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武侠少女!絹之大陸交易路を往く!?  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
2章
102/156

母者、物騒ばかり言うでない、正気を疑われる

 墨沙蘭の方が早かった、郭价の方は現場検証を始め、周囲の調査が有る。


 暴徒は徹底して捜査される、商屋小通りの暴動に参加した者はすべてだ。


 半数程が逃散したとある、状況からして庖土工組合所在地周辺の貧民街住人が参加したと考えられ、周辺住人に対して報奨金を設け密告を推奨した。


 一度警邏隊を中央本局に戻し、暴動鎮圧報告を上官の総監に上げ、そこから更に治安維持庁に報告出頭せねばならず、郭价は多忙だ。

 民間人の墨沙蘭はその点気楽だ。()()()の賊遺体に目星をつけ、後は高弟に任せて遨家に赴く。


 高弟(直系親族が多い)にしてみれば何時もの事であり、また現場が混乱するだけなので総帥の退場は有難い。


 ただ、余分な騒動を起こされても困るので、目付として副総帥の墨徳行(モゥドゥシィン)を同行させている。遨家高弟、墨仁徳(モゥレェンドゥ)の祖父である。


 経絡使いは老化が遅い。二人合わせれば百六十を越える年齢だが、傍目には還暦を迎えたばかりの老夫婦に見える、実際は親子だが。


「なあ、徳。今にして思えば遨家の方の躯も当家で貰えば良かったのではないかな、遨家のほうでは今は躯打功練をしていないから折角の躯が勿体無い、挨拶のついでに遨家御当主様に躯の下げ渡しを掛け合ってみようか、ざっと二百位転がっていたから功練がはかどる。

 儂は心の太管(大動脈)を穿って仕留めたから他臓器には影響は無い筈だ、出来たら肝の散打も久しぶりに試したい、数が足らぬ、肝は柔くて割れ易い。散打で二つに裂いてみたいのう、徳やヒヒヒッ」


「母者、あまりその様な物騒を口にするでない、知らん者からすれば母者の放言は狂人の戯言にしか聞こえん。知ってる者からしても狂人のそれにしか聞こえんが。

 それから母者、遨様に余り馴れ馴れしくしたらイカン、遨家は貴人家じゃ」


「そうじゃ、躯盗むか。別に印がつけて有るで無し、分からんだろ。徳、腐る前に持って帰ろか、遨家御当主様に挨拶しがつら躯の目星をつけようか、楽しみじゃ。

 他家極拳士の経打での躯は、あまり腑分た事は無いからな、うん、門下の課題にしよか、死体の状態から遨家の拳士がどの様に仕留めたか考察させるのじゃ、徳、面白そうじゃな。

