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21 切り札

 


「ロンメルさん、何で私の名前を知っているのですか?」

「先程名前を言ってなかったかな。ははは」



 確実におれは言っていないぞ。

 わざと笑っているようにも見える。

 何でだ?… 何でおれの名前を



「まぁ良いではないか、明日の朝から裁判を始めたいと思うのだが良いかな?」



「え、えぇ」

「ではすまないが、この部屋から退出してくれないか。仕事がまだあるのじゃよ」



 たしかに、老人の机を見ると書類で山積みであった。


 本当はもっと聞きたいことがあったのだが、これ以上いると公開裁判そのものを取り消されかねない。


 おれは部屋の外へと出て行った。



 すると




 外で待機をしていたフォーレンが近寄ってくる。

 その顔は赤く腫れていた。

 不安で泣いていたのだろうか


 顔を手で擦ると、心配そうに交渉の結果について尋ねてきた。




「ゴールド。どうだったの…」

「明日、裁判を行う事になりました」



 目的を達成した事を伝えたつもりだったのだ…




「なんで、明日なの?…」




 しかし、フォーレンは納得出来ていないようである。

 顔を近づけて抗議してきた。


「本当にいいのか? こちらは何も準備が出来ていないのだぞ」

「いや準備は出来ていますよ。こちらが必ず勝つ方法がね。ただフォーレンさんにはお願いがあります」



 おれはフォーレンの耳元で囁く。

 誰にも聞こえないような小さな声で



 それを聞いたフォーレンの目は大きく開き、次第に化け物でも見ているかのような表情へと変わっていった。



「………」

「出来ますか? フォーレンさん」



「お前は悪魔か?…」

「先にやってきたのはあちら側です。それにこれをする事で勝利は確実なものになるでしょう」




「そうなのか?… 私には分からないが」



 言葉ではハッキリと言わなかったが、頼んだ事は恐らく遂行してくれるだろう。



 いや、確かにあの依頼を何の抵抗もなく受け入れる人物がいればそれは本物の化け物だ。



 ロンメルとかいう老人が怪しくなければここまでするつもりはなかった。

 いや、おれもこんな事したくない…



 複雑な心境を抱えていると顔の表情が、険しくなってくる。

 よく見ればフォーレンの顔も




 疲れているな…



 そういえば今日は一睡もしていないか

 明日の裁判まで、まだ時間はある、



「フォーレンさん、一旦帰って寝ないですか?。床でいいですから」

「そうね。少しだけでも寝ましょう」



 その後、おれ達は空間転移魔法でフォーレンの自宅へと行き2人して床の上で寝た。



 普段なら床の上で寝る事はしないのだが、今日は特別だ。


 心身ともに疲れ切っている。

 空間魔法を使用した後のフォーレンさんは倒れるように寝てしまった。



 おれも… 視界がどんどん暗くなる



 ―――真っ暗な夢の世界へ



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