐が光り物を好むのは意外!カラスみたい)

(一言余計だよ。念のため、黒三仕込んでおいて)

 纏うと髪の毛と肌色が変わって見えるので、影に忍ばせた。


 黒靈にも、得手不得手、個性が有り、

 三は何とも雑な感じだ。一番凶暴であり。勝手をする事も有る。猫科の肉食獣みたいだ。


 士は番犬みたいな感じで、警戒が強い。使い勝手は一番良い。


 午郎はものぐさな感じで、あまり動きたがらない、亀を思わせる。今マルコ君に憑いている。


 ちなみに、全部“ガブッ”とやる。


 小姐が少し同化した事もあり、使役に呪符は必要としない。



 担子に酒代として銀子を弾んでやり、大通りを通るように指事して帰らせた。


 わたしは裏口から出発だ。


 マルコ君は心配そうだが、まあ、大丈夫だと言い聞かせ、頭を撫でてやり裏口をでる。


 某と周とやらが見送りに来ていたが、裏口からの出発に見送りも何もない。


 わたしは気軽に“出掛けてきます周大人”と、簡単に応えた。



 南遨家の道程は某から教わっている。

 道中何事も無く南遨家の正門にたどり着いた。

 襲撃や、嫌がらせを警戒していたが、空振りだ。黒士も呑気な物だった。


 門番に来意を告げると、輿で来るものと聞かされていたらしく、確認の為に邸内に入った。


 わたしは、門内脇の来客用亭にて待機だ。

 まあ、待機と云うほどの事も無く、家宰?いや、服装からして用人か?が、門番と共にやって来た。


 当たり前な話で、わたしは招待客で、輿を廻した時間からして、出迎えに待機していたのだろう。


 招待状を確認してもらいながら、徒歩での言い訳を適当にした。

 まさか襲撃を警戒して、とは言えない。


 鍛練の為だ。で通す。


 武門だから、通るだろう。特にその点に触れる事もなく、招待状の確認が済む頃に、今度は家宰が出迎えにやってきた。


 用人が招待状を家宰に渡した。


 家宰と挨拶を交わし、わたしは南遨老師の邸宅に案内された。


 黒士の感じでは、特に不審はない。


 洛都の極武館程では無いが広い敷地だ。

 ただ、武館の方には用が無いので道場の様子がわからない、残念だ。


 邸宅に通された、老師とは趣味が違う様で、簡素な建物ではない。


 わたしは、こちらの南遨家の邸宅の方が好みだ。

 客間に通される。上客用の客間だ、調度品の質が違う。


 上席に初老の男性が座している。

 問うまでもない、南遨亮順様だ。


 一歩下がった席に座すのが、位置的に南遨家惣領だろう。名は知らない。


 わたしは亮順様に対して膝を着いた。

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