 よし、そうと決まれば遨家へ急ぐ、善は急げじゃ。徳、遅れるなよ」


「待て母者!耳も達者なくせに聞こえん振りをするな!待て!待て!待て」


 墨沙蘭はとっくに駆けている、縮地走神行歩だ、疾風の様に駆ける大柄な老婆。

 それを追う、同じく大柄な老翁。


 知らない者からしたら、まるで笑劇の演目の様な光景だが、二人を知る者からしたら白昼の悪夢でしかない。


 大体、この二人が疾風の様に駆けると、惨劇が始まるからだ。


 まあ、今回は躯を盗み出すだけの他愛無い?物では有るが。


 遨家の方は諸対応に追われていた。


 遨家と付き合いの有る貴人家、士大夫家や毋家との伝が有る商家、寺院、親族。それらが矢継早に来訪する。


 何分遨家襲撃の変事だ、即時鎮圧の噂は瞬く間に広がったが、四門封鎖は解けて居ない。

 状況視察も兼ねた来客が絶えないのだ。


 遨家門前の磔晒しの賊首魁、二百もの賊の遺体。


 目の当たりにした来客は、改めて遨家の武力に恐れ慄く。


 郭から護衛任務に充てた中隊に半数人員の帰還命令が出たが、遨家混雑からの治安不安から、引き続きの警護志願が中隊隊長から為された。


 貴人家は無論、洛都政財界主要家が一所に集まっているのだ。名聞は立つ。


 本音は夕刻からの饗応だが、これくらいは大目に見るべきであろう。


 特に期日は定まって居ないが、当分は交代で躯見張りと云う不毛な任務に当たるのだから。


 そんな混雑した中、墨家の総帥と副総帥が遨家正門に訪れた。


 墨家は遨家からの分派家であり、門下生同士でも付き合いの深い間柄で、当然墨家総帥、副総帥の顔も知られている、上待遇で主客殿に通された。


 当主である京馨は直前に門下貴人の見舞対応に当たっており、沙蘭には待ってもらう事となる。


 貴人家面談となると、本来ならば事前に面会予約をしなければ面会出来ないのだが、今回は事情が事情だ。


 見舞人が増えるに連れ、階級分けされ待機して貰うのは仕方ない。


 当事者でも有る墨家は最優先に対応された。


 墨家への従待対応は黄が当たる。黄は京馨の内弟子であり、二人の事は見知っていた。


「こちらでお待ち下さい、墨家総帥様、副総帥様。京馨様はお二方が見えられる直前に来客面会をされておりまして。

 ですので暫くの間、此方で御寛ぎ下さい」


 黄は小馨専属で、本来ならば接客対応はしないのだが、今回は仕方ない。貴人家で京馨の外弟子の対応は、最年少で内弟子入りした黄が適任なのだ。


 奉可と共に可馨は本宅で休息だ、内向侍女に委せる事となる。


 黄としては、小馨から離れたくは無いが侍女長が勝手は出来ない。


「世話になります黄殿、出直すべきなのでしょうが、ご承知の通り言い出したら聞かない老婆が居りましてな。

 時に、黄殿。何事か有りましたかな、内絡の乱れが観て取れますが」


 徳行は黄が襲撃被害にあった事までは知らない。


「徳や、何故此方の侍女殿の名を知ってるのだ、まさかとは思うが此方の侍女殿に対し、不埒な想いを抱いて探らせていたのではあるまいな、お前は昔からそうだった。夫人を三人も四人も迎えくさって、挙げ句に男子ばかりを拵えおる、儂は女子を拵えろと、口を酸くして言うて居るに一向に聞きおらん、貴様ひょっとして耳が逝かれて居るのか、それとも逝かれて居るのは頭の方か、倅の方か、このウツケの戯け者」


「申し訳無い黄殿。母者は馬鹿で物の道理が分からないのだ。

 母者、大概にせい、此方の黄殿は遨様の末の内弟子で披露目にも呼ばれて居ろうが。今年の年頭挨拶で、遨様に伺行した際に、我等に対応した侍女長殿が黄殿だろうに」


「して黄殿や、徳は内絡の乱れと観たが、儂の見立てでは気脈の乱れからの内絡不和が目の色から診られる。

 どうじゃ、拳士の内絡が乱れる程の気の動悸、婆ぁや徳に聞かせて貰えないか、こう見えて永らく生きて居るで、なんぞ助言が出来るやも知れず、出来ぬやも知れず。話す事で、自力で解決するやも知れんからのう。小馨嬢関係かの」


 シレッとしたものだ、言動に惑わされ無い様にと、京馨が郭价に助言したのはこうした訳だ。


「驚きました、目の色からそこまで覚られてしまう物なのですか、流石は墨様」


「いや黄殿、騙されてはいけない、この婆は適当に放言するのが趣味だ。しかし、黄殿、偶然とは言え母者の妄言が当たるとは心労がお有りか」


 墨徳行とて齢七十を越す翁だ、事実上の墨家総帥である、懐は深い。


 普段の黄ならば聞き流す様な世間話では有るが、この時は、やはり心気が乱れていた。

 また祖父母に縁の無かった黄は、一見好々婆、好々爺に見える墨家総帥、副総帥に、つい心情を溢してしまう。


 これが、後の黄流三練化経歩へと繋がる

